第十話『再会』
ずいぶん久しぶりに更新しました。仕事が忙しすぎるもので・・・待っててくださった読者様方!申し訳ありません!愛してます!!ワラ 結局入学式は次回になってしまいました・・・
うん、よく考えようこの状況。
まず、電車の車両間通路に座り込んでますね、はい。
隣に座って、でかい目をこっちに向けて微笑んでる人がいますね。はい、声高子さんです。
さて、問題です。このお方は今なんとおっしゃったでしょうか?!
「ねぇ鬼人さん?眼鏡似合うねぇ」
・・・
馬鹿みてぇにアハハとか笑って爆弾発言してんじゃねぇ!!
とりあえず。
否定してみよう。がんばれ悠樹!お前はできる子だ!
「・・・あ、あの!鬼人ってなんですか・・・?」
できたぞ俺ぇ!見事にとぼけてしまいましたよ俺ぇ!!
「斎藤さん?」
「はい、なんでしょう?」なんだ突然。
「下のお名前はぁ?」
「悠樹ですが」
それがどうした馬鹿。
「出身中学は福田西ですよね?」
「はい、そうですが」
なにを関係ないことばっかほざいてんだ。
「原田茜って覚えてませんかぁ?」
ん?そういやぁ・・・いたなぁそんなやつ。小学校の頃同じクラスで、私立の中学に行っちまった地味な女だったな。
ん?茜?最近聞いたなその名前。
「やっぱ鬼人さんだったね。久しぶり、斎藤さん」
高子、いや、茜の満面の笑みは、殴りたい程だった。
「で、その格好はどうしたわけぇ?」
やっと分かった。こいつがやたら食い付いてきた理由。空気読めないナンバーワンだったこいつは、未だに相当なKYらしく、久しぶりに同級生を見て嬉しくなったのだろう。大して喋ったこともなかったのに。全く、いい迷惑だ。
「ねぇってば。なんでヤンキーやめちゃったのぉ?」
しつこいなこいつ。
「別に。なんとなくだよ」適当に返事しながら、まだこいつ降りないのかと考える。こいつの学校はたしかあと2駅くらいだったか?
人がうざったく思ってるのも知らず、話し相手ができて嬉しそうにしてやがるこの女。なんか微笑ましいっちゃ微笑ましい。
「で、高校ではやんないのぉ?全国制覇ぁ」
前言撤回します。バカすぎて微笑ましいを通り越して崇めたいです。
「高校ではってなに?ではって。中学でもそんなことやった覚えねぇけど?」
「だって県内統一したって。全国制覇の手始めに」
・・・まぁたしかにしたけどさ。
「別にやりたくてやったんじゃねぇよ」
つってもそんな簡単にできることじゃなかったけど。
「ってかさぁ、斎藤さんってなんでヤンキーやってんの?小学校の頃とかたしかに悪ガキって言われてたけど、そんな感じじゃなかったよね?」
・・・うん、驚いたね。まさかそんなこと言われると思ってなかったからね。普通に首傾げてニコニコしているこの人を俺は一瞬、神だと思ったねマジで。
―――っと。浮かれすぎて何言おうか考えてて気付かなかった。俺が入ってきた方とは反対のドアから、いかにもガラの悪いB系の兄ちゃんがガニ股で入ってきた。しかも3人。ってかこいつら何年前のセンスしてんだ?一番前のヤツなんか真っ青のジャージにダボGだぞ?しかもヤンキースのキャップって!
「おい、なんかキモイ七三がいんだけど」
時代遅れの兄ちゃんがいきなり吹き出した。
「ってかその子カワイイじゃん?ねぇアド教えてよ?」
すぐ後ろの革ジャン着た兄ちゃんが言う。ってかこいつ風邪ひいてんのか?声しゃが子よりしゃがれてんぞ?しゃが男だな。
「斎藤さん・・・」
高子が不安気にこっちを向く。煙草を持つ手が震えてる。
マジかよこの展開。マジですかこの展開。俺これから入学式なんだけど?
「お前向こう行ってろ。どうせ次降りんだろ?」
溜め息を軽くついて高子を跨ぐ。さっき感動している時に1駅過ぎた。こいつらはその時乗ってきたんだろう。
「うん、ありがと!またね?」
高子はサブバッグを持って通路から出ていった。
ってか少しは戸惑えよ!当然の如く逃げやがって!神どころか悪魔だなマジで!
「なにカッコつけてんだよ七三君」
ニヤニヤしてんじゃねぇよ。ったく・・・もう喧嘩しねぇって決めたのになぁ・・・
何も言わず、いきなり握り締めた拳を青ジャージ男の顔面に繰り出す。油断していたヤツの鼻に直撃して、鼻から血が垂れ始めた。うわっ、手に鼻血ついちまうじゃん!最悪だよ・・・
「まだやんのかよ?」
鼻血が嫌だから脅してみる。
「てめぇ!」
後ろにいた革ジャンが、もたれかかっている青ジャージを押し退けて、こっちに向かってくる。
・・・すかさず前蹴り。狭い通路で大振りって・・・バカじゃね?
「―――っ!てめぇ・・・」
革ジャンは丈夫だった。青ジャージと違って。ってか一番後ろの緑のボーダーのポロシャツ君は目立たないねぇ・・・
「おい!こいつ鬼人だ!」
あ、喋った。ってかなんでわかったの?あ、眼鏡外れてた。
「マジか?!一個下の?!やべぇな・・・」
「―――とりあえず逃げんぞ!」
・・・逃がさねぇよ!
俺はなんだかんだ言って喧嘩が好きなのかもしれない。
結局、3人をボコボコにしてる間に池袋に着いて、駅員に追い掛けられながら学校に向かうはめになった・・・
恨むぞ高子・・・