拾
それまでと違い、彼女の口調は早く強くなった。
「しょうさんは、おれなんて言わなかった。いつもぼく、ぼくたちだった。たしかに声も似てるし、送ってもらった写真もあなたのもの。でも、あなたはしょうさんじゃない。なんで嘘ばかりつくの!」
考えれば、これは当然の流れだった。
しょうのふりをして、しょうを悪者にしてでも、二人を離してあげよう。
でも、それで本当にいいのか? おれのなかにあった迷いの結果だった。
「わかった、もうすべてを話す」
嘘はいくら重ねても仕方ないってこと。
「ごめん、おれはあいつの兄貴なんだ。しょうの携帯を見て、二人のやり取りを見てなんとかしてあげたくて。ほんとは会ったらすぐに話すつもりだったけど、あいつがおれの写真を使ってたとは知らなかったんだ」
彼女はおれをずっと睨みつけるように見ながら聞いている。
「だったら、しょうのふりをしてみようってふと思ってさ。でも、結局は二人のことだよね。なら、事実を伝えるしかないか」
「しょうさんはどこなの?」
「しょうはここにはこれないんだ」
彼女は何かを察したように、すがるような眼差しに変わった。
「もしかして、しょうさんに、なにかあったの?」
おれはそれには答えず、
「みおちゃん、今からうちにきてくれない?」
と声をかけた。
彼女は小さく頷き、無言のまま、おれの斜め後ろをふらふらと歩きだした。