拾壱
しょうが眠る家におれたちは着いた。
玄関を開けたとき、ちょうど父親が慌てて出てきて、
「しょう、さっき起きたんだ!」
普段、冷静な父親が大声で言った。
「お腹がすいてたみたいで、ご飯たくさん食べてたんだぞ。その後でいきなり紙とペンを貸してくれって言って。で、書いてる途中にまた眠ってしまった。これをお前にだって」
おれは手紙を渡された。
力ない文字でうっすらと書かれてある。
りょう兄ちゃんへ
ごめんなさい。
ぼくは嘘をついてしまいました。大切なひとの人生を狂わせてしまいました。
しかも、お兄ちゃんにも迷惑かけてしまった。
きっと、彼女お兄ちゃんが好きなんだよ。
おれを見たらがっかりだよね。
そんなことわかってたんだけど言えなかった。
情けない弟だよ。
お願いだから、彼女を一人にしないであげてください。
お兄ちゃん、おれの代わりに会って………
そこでまた眠気が来たのだろう。文章は途中で終わっていた。
なんてバカなやつ。
優しすぎなんだよ。
おれの写真でなく自分の写真をなんで見せなかった。
お前の優しさはちゃんと伝わってたのに。
寝ている弟の前に彼女を連れてきた。
「おれでなくこいつが、みおちゃんのメール相手、弟のしょうだよ」
彼女が弟の顔をゆっくりとのぞき込む。
「幸せそうな寝顔だよな。みおちゃんの夢を見てるのかもね。こいつ一回、寝てしまったら何日も起きない病気なんだってさ。せっかく、みおちゃんが来てくれたのに」
彼女は無言のまま、弟の寝顔を見ていた。