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拾伍

「わたしね、いま、あなたの大学に通ってるんだよ。毎日、自転車飛ばして頑張って学校に通ってる。

実家では心配だからっていつも車で送り迎えされてた。自転車の風って心地いいんだ。わたしの力で動いてるんだもん。わたしの意思で自転車は右にも左にも曲がってくれる。それだけでわたし生きてる意味を感じてるんだよ。自炊も最初は大変だった。だけど、ちゃんと自分でスーパーで食材を選んで、献立を決めたりして……それだけで今は楽しいんだ」


気が付くと弟の顔が布団から少しだけ出ていた。


「そんな今の生活は、あなたが導いてくれたんだよ。だから今のわたしがある。あなたとの出会いがなかったら、別の人生だったかもしれない。どれが正しいかなんかわからない。でも、それは死ぬまで誰にもわからないことでしょ? わたしたち、2人のメールや電話でのやり取りは本物だった。本物だったから、わたしきっとこうやって導かれていま、ここにいるの」


今、おれを含めた3人が同じ、この部屋にいる。きっと、それも導かれてそうなったものかもって、おれは彼女の話を聞きながら思っていた。


「あなたが言ったように、神様はいると思うんだ。でも、2人でひとつではないんだよ。人間はそれぞれひとりずつちゃんと自分の意味を見つけるために生きてるんじゃないかな。そしたら、2人で力を合わせたら3倍にも4倍にも……もっともっとお互いの力を出せるはず」


彼女は一呼吸を入れて、また続けた。


「でも、分身じゃだめ。半分ずつじゃだめ。半分じゃ支えられなくてどっちかが倒れてしまう。わたしたちみたいに。あなたは嘘を後悔した。自分の外見を隠そうとした。それはあなたもまだちゃんとひとりじゃないから。このまま寝てても、あなたは変わらないままなんだよ」


彼女の涙が頬を伝って、次から次に床に落ちていた。

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