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現実逃避死にたい病  作者: 都宮京
1/2

First/ About me

はじめまして。このサイトでの処女作となります。

ロウテンションでお送りします。

あー死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。

たまにこんなことを思う。


現実辛い。あー死にたい。

学校だるい。あー死にたい。

人間関係複雑。あー死にたい。


『嫌なことがあれば後ろに"死にたい"という言葉をつけよう!』、そう命令でもされているのかと伺いたいほどに、私の心の中は"死にたい"で埋め尽くされている。

無気力症候群とでもいうべきか、思考は一切働かない。

だから私の感情は長期間の一時停止を余儀なくされている。


怒る。だるい。

楽しむ。だるい。

泣く。だるい。


どうしよう。"死にたい"の次は"だるい"の登場だ。

もうこの"死にたい"と"だるい"は私の中でセットのような気がする。

ハッピーセットならぬアンハッピーセットな訳だ。

誰が食べてやるものかなんて言われたら無理矢理にでも食べさせたくなる。そんな意地悪満載のセットなわけだ。

あぁちょっと心が軽くなったな。

世界は無理やりなハッピーだけではないことに心なしかドキがムネムネする。無理やりなアンハッピー。上等じゃん。


そんな意味のわからない考えを頭のてっぺんへと浮かせて、私は瞼と瞼がごっつんこしそうな浮遊感に抗うことなく酔っていた。

高校2年生とは何ともつまらないものだ。

2年生だけにもかかわらず、1年生もつまらなかった。

空気を読んで。流れを読んで。流される。

こうスルスルっとな。流される。

私は陽射しのあたる自分の机にスルスルと指を滑らす。

何やってんだ自分。自分で自分の行動がわからなくて思わず鼻から笑いがこぼれた。

そのあとになんとも言えない倦怠感が私の体を襲った。

あれ?私こんなに重力に弱かったっけ?少ししか開いていなかった上瞼と下瞼はあっという間に重力と陽射しの心地よさに負けて、私の視界は真っ黒にカラージャックされた。

ちなみにカラージャックは意味もわからず使ってみただけだから気にしないでほしい。そもそもそんな言葉があるのだろうか。

いやあるだろう。イヤホンジャックがあるのだから。色がジャックされてもおかしくない。たぶん。ってかググれ。

あーじゃがりこ食べたい。

一応言っとくが言ってみただけだから、実際食べたいわけじゃない。だって今の私は


食べる。だるい。

息する。だるい。

喋る。だるい。


な気持ちなのだから。"だるい"に"死にたい"を当てはめたっていい。だって"だるい"と"死にたい"はアンハッピーセットなわけだから。

唯一だるくないと思えるのは、現在進行形でやっている睡眠ぐらいじゃないだろうか。冬眠したい。いいなぁ冬眠。楽しそうだなぁ冬眠。動物羨まし。

眠気が増して、自分の感じるすべてのものをシャットアウトされるとき、残念ながらキンコンと学校のチャイムがその扉に足をねじ込ませてきた。

足かどうかは定かではないが、そんな感じがする。これただの願望。

「席についてー」

私の嫌いな女教師がクラスに入って、眠い頭には少々耳障りな高い声を教室中に波に乗せて響かせる。

女って嫌い。私も女だけど。

「きりーつ」

クラスの誰かが、号令の合図の定番『起立』をノンレム睡眠深長30センチのところまで足的な何かを突っ込んだ私に強要してくる。

声からして男子の誰か。

ノンレム睡眠ってストレスを消去してるらしいから、この号令をかけた男は私のストレスにストレスをプラスしてきたわけだ。

なんて意地の悪さだろう。あやつめ。

故意のないその人にとりあえず責任を擦り付けてみた。

擦り付けるのは個人の自由だ。

考えるのもタダで、思うのも自由。

そう考えたら結構なビックプライズだ。お得だ。

でも肝心な私は、"死にたい"と"だるい"が思考の中を交差しているわけで、いくらお得でも、使うやつがこんなんじゃ意味がない。

あ、お日様の匂いがする。

息をするのも悪くないな。そうひとり心の中でごちると、私は睡魔に襲われたままの重い腰を、座りなれた椅子からゆっくりと上げたのだった。


私の嫌いなあの女教師は、よく故意的に私を当ててくる。

気のせいじゃないかって?気のせいじゃない。

だって私がそう思うのだから。

思うのは自由。そしてタダ。でしょ?

