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番外編〜14の冬〜1

番外編です。テーマは悠樹の初恋?です。続きます。

あれは冬。うん、すごい寒くて、吐く息が煙草の煙と混じって真っ白だった。

少し膨らみ始めた胸を、直にサラシで締め付けて、その上に白い特服を着ているだけだから余計に寒かった。

 でもそんなことも、その辺のバカな男がパクって来てくれた原付に乗ると、忘れてしまった。渇いた空気の中響くエンジン音の大合奏。

 色鮮やかな刺繍のお披露目会。

私の・・・楽しかった中学時代。それをぶち壊したと同時に、初めての感情を与えた鬼人との出会いは、中二の、寒い、冬の日だった・・・




「おい!聞いたかよ!?」 毎週土曜日のお祭り。私が所属していた族。県内でも屈指の力と名声を持っていた、乱仏らんぶ。やはり首都圏といえど、山奥に行けば行くほどヤンキーの数も力も増えていくものらしい。

「なにが?」

冷たく返事を返す。私の原付をパクって来てくれた、バカな男・牧は、集会の度に私やノリといった同級の女に話しかけてくる。あまりにも下心丸出しだと、やっぱり少しヒく。

「鬼人だよ!出たんだよまた!隣町のラグーンがやられたんだよ!!」

ラグーン。うちにもすぐちょっかい出してくるギャングだ。いわゆるカラーギャングで、皆緑色の服や装飾品で色を統一した、不良集団。大体30人くらいのメンバーで構成されている。しかもほとんどが高校生だったはずだ。

「鬼人ってうちらのタメらしいじゃん?しかも必ず一人で喧嘩に来るんでしょ?」

ノリが目を輝かせて牧に聞く。細いノリの目は、鬼人の話になるとこれでもかと大きくなる。噂で聞いただけで見たこともないのに、憧れの存在らしい。

「なんでも噂を聞いたラグーンが確かめに鬼人の地元に行ったらしいんだよ」

牧は大きく煙草の煙を吐き出しながら始めた。

「ところが鬼人の噂は聞くけど当の本人は見付からない。飽きた奴らはカツアゲした金でゲーセンで遊んでたらしいんだ」

「現地調達?」

ダサい奴らと思いながら一応確認してみた。

「もちろん。でもそれが鬼人の怒りを買ったらしい。後日、一人、また一人とラグーンのメンバーが音信不通になっていった。調べると皆入院してたんだ。頭の柏原がそれに気付いたときには十人も病院送りにされた後だった。」

「やばすぎじゃん!超カッコイイ!!」

ノリは甲高い声をあげた。やばいはやばいけど都市伝説みたいだなぁと思うのは私だけ?

「当然柏原はキレて、返り討ちにするつもりでメンバー全員で固まって行動してたらしい。そしたら昨日、鬼人が来たらしいんだ」

いや、一対二十でどうやって勝ったの鬼人さん。化け物どころじゃないでしょそれ。

「さすがに鬼人も二十人には勝てなかったらしい。十人倒した時点で血まみれでフラフラだったって」

いや、あんたさっき潰したって言ってたじゃん!しかも誰から聞いたんだよそれ!明らかに横で見てた人いるよねそれ!

「カッコイイ・・・」

ノリさん?!頬を赤らめるとこ今あった?!

「そしたら鬼人は倒れちまって、散々奴らにボコられたんだと。でもな、すっげぇんだよこの後が!もう死んじまったんじゃねえかって時に、鬼人は立ち上がってまた一人ずつぶっ飛ばしてったらしい。殴られようが蹴られようがそれこそドーグでやられようが少しも怯まなかったらしい。で、最終的にビビった奴らは逃げちまって、捕まった柏原は病院送り。実質ラグーンは壊滅だな。一人に全滅させられたチームなんてもうこの先でかい顔できないからなぁ」

笑っているはずの牧は複雑な表情を浮かべていた。

「うちもやばいかもね」

牧の心中を悟って口に出す。そんな化け物にいくら数で攻めても勝てる気がしない。もし目をつけられたら、いくら乱仏でも、負けるかも・・・そんな不安を覚えさせられた、牧の話だった・・・



「バカ野郎!!」

うるせぇ怒鳴り声をあげているのは、疎ましき我が担任。愛称ちゃびん。はげちゃびんからとってちゃびん。ちなみにここは土手。平日の真っ昼間である。

「斎藤!その怪我のことはなにも聞かん!」

じゃあいいじゃん。

「なんでそんな怪我で、こんなとこにいるんだ!?病院に行け!今すぐ」

そっちか、と溜め息を吐く。

「怪我してるからここにいんだよ。家帰ったらまたうるせぇし。学校なんか体痛ぇから行きたくねぇし。血は止まったから病院なんか行かねぇでいいよ」

手をあげて止血に使っていたタオルを見せる。

「斎藤。お前ケンカが好きか?」

いきなりなに言ってんだこいつ?

「好きなわけねぇだろ」

「じゃあなんでケンカばっかするんだ?」

・・・

「関係ねぇだろ」

話してもわかってもらえるわけねぇ。俺がやってんのは偽善だ。正義のヒーローごっこ。頼まれたわけでもねぇし、仲が良い奴が被害者とかそういうわけでもねぇ。

 ただ、話を聞いて、気にくわなかった。

 放っといたら被害が増えそう、だから俺が潰す。それだけ。

 でもそんなの話しても誰も理解できないし、鼻で笑われるのもわかってる。

それでも。俺は。やめない。やめちゃいけないんだ。

「中学だからまだいい。退学処分はないからな。悪くて転校だ。ケンカ以外は普段の生活態度も悪くないからそれもなんとか避けられている」

ポツポツと雨が降り始めた。俺のひなたぼっこが・・・

「高校に行ったらどうするんだ?すぐ退学になる!それどころか今捕まったら高校じゃなくて鑑別行きだぞ?!少年院行きだって有り得るかもしれん!・・・聞いてるのか?!」

ぼーっと空を眺めていたら急に怒鳴られて意識が戻ってきた。睨みをきかせながら立ち上がる。

「放っといたらいいだろ?他の奴みたいによ」

「なっ・・・」

「あんたに迷惑かけなきゃいいんだろ?わかってるよ」

言い捨てて煙草を口にくわえると、切れた唇が染みて顔をしかめた。

「斎藤!」

「帰るんだよ。家で寝る」 火をつけると、甘いような芳ばしい臭いが俺を包みこんだ。

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