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鷹見真一 7月9日 午前10時02分 渡良瀬市 裏路地

 俺たちは裏路地をひたすら進んだ。もちろん何度も途中で後ろを振り返る。


「奴らは追って来てませんね!」

 

 佐伯が息を上気させながら、叫んだ。


「頑丈な鉄柵だ!そう簡単には破られないさ!」


 俺も息を上気させながら返した。

 俺は中学時代は陸上部だったせいもあってか、体力は結構あるほうだ。佐伯も中々の体力らしく、しっかりと俺の横にいる。

 矢島は……言うまでも無く体力馬鹿のようだ。ここまでノンストップで来たというのに息一つ切らしていない。


「なあ!あれって!」


 矢島が前方を見て叫んだ。俺も前を見た。

 前方には奴らが十数人、狭い路地に溢れかえっていた。こちらの足音に気付いたらしく、こちらによたよたと向かってきた。


「うわああ!どうするんですか!」


 佐伯が慌てて叫んだ。俺と矢島も立ち止まり、二、三歩下がった。


「おい!引き返すぞ!」


 矢島が叫んで、来た道を引き返そうとした。俺はそれを急いで静止する。


「待て!落ち着けよ!ここまで一本道だったじゃねえか!」


「そうか!くそっ!」


 俺たちはじりじりと後退し始めた。前は奴らに塞がれている。後ろは行き止まり、鉄柵を越えてもそこに居るのは……。

 何てこった!

 俺は舌打ちをした。この状況を一言で言うなら、前門の虎、後門の狼、と言ったところだ。

 俺は辺りを見回す。何か活路がないかと。そしてある事に気付いた。


「おい!佐伯、矢島!そこの窓から中に入れば助かるぞ!」


 矢島と佐伯が俺の向いている方を見る。そこには地面から二メートルほどの位置にある窓が見えた。大人一人なら何とか通れる幅だ。


「よし、佐伯が先に行け!矢島は佐伯を持ち上げろ!俺が援護する!」


 俺はホルスターから拳銃を引き抜いた。今まで撃ったことは無かったが……やるしかない!


「掛かって来な!相手になってやるぜ!」


 俺は拳銃を訓練の的と奴らを置き換えて、狙いを定めた。


「いざとなると怖いな……」 


 俺は慎重に狙いを奴らの集団の先頭の奴に合わせた。そして引き金に力を込める。鋭い発砲音と同時に小さな衝撃が腕を走る。

 俺が狙いを定めた奴の頭に穴が開き、奴は地面に力を失うように倒れた。


「さあ、次は誰だ?」


 俺は拳銃の狙いを次の奴に定めて、再び発砲。続けて発砲した。奴らの集団に続けて撃ち込んでいく。俺は知らずの内に自分が狂気に犯されていることに気付いた。顔には笑みすら浮かべている。

 でも撃ち続けた。何が何だか分からなくなっても、撃ち続けた。


「おい!鷹見!早く来い!」


 ふと我に返ると、矢島が窓から上半身を出して俺を呼んでいた。俺は迷わず窓に近づき、窓によじ登ろうとした。その俺の手を矢島が掴み、引きずり上げる。

 今日ほど矢島の怪力に感謝した日はないだろう。俺は窓から必死の思いで中に潜り込んだ。

 窓の中は何処かの店のトイレのようだ。小便器が一列に並び、奥には個室がある。

 佐伯が個室の中を全て調べ、何も居ない事を確認する。


「一先ず安心だな。これからどうする?」


 俺は矢島に尋ねた。矢島は拳銃の整備をしながら、俺の問いかけに答えた。


「まずは署に戻ろう。そこで作戦を練り直そうじゃないか。お前のお陰で奴らの弱点は分かったんだ」


「俺が?俺が何か何かしたか?」


「ああ、お前が奴らを撃っているときに気付いたんだが、奴らは頭を撃ち抜けば活動を停止するんだ」


 ああ道理で、と俺は思った。

 足に撃ち込んで動きを止めようと思っても止める事は出来ない。頭を撃ちぬかない限りは。


「早く他のみんなに知らせよう。警察はいきなり民間人の頭を撃ちぬいたりしないだろう。そこが弱点だという事を教えないとな」


 矢島は銃をホルスターにしまい、トイレのドアを開いて、外の様子を窺う。


「よし、誰もいない。行くぞお前等」


 俺たちは頷き、警察署へと向かった。

次回は新主人公を出したいと思っています。

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