「滝沢さん、ここ読んで」

ほら、気のせいじゃない。絶対故意的だ。

タキサワというなんの変哲もない自分の名字をあの女が呼ぶだけで、酷くしょうもないものに感じるのは気のせいだろうか。

理不尽かって?世の中そんなもんだよ。

仕方なくさっき号令で上げたばかりの腰を、よいしょと温いままの椅子から上げる。

あーだるい。あー死にたい。

この女のせいで、さらに病が悪化してきたと思う。

気のせいじゃない。私がそう思うのだからそうなのだ。


『現実逃避死にたい病』


我ながらなんともいい病名だと思う。

現実逃避?大好物ですけど何か?

死にたい?常に思ってますけど何か?

この病はなかなか治らないのだ。

毛細血管みたいに私の臓器に絡みついて離れることはない。

これは自論だけど。心ってよくハートで表される。

でも私の心はすごく凸凹。

まず、わたしの心の表面は細胞でできた薄い皮でできていて、何かと感覚神経が張り巡らされている。

触られると気づくし、針で刺されば痛いわけだ。

その皮は伸びる袋状みたいなのになっていて、その中には私のすべてが詰め込まれている。

嬉しいとか、楽しいとか、悲しいとか、欲とか、理想とか、夢とか、妄想とか、趣味とか、興味とか、苦しみとか、まぁいろいろだ。

それらは全て違った形をしていて、円錐とか立方体とか、ハマグリみたいなのとか、そら豆みたいなものまで。その形は複雑なものほど形は歪で変な形をしているわけだ。その形の仕組みもまぁいろいろだ。だから凸凹になって、綺麗なハートにはならない。

皮の袋にはひとつ欠点がある。

それは出入口があること。袋にモノを出し入れする出入口があるように、その袋にももちろんそんな働きをする出入口があるわけだ。

そしてついにこの『現実逃避死にたい病』の登場だ。

根っこのような形で侵食してくるそれは、じわじわと私の心に絡みつき、次第に力を強めて締め付けてくるのだ。

出入口のあるその袋からは、そのキツさに耐えられなくなったものがひとつふたつと滑り落ちていき、最終的に無になる。

これが『現実逃避死にたい病』の仕組みだ。

ちなみに私以外のみんながそうなのかはわからないが、私の心はもともと青だった。海のように青くグラデーションのように浅瀬から深瀬にかけて青が濃くなっていく。そんな青。

『現実逃避死にたい病』は、その青を灰色へと変えていくのが今の現状でわかっている。

つまり副作用にカラージャックがあるわけだ。

恐ろしい。実に恐ろしい。恐ろしすぎて腹が減りそうだ。

まだ授業は3時間目で、女教師の担当科目は国語。

周りもどうやら眠さが絶頂まで来ているようにみえる。

「千山鳥飛ぶこと絶え、万径人しょう滅す、孤舟蓑笠の翁、独り釣る寒江の雪」

読まされたのは、柳宗元の『江雪』。

訳は

『山という山はすべて雪で覆われて鳥の飛ぶ姿もなく、道という道は全て人の足跡も消え果てている、一艘の舟に乗ってみのとかさをつけた老人が、ひとりぽつんと寒々とした雪景色の中に釣り糸を垂れている。』である。

書き下し分をゆっくりと読み終えると、一気に重力に従い、すとんと椅子の上に腰をおろした。

高校一年生のときの復習として読まされたそれは、結構漢文の中で好きな部類だったりする。

瞼を閉じれば真っ白な雪景色が浮かび、シンシンと音を立てて細かな冷たい雪が降っている。

その中に老人がひとり船に乗って釣り竿を下げる姿は静かで、なんとも心地よいものだと思うからだ。

雪がシンシンと鳴るのはよく本で見たことがあるが、実際そうなのかはわからない。

そう聞こえると肯定する人もいればその逆の人だっているだろう。

ただ、シンシンと鳴る雪と雪景色。

一人の老人の孤独な様子は酷く悲しく、幻想的だと思う。

教科書を閉じ、国語のノートを取り出す事にした。

勘違いされると癪なので一応言っておく。

私は『現実逃避死にたい病』でも授業で寝たり、サボったりすることはしない。

もちろん『現実逃避死にたい病』でなくてもしない。それが私のポリシーだから。

先生たちが苦労して頑張ってくれているのは分かるから、それに答えなきゃいけない。

それが私の持つ良心の在り方だと思ってる。

そして、ノートも。例えだるくても板書は写す。

これが学生である私の唯一のしなくてはいけないことだと思う。

嫌いな女教師の文字は酷く不快だが、教師として私は彼女を敬わなければならない。

例え彼女が、父の元浮気相手でもだ。



読んでくださりありがとうございました。

次回から物語が進みます。また読んでくださると嬉しいです。

(*´v`)to be continued.☆by Kei Tomiya

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