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橘響夜 7月9日 午後11時47分 渡良瀬市 市街地

今回は響夜編です。これからメンバーが合流していきます。

「いい眺めですね。俺の相棒も調子がいいみたいです」


 そう言って白鳥は銃を撫でる。


「そうだな」


 白鳥の呟きに俺は軽く相槌を打った。

 俺の部隊+尾上というコック、そして俺の妹、麻里に生き写しの和泉の計十人は大きめの観光バスで市街を移動していた。

 俺と白鳥は今、バスの上に出て、銃で奴らを蹴散らしている。運転は準一に任せ、後のメンバーは車内で雑談でもしているのだろう。バスの上に置かれたCDプレイヤーからはテンポの良い洋楽が大音量で流されている。全て白鳥の趣味らしい。


「いや~、隊長。こうしていると地獄も天国と変わりないですね。今までの作戦では音楽なんて聞いている余裕が無かったですし……」


「そうかもな……まあ状況は最悪だがな」


 俺は苦笑し、周りに目を配らせた。前方にコンビニが見える。

 俺は運転席の準一に向かって叫んだ。


「おい!前方にコンビニだ。俺と白鳥で中を偵察する」


「分かった。コンビニの前に止める」


 バスのスピードが少し上がった。

 コンビニはまだ薄く非常灯が灯っていた。俺はバスの屋根から飛び降り、コンビニの中を窓越しに覗き込んだ。人影は見当たらないが、奴らが通路で蹲っている可能性もある。

 俺は89式小銃を構え、扉を叩き割った。素早く銃を構え、店内を警戒する。白鳥も俺の後ろから店内に入ってきた。俺がまず通路を全て確認したが、奴らの姿は見当たらない。


「クリアだ。物資を補給しろ」


「はい」


 白鳥が一番、入り口側の棚から乾電池などを漁る。俺はコンビニには必ずあるトイレに向かった。別に用を足したい訳ではない。奴らが潜んでいるかも知れないからだ。

 俺はトイレのノブに手を掛け、開いた。中は真っ暗で、何がいるか分からない。俺が手持ちのライトで明かりを点けると、そいつはいた。

 口から血を流したそいつは急な明かりに反応し、俺の方を睨んだ。その目は人間ではなかった。

 そいつが飛び掛るのと、俺が89式小銃をぶっ放すのは同時だった。銃口が火を噴き、そいつは壁際まで吹っ飛んだ。


「隊長!どうかしました!?」


 白鳥の声が聞こえる。俺は白鳥に向かって叫んだ。


「一匹始末した。物資の補給を続けろ」


「分かりました」


 俺は撃ち殺したそいつを見下ろし、唾を吐いた。そのままドアを閉め、トイレを後にする。

 俺は近くのレジの脇の棚からタバコを取り出した。一箱の包装を破り、取り出したタバコに火を点ける。煙を吐き出し、俺はレジの目の前にあった花火コーナーに目をやった。


「花火か……使えるかもな……」


 俺は花火を全てバスに積み込んだ。火薬はあるに越した事はない。こんな状況なので何時、弾薬が尽きてもおかしくはないのだ。その時、火器を作れる位の火薬は持っていたほうが得策だ。

 それにこれから向かうのは学校だ。そんじょそこらの市立学校ならともかく、名門私立学園だとしたら、理科室には普通の学校には無いような薬品があるかもしれない。それらは全て爆薬や火器の作成に使えるものだ。

 俺は花火を積み込んだ後、コンビニの中の雑誌コーナーに目をやった。


「暇つぶしにはなるな」


 雑誌も買い物カゴに入れ、バスに持っていった。

 雑誌などは隊員の暇つぶしになるだろう。こんな状況だからこそ、暇つぶしは必要なのだ。残念ながら大人のお楽しみ、十八禁の雑誌などは無かった。あったなら皆、飛び上がって喜んだだろう。


「後は……食料だな」


 俺は一通り作業が終った白鳥を呼び、カップ麺やスナック菓子などを袋に詰めさせた。俺はその間にタバコを集め、バスに積み込む。もちろん酒も忘れずにだ。コンビニには他にも隊員達が喜びそうなものが沢山あった。

 例えばこの暑い季節に欲しいもの、アイスや氷などだ。しかしこれらは途中で溶けてしまいそうなので、今は回収を諦めた。しかしまだ冷凍庫は動いていたため、そのうちに回収出来るかも知れない。

 コンビニ弁当やパンはあまり日持ちしないので、一先ず今、隊員が食べる分だけを回収した。

 娯楽用のカードゲームなどもあったが、これは俺の趣味で回収した。俺はこの手のトレーディングカードに昔、ハマっていて、今でも集めているのだ。この際、持っていっても文句はないだろう。必要ないだろうが、レジの現金も回収した。この事態で現金は意味を成さないだろうが、事態がもし治まったら……強い味方になってくれるだろう。


「そろそろ行くか。白鳥、残りの物資を積み込め。行くぞ」


 俺は白鳥を急かし、コンビニを出た。白鳥がコンビニから出てくると俺は近くの販売機を倒し、入り口を塞いだ。


「何してるんですか?」


 俺は誰も入れないようにしてから、白鳥の質問に答えた。


「後から取りに来る時、荒らされないようにするためだ。どんな輩がいるか分からないからな」


 危険なのは奴らだけではないだろう。この事態で本性を表している人間もさぞ多い事だろう。俺が心配なのはそこだった。人間は奴らと違って、頭で考えて行動する。故に恐ろしい。


「そうですね。人間のほうが厄介かもしれませんね」


「そうだ。お前も新しい嫁さんには気をつけろ。何時、本性を表すか分からないぞ」


 白鳥が苦笑する。俺たちは再び、律明学園へと向かってバスを進ませた。

次回は久しぶりの鷹見真一編をやる予定です。

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