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夫婦とりかえ物語〜秘密の入れ替わりデート〜  作者: 関根るり


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4/4

4 キスされちゃう

夏の日差しを燦々と受け水が撒かれたバラの庭は、花や葉がキラキラと反射している。庭の真ん中に石畳に囲まれたプールがあり水面は、より一層とキラキラと輝いていた。


均は早々に水着に着替え、ソワソワと庭の端で、瞳見を待ちながらプールを眺めていた。


プールサイドで日差しがあまり当たらなそうなパラソルの下のビーチソファを選んで、腰掛けた。


瞳見はきっと日焼けを嫌がるだろう、と思ったからである。


今日はじめて会った素敵な女性と平日のプールに来るなんて、考えられないことだけれど、それも高雄だと思えば当たり前だと思えてきた。


瞳見が自分のことを、うがっている様子はほとんどない、もはや均も、自分が高雄になったかのように錯覚していた。


キラキラと輝くバラの間を白い石畳の小道が更衣室の小屋から庭のプールまで繋がっている。


その花道を、水着の上から薄いガウンを羽織った瞳見が歩いてきた。綺麗だ、と均は惚けてみている。


「すごい間が抜けた顔してるけど」


と瞳見は笑った。


こういう時、なんて言えばいいのか、と均は思っていたが


「すごい、綺麗ですよ」


と、敬語になってしまったけれど素直にいうことができた。


「ありがとう」と瞳見も素直に答えたみたいだった。


2人はビーチソファにバスタオルを敷いてふちに腰掛けた。


「綺麗だね」瞳見がサングラスを外してバラを見ながらいう。


「庭も瞳見さんも綺麗ですよ」と均は返したが、


「ちょっとおまけみたいな言い方ね」瞳見に笑いながら続ける。


「都会の真ん中にこんな静かな庭なんて、信じられないね」


「誰もいないし、ちょっと不思議な庭だね。静かすぎるような気がする。こんなもんなのかなー」と均は周りを見回した。


瞳見は立ち上がり「暑いから、ちょっと水に入ってみようかな」と薄いガウンを脱いで、ソファにかけた。


瞳見の白い手足が陽の光の中でキラキラと輝いているようで眩しくて、均は思わず目を伏せた。


立ち上がった瞳見は、「泳ごうよ」と均の手を取った。


「そうだね」瞳の柔らかく暖かい手の温もりが伝わる。かがみこんだ瞳見の胸元に目をやりドキッとする。


こんなキラキラした素敵で魅力的な女性と昼のプールで遊んでいるなんてこんな幸せな時間があるのだろうか、と均は考えていた。本当に、この女性は自分のことを高雄だと、自分の夫だと思って接しているのだろうか。


均の手を自分から握ったことなんて最近あっただろうかと香織は考えていた。今日は自然ににこやかな顔で、均に話しかけるのもいつの記憶か定かではない。そして、この男は本当に私の一体どこを見ているのだろうか。本当に、私に気がついてないのだろうかと、驚くほど呆れるとともに、不安が芽生えてくるのであった。


2人でプールのふちに腰掛け足先を入れる。時間も早いプールはまだ少し冷たくて暑さでほてった体に気持ちがいい。


「冷たくて気持ちいいね」


香織はプールサイドに大きな浮き輪が積み上げられているのを見つけると


「浮き輪借りれるみたいだから借りてくるね」


と浮き輪をとりにプールサイドを歩いていた。


近くであまり瞳見を直視できなかった均は、浮き輪を取りに行く瞳見にみとれていた。


プールサイドのビーチソファに1組他の客がいたことを思い出した。2人は本を読んでいたが、本の上から、瞳見を見ているようだった。


女性が何か男性に言って、男性の足をつねっている。


男性が瞳見のことを見入ってしまったのかもしれない、と均は思った。


瞳見が浮き輪を持って戻ってきた。


「大きい浮き輪で2人で乗れそうだよ」


瞳見は弾んだ声。はしゃいでいるようだ。


時々、どこか不満そうな表情が見え、均も不安に思っていた。自分でも今さながら、どうしてプールになど誘ったのか。


しかし、今はこの素晴らしい庭のプールと浮き輪のおかげで瞳見が楽しそうで良かったと均は思った。


「確かに大きいけど、2人は無理なんじゃないかな」


均はプールの縁から立ち上がり、浮き輪をプールに浮かべた。


瞳見は足をおそるおそる浮き輪の中に入れて手繰り寄せる。


「ちょっと浮き輪が大きすぎてここから乗るの、難しいかも、落ちそう」


ゆらゆらと水面を揺れる浮き輪に飛び乗るのは勇気が入りそうだ。


その様子を後ろで見ていた均だった。


均は後ろからしゃがんで瞳見を膝の裏から腕を入れお姫様抱っこの形で瞳見を抱き抱えた。


「え、ちょっと恥ずかしいからやめてよ重たいよ」


そう言いながらももう抱きかかえられているのでどうすることもできず、恥ずかしがりながらもそのまま、浮き輪の中に、座らせてもらう。


「結構、力持ちだったんだね」


と瞳見は恥ずかしそうに均のことを見て笑った。


均も、急に大胆なことをしてしまったかもしれない、と顔を真っ赤にしてプールに飛び込んだ。


プールの水は最初ひやりとしたが、あたたかく、体温と心拍の上がった2人を冷ましてくれるほどではなