一章
人とは何のために生まれてくるのだろうか。十人十色という言葉があるくらいで人とは皆違って生まれてくる。だがそのような中でひとりひとりの使命とはなんなのだろうか。まあ、俺にはそんなこと関係ないがな。俺は毎日が平和でさえあってくれればそれだけでいいさ。俺がこの世に生をなして15年。俺は高校へと進学し今日からは新しい学校生活が始まる。期待してるかって?そんなことがあるわけ無いだろ。新しい環境になったからと言って俺の生活が変わるなんてことはない。そう信じているさ。毎日が平凡で代わり映えがないからこそ俺達は迷わず平和な生活を遅れるのだ。俺は、家から近い学校へ向け眠さでまだ重い足を一歩一歩動かし歩いていた。
「タカ!」
学校へ向かっていた俺の後ろから一つの声が聞こえた。「タカ」とは俺、佐倉隆(さくらたかし)の愛称だ。昔からずっとこの呼ばれ方であり正式名で呼ばれることは殆ど無い。なんならもっと趣向の効いた愛称でも付けてもらいたいものだね。まあ、そんなことを言ったところで変な愛称を付けられたりでもしたら一発で不登校になってやるがな。
「おう、小杉か」俺は声がした方を振り返り顔を確認してそいつの名前を呼んだ。こいつは小杉涼太(こすぎりょうた)。中学からの知り合いで高校も同じところへ通うことになった。俺と違って勉強ができるくせに何でこの高校に進学したのかは謎で仕方ない。お前ならもっと上の進学校だって行けただろうに。
「タカはいつも眠そうだね」
おおきなお世話だと言わんばかりに俺はため息を付き再び歩き出した。
「待ってよ、タカ。一緒に行こうよ。」
スマナイな小杉よ。俺はもっと可愛い女の子と一緒に登校することを望むね。まあ、お前はかなりの女顔だから見間違われることがあるかもしれないがリアルは男だ。男同士で仲良く登校なんて一種の地獄絵図だぞ。
「タカはいっつもそんなことばかり言ってるね。」小杉は俺の放った言葉を笑いながら綺麗に流して俺の横に並んできた。
「何でお前はこの学校に進学したんだ。お前ならもっと上の学校に行けただろ。」
「ん、やっぱり近いからだね。」
お前も近いからと言う理由だけで高校を決めるのか。俺はこの近い学校に入るためにもう勉強したぞこのやろう。
俺達はどうでもいいような雑談をしながら高校までの道のりを歩いて行った。
学校の正門に着くとそこは多くの生徒で賑わっていた。そういやクラス分けが発表されてんのか。こんな人ごみをかき分けて行くのは至難の業だぞ。一人途方にくれていると、隣に居たはずの小杉が居なくなっていることに気がつく。そうすると人ごみの中から小杉の声が聞こえてきた。
「お前どこに行ってたんだ」
「前まで行ってクラス分けを見に行ってたんだよ。ふたりとも同じAクラスだったよ。」
お前という奴はよくこんな人ごみの中を行けるな。俺は思わずやれやれと口に出してしまいそうな勢いでため息をついた。
クラスも分かったので俺達は人ごみを後にし教室を目指した。
教室に着くと初めての顔がうじゃうじゃとしていた。家から近い学校を選んだにも関わらず、よくもここまで見たことのない顔ぶれが集まるもんだな。自分の席を確認し一直線に歩き出す。幸いに俺の席は後ろから二番目という好位置にあった。席に着きただただ黒板だけを見つめていると、始業のチャイムが鳴り同時に先生らしき女性が入ってきた。歳は若く見るからに新米教師だなと思わせるオーラを醸し出している。俺は新米の教師が頑張ってホームルームを始めたのを無視し机に伏せて目を閉じた。
周りから聞こえる声はどれも新しい環境に期待を持った持ったようなものばかりで俺の心境とはうって変わったものばかりである。新米教師があたふたしながら色々と説明している声も聞こえてくる。このあたふたする様子は一種の『萌え』のように感じてしまうのは俺だけだろうか。健全な男ならもの凄く助けたくなるようなタイプだ。そんな教師の説明もひと通り終わり体育館に移動するように促された。入学式だ。なんて面倒なものを催すのか。
「タカ、皆体育館に移動してるよ。」
小杉の声が耳元に届く。みんな真面目なものですね。こんなにてきぱきと動くのも入学して1週間が限度だろう。そんなことを思いながら重い体を起こし小杉と一緒に体育館へと向かった。
入学式なんてものはどこの学校だってだいたい同じものだ。校長やお偉いさんの長い祝辞や在校生の激励、気づけばチラホラと寝ている生徒が見て取れる。校長の話しなんてどうしてこうも長いものなのだろうか。時間があればいつまでも話してそうな勢いだ。そんな話をひたすら聞き流しているとやっとのことで終わりとなった。周りの生徒も長時間座っていて固まった体を伸ばし隣の人と話しだす。そうしているうちに教師がクラスを引き連れ退場しだした。俺達もそれに続いて退場した。
前作をやめて新しいのを始めました。
学園物語って憧れるから書き始めてみました。