伍
あの夜、おれはふたりのメールのやり取りを読んでしまった。
メル友としての出会いだったようだ。パソコン好きだった弟らしいな。
弟が彼女の悩みを聞き、受験や家族や……
いろんなアドバイスをしている。
着信履歴から、メールだけでなく直接、話もしてたみたいだ。
彼女の家庭環境は複雑だったようで、1日も早く家を出たかった。
一人暮しをしたかったようだ。
彼女は北国に住んでるみたいだった。
今日はこんなに雪が凄かったんだよ、と小さな雪だるまの写真があった。
単なる相談相手から……
いつしか、彼女は同じ大学に行きたいと思いはじめていた。
「これだけメールと携帯で毎日、楽しいんだから一緒にいたらもっと幸せだよね!」
「同じ大学に入るのを支えに今は頑張るんだから!」
そういった言葉に対して弟は、
「受験は人生の大切な岐路なんだから、しっかり考えるんだよ」と冷静に返事をしていた。
たしかに正しい意見。
だけど、彼女はそれにすぐに返信。
「大切な人生だから、一緒にいたい。あなたに会いたいの。一年間ずっとそのために頑張ってきたんだよ。……ダメなの?」
弟は少し時間をかけて、
「そんなわけないさ。ぼくがこんなに心が通じた相手は生まれてはじめてだから」
たしかにおれが見ていた限り、弟はあまり社交的ではなかった。
いつもゲームやパソコンをしてるイメージ。
友人も少なく彼女もいなかっただろう。
おれとは基本的に正反対。
こうしてメールを読んでる間にも新たなメールが届く。
あるメールに彼女自身の写真を見つけた。
目元がくりっとして可愛らしい感じ。
自分なんかと釣り合うわけがない、弟ならそう思ったに違いない。
あいつは賢いからメールを打ちながらも、この先に待つ出来事を冷静に考えていたはず。
心のつながりは、あくまで心までだと。
……彼女が原因だったわけか。




