拾捌
笙さんへ
明日、わたしは卒業です。あれからもう四年。
早かったのか、長かったのかよくわかりません。
結局、一度も一緒にキャンパス歩けなかったね。
似たような後ろ姿を見かけて、何度か追いかけたこともありました。
相談したいな
声を聞きたいな
家にいってみようかな
何度も思いました。
でも最後までそこはわたしに近くて遠い場所でした。
何度かお兄さんに街で会いましたよ。
答えはいつも同じでした。
でも最後に、
「元気だから大丈夫だよ」と言ってくれました。
しょうさんも頑張ってるんだ。わたしも頑張って強くなろうって思いました。
あれから、たくさんの人に出会い、信じて、裏切られて、でも、また誰かを信じて、
この繰り返しでした。
いろんな人がいるんだって改めてわかりました。
いい人ばかりじゃない、でも悪い人だけでもない。
人は人と関わって傷ついて、悩んで、笑って……
そうやって成長して、ひとりの自分の意味を見つけるのでしょうね。
四年間でわたしも少しは成長できたのかな?
綾瀬澪、ってちゃんとひとりの人間になれたのかな?
いや、なれてなくてもいい、少しでも近づけたのかな?
しょうさんに会ったら何て言ってくれるだろう?
みおちゃんあのころより成長したね、
って言ってもらえるると嬉しいな。