橘響夜 7月9日 午後9時53分 渡良瀬市 市街地
最近、ネタはあるけど時間がない状態が続いています。
でも頑張りますよ~
俺と準一はロープを片手に89式小銃を構え、暴徒の群れる商店街の中心へと降下した。着地と同時に奴らも俺と準一に気付いたようで、ふらふらとこちらに近づいてくる。
「準一、戦闘開始だ。好きに撃て!」
「分かってるさ。お前も噛まれるなよ?」
「ああ」
俺は奴ら目掛けて、89式小銃を撃った。
奴らは胴体に被弾し、仰向けに倒れこんだ。しかし、後ろからも続々とやって来る。奴らは意外とタフなようで、倒れた奴も直ぐに起き上がり、こちらに向かって来る。
続いて白鳥と狼森も降りてきた。四人に戦力が増えたお陰で奴らはジリジリと死んでいく。正確にはもう死んでいるわけなのだが……。
「よし、降下地点を制圧!奴らを殲滅しろ!」
俺は叫んで、マガジンを交換した。
二番目のヘリが到着し、他の部隊も降下してくる。後ろからはパトカーや装甲車が現れ、警官や自衛隊が降りてくる。
五分後には完全に敵を撃退した。呆気ない展開に白鳥が小さな声で笑い出した。
「どうした?」
「いや、呆気ないな~って。だってゾンビですよ?もっと死人とか出ると思ってましたよ」
「確かにな……」
俺は無線のスイッチを入れ、本部へと繋げた。
「こちら翡翠隊隊長、橘響夜。任務完了しましたが」
間髪を入れずに野太い男の声が返ってくる。
「了解した。生存者の救助に向かえ。こちらでは警察署方面に生存者を確認している。無線によれば弾薬も尽きかけているようだ」
「了解。警察署へ向かいます」
俺は無線を切り、溜息をついた。
「よし、お前等。次の任務について説明する。集まってくれ」
七人の隊員が俺の周りに集まってくる。俺はパトカーのボンネットの上に地図を広げ、マーカーペンで印をつけた。
「警察署方面の生存者を保護する。この裏路地を通れば七分ほどで着くが、油断するなよ。長尾と村上で先行しろ。以上だ」
俺は地図をたたみ、会釈をした。隊員の朝比奈一と村上圭一が裏路地に入って行き、続いて俺と準一が進む。
暗い裏路地は汚物が転がっていて、カラスの死体も落ちている。あまりの匂いに準一が顔を顰めた。
「臭いな……鼻が潰れそうだよ」
「我慢しろ。俺も同じ気持ちだ」
「早く風呂にでも入りたいな。飛びっきり熱々の風呂によ」
「そうだな。この任務が終ったらみんなで行くか?白鳥の奴の新婚旅行について行くついでにな」
白鳥が顔を顰め、苦笑いをした。
「それだけは勘弁してください。俺の気が参っちまいますよ」
俺も笑い飛ばし、他の隊員もつられてにやける。暗い任務だと言うのに、部下の間には和やかな雰囲気が漂った。
そうこうしている内に、村上が路地の端までついた。そこから顔だけを出し、大通りの様子を窺う。
「ひっ!」
村上がいきなり尻餅をついて倒れた。
「どうした!」
「ダメです!大きい声をだしちゃ……!」
俺が叫ぶと同時に村上と長尾がこちらに走ってきた。その後を追うようにして大量の奴らが現れた。
「どうしたんだ?」
俺が尋ねると、二人は息を切らしながら、
「奴らですよ!この大通りに腐るほどいます!」
と答えた。
俺も89式小銃を構え、奴らに撃ち込む。それと同時に反対側の大通りからも銃声が響いた。どうやら向こうも同じ状況らしい。
「全員、戦闘態勢!」
俺は怒鳴り、更に続けて撃ち込んだ。
村上も続いて発砲を始める。
「隊長!」
後ろで松山武敏が叫んでいる。
「何だ!」
「隊長、動体センサーに反応があります。四方から来ますよ!」
「何だと?」
俺は周りを見回したが、空には何も飛んでいないし、壁に何かが張り付いていることもない。居るのは正面から迫る大量の奴らだけだ。
「いないぞ!」
「でも確かに反応が……!」
そう言いかけた松山の脇にあったビルの窓から奴らが飛び出してきて、松山を押し倒した。叫びながら松山は押しのけようとしているが、奴らも怪力なようでびくともしない。
俺は何も言わずに松山に組み付いている奴目掛けて、89式小銃を撃った。そいつは唸り声を上げて、地面に倒れた。松山が必死に起き上がる。
「大丈夫か?」
「何とか・・・噛まれなくて幸いでした・・・」
松山も気を取り直したようで、89式小銃を構えた。それと同時にビルの窓や裏口から奴らが大量に出て来た。
「やばいぞ!囲まれる!全員、全速力で引き返せ!」
先頭の村上と長尾も走ってこちらに引き返してくる。
俺も準一と一緒に走り出した。
「先に行け!」
俺は叫び、手榴弾を取り出し、奴ら目掛けて投げつけた。
「伏せろ!」
俺は近くの廃材を盾にして破片から身を守った。裏路地の奴らは破片が全身に突き刺さり、もがき苦しんでいた。死んでいる奴もいる。主に爆発の爆心地辺りにいた奴らだ。
「走れ!」
俺は裏路地から何とか走り出た。
しかし、大通りの状況を目にして再び絶望に覆われた。
大通りには裏路地なんかとは比べ物にならない数の奴らがいた。警官隊や自衛隊が応戦しているが、ジリジリと押し戻されている。
「ぐわぁぁぁ!」
先頭の警官が喉を食いちぎられている。その光景を見た警察官が転んで、それにつまずいて転んだ自衛隊員もいる。
奴らの動きは思ったより速く、早くしないとこちらまでがやられてしまう。
「響夜!どうするんだ!」
「応戦するな!退却しろ!」
俺たちは落ち着いて、後退を開始した。既に先頭は突破され、次々と警察官や自衛隊員が食い殺されていく。辛うじて生きている人間が手榴弾などを使っているが、奴らの様子は衰える様子がない。
逃げようにもヘリは俺たちを残して飛んでいってしまったようだ。遠ざかるヘリのローター音が聞こえている。
「響夜!この路地は化け物が居ないぞ!」
準一が叫んで、指差した裏路地には確かに奴らが居なかった。
「よし!全員続け!」
俺たち八人は急いで裏路地に入っていった。それと同時に生き残っていた自衛隊員の断末魔の叫びが聞こえた。
俺たちは更なる地獄に入り込もうとしていた。地獄絵巻のように異形の化け物が溢れる世界に。
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