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橘響夜 7月10日 午前8時05分 渡良瀬市 私立律明学園

20000アクセスを突破していました!

これも読者の皆様のお陰、感謝感激です!

 集会の後、俺たちは生徒に朝食を与えるため、体育館からそう離れていない武道館を食堂に選んだ。理由は広いことと、近くの器具庫にパイプ椅子、折りたたみテーブルがあったこと。そしてもう一つ、家庭科室が近かったからだ。

 まず俺たちで食堂に必要なテーブル、椅子を配置し、生徒を座らせた。料理を作るのは俺たちと数人の女子生徒だ。

 まず俺は女子生徒の料理の腕に驚かされた。いい意味ではなく、悪い意味でだ。味噌汁を作らせていた訳だが、まず味噌の加減が滅茶苦茶で異様なしょっぱさが俺の口に広がった。


「げっ!!これは……」


 準一が性格に合わない声で嗚咽を漏らした。白鳥や狼森達も苦笑いを浮かべている。俺はなるべく少女たちを傷つけない様に、


「まあ、失敗は誰にでもある。お前たちは食器を武道館に運んでくれ。いいな?」


 と言った。

 女子生徒はプラス思考なのか、笑顔で俺の与えた仕事に従事した。

 それで結局、料理は俺たちの仕事になったのだった。


「やれやれ、料理なんて久しぶりだな……」


 俺は料理器具を前に呟いた。

 手料理を作るのは、本当に久しぶりだった。俺が手料理を作るような相手は今まで、妹の麻里くらいだった。いや、麻里にしか作ったことが無かった。


「どうした?相手が妹じゃないとやる気が出ないか?」


 準一が俺の心情を見透かしたような質問を投げかける。

 俺は麻里の顔を思い出し、笑みを浮かべた。


「隊長、笑みが変態チックです……皆にひかれますよ」


 俺は松山の冷静な突っ込みで素に戻った。俺の麻里を思い出している時の笑顔はどうしても緩みがちで、変態と誤解されやすい。

 俺は場を仕切りなおすように鍋を手にした。


「さあ、飯作るぞ。俺も腹が減った」


「「はい」」


 全員が声を揃えて、返事を返す。


「まあ、日本人らしく和食でいこう。白米と味噌汁、魚でいいんじゃないのか?」


「それはどうかな?」と準一。


「最近の子供は洋食派が絶賛、和食派を追い抜いているらしい。特にここのインテリは洋食の方が好みじゃないのか?」


「まあな。でもな……俺は和食の方が好みなんだ」


 俺はあくまで自分の意見を押し通した。

 自分の趣味を人に押し付けるのはどうかと思うが、実際日本人には和食の方が健康にいいと思うので、和食にすることを選んだ。

 調理分担は、俺と準一で魚(ちなみに鯵)を焼き、松山、狼森が白米を炊いた。味噌汁は自称味噌汁達人の白鳥が担当することになった。

 どうやら結婚するにあたって勉強したらしい。

 

「それにしても……」


 俺は焼いた鯵に醤油をかけ、味付けしながら呟いた。


「男だけの調理場は何故かむさ苦しいな。やはりこういうのは女の仕事だ」


「隊長、今は男女共同参画社会です。家事が出来ない男はダメですよ」


 白鳥が新婚らしい発言をする。俺は複雑な顔で鯵に顔を戻した。

 俺も麻里が居た頃は家事を率先してやっていた。麻里はあまり身体の強いほうではなかった。だから学校も休みがちで、俺が料理を作る機会も多かった。

 でも今は…………もう…………。


「ああ……隊長……すいません。俺、何かマズいことを……」


 白鳥がすまなそうに頭を下げた。俺は笑顔に戻り、


「気にするな。何でもない」


 と言って、白鳥に味噌汁から目を離すなよ、と目で伝えた。

 俺は真顔で鯵に目を戻した。何故か脳裏に浮かんでくる昔の思い出を思い返していた。


「あらあら、随分とむさ苦しい厨房ですね。こっちまで気が思いやられます」


 背後から悪戯っぽい女性の声が響いた。

 俺と準一が振り返ると、そこにはセクシーに太腿を露出させたドレスに、エプロンを身に付けた浅代の姿があった。


「ええと、御園製薬の……朝倉さん?」


「浅代です」


 浅代は短く訂正し、俺の隣に立った。いやでもはっきりとした胸元の谷間が目に飛び込んでくる。

 俺は鈍感なので別に気にとめることもなく浅代の次の行動を見るべく、鯵に味付けをしていた手を引っ込めた。

 浅代は調理された食品を見て、若干呆れ気味に首を振った。


「貴方方、育ち盛りの生徒達にこの質素な食事はないでしょう?せめてもう一品くらい欲しいところですね。どれ、私が目玉焼きでも作りますかね」


 浅代はフライパンを手にとり、卵を割って調理を開始した。

 俺達はそれを呆然と見つめる。浅代は手際よく目玉焼きを作っていくのだった。


「どうしました?眺めているのだったら、手伝ってください」


「お、おお」


 俺は間抜けな返事をして、もう一つのフライパンを手にとり同じく調理を開始した。

 俺も浅代に負けず劣らず手際よく焼き上げていく。


「あら、中々お上手ですね」


「まあ。俺も昔は作ってやる相手がいたんだよ」


「……妹さん?」


「何故、そう言いきれる?」


 浅代はまた悪戯っぽく笑う。


「女の勘ですかね。ま、私はそんな人いません。居ただけマシじゃないですか?」


「……俺、お前とは気が合いそうな気がするよ」


 俺も小さい笑みをこぼした。

 

「新婚みたいですね。羨ましいですよ」


 後ろから松山が率直な感想を漏らしていた。

 俺はそれを聞き、顔を紅潮させた。


「お前ら、出来たのを運んでおけ。ここは俺がやっておく」


「はい。隊長命令とあらば」


 松山は白鳥を引っ張って、出て行った。


「冷やかしやがって……」


 俺は舌を打ち、呟いた。

 俺が別の卵を取って、割ろうとしたときだった。

 突然、悲鳴が響いた。食堂にした武道館の方からだ。ただ事ではないような悲鳴に聞こえる。


「準一!」


 俺は銃を引っ掴んで、食堂に向かって走っていった。

 一体、何が起こったのだろうか。面倒なことじゃなきゃいいがな……。

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