島原和泉 7月9日 午前10時17分 渡良瀬市 旭TV局
今回の主人公は女性です。後、後書きにキャラ紹介をつけます。今回の主人公は重要キャラです。後々活躍する予定です。
「和泉さんですね。楽屋にどうぞ」
私は島原和泉。15才です。この市で働く見習歌手です。初めは全くウケなかったけど、最近は市内での仕事も増えて来て充実した毎日を過ごしています。
「分かりました。何時もありがとうございます」
そう言い、私は松葉杖をついて歩き出しました。
私は足が小さい頃の事故で少し不自由で、松葉杖を使わないと転んでしまう事が多いんです。
楽屋に入ると、今日一緒に共演する女優の長谷川瑞穂さんが先に座って、寛いでいました。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「あら、こちらこそ。和泉さんですね。長谷川瑞穂です」
瑞穂さんは私に軽く挨拶をして下さいました。私も何時もの様に共演の方の向かいに座ります。
「まだ本番まで時間あるし、少し休んだら?」
瑞穂さんは私の体を気遣ってか、そう言って下さいました。私も今日は早起きだったので、そのお言葉に甘えて少しだけ仮眠をとらせて貰う事にします。
「ありがとうございます。瑞穂さんも私に気を遣わずに休んで下さいね」
「私は平気よ。さっき朝食取ったばっかだし、直ぐ寝ると太っちゃうのよ」
「そうなんですか?では私は失礼しますね」
私は近くの座布団を枕にして、横になりました。少しだけ・・・少しだけ寝たら起きる事にします。
私の意識はすーっと闇へ包まれてしまいました。
「・・・さん!・・・和泉さん!」
瑞穂さんの声が聞こえます。どうやら叫んでいるようですが・・・とにかく私は目を開けて、瑞穂さんの顔を見つめました。
「あれ・・・瑞穂さん?本番ですか?」
「違うわ!様子が変なのよ!」
私は寝起きの体に鞭打って起き上がりました。楽屋は煙で充満していて、瑞穂さんはハンカチで口元を押さえていました。
「どうしたんですか?」
思わず私はポケっとした声で尋ねてしまいました。瑞穂さんは必死に叫んでいます。
「だから火事が起きているのよ!貴方も早く逃げて!」
瑞穂さんはそう言うと、荷物を持って楽屋から飛び出していきました。私は何が何だか分からないまま一人、火事が起きて煙が充満している楽屋に取り残されてしまいました。
「私の杖……」
私はとにかく杖を探そうと、室内を這いずり回って手で探ってみました。煙で目はしょぼつき、視界も悪いので中々見つかりません。
「どこ?私の杖……どこ?」
私の手が漸く、何か堅い棒に触れました。それは確かに私の杖でした。
「あった……」
私はその杖で何とか立ち上がることが出来ました。その後、開きっぱなしのドアから廊下に出ます。廊下に人影は見当たりません。もう皆さんは脱出してしまったんでしょうか?
「とにかく……逃げないと……」
私は松葉杖を頼りに、廊下を階段に向かって歩き出しました。廊下の中盤に差し掛かった時、私は人が倒れているのを発見してしまいました。
「大丈夫ですか!?」
私は倒れている男性の傍らにしゃがみ込み、男性の顔を覗き込みました。
「!?」
私は男性の顔を見て、尻餅をついてしまいました。その男性の顔は歪み、首には大きな噛み傷があります。これが致命傷になったのでしょうか?眼球は顔の直ぐ脇に転がっています。
「いや……助けて……」
私は悲痛な擦れ声しか出す事が出来ませんでした。煙で霞む視界、人影が目に入りました。
「助けて……お願い……」
私の声が聞こえたのか、人影はこちらによろよろと向かって来ました。しかし、その顔を見て私は気を失いかけました。
その男性の腹部は大きく抉り取られ、喰い散らかされた内臓が見えています。目は虚ろで、涎を垂らしながらこちらに向かってきます。
「逃げないと……」
私は床に落ちている杖を拾い、必死に立ち上がりました。
煙の立ち込める廊下は私の中の酸素を平気で奪い取り、私を苦しめます。でも私の不自由な足が止まることはありませんでした。追いつかれたら死ぬ。直感でそれを感じ取り、頭の中で警鐘の様に何度も響き渡ります。
廊下の終わりも見えてきた頃、漸く開いているドアを見つけました。警備員室と書いてあるそのドアの中は煙もあまり入ってきていないようでした。
「逃げないと……」
直ぐ後ろまで迫った男性を振り切るように、最後の力を振り絞ってドアを潜り、閉めてから鍵を掛けました。
私は軽い酸欠に陥っていた様で、意識はどんどん遠のいていきます。
「私……死ぬのかな?」
私の意識は闇へと吸い込まれていきました。
逢海寛人
十五才 特技:ゲーム
詳細:普通の中学生。成績は微妙だが、緊急事態やイレギュラーに強い特性を持つ。お気に入りの武器は金属バット。ルックスは普通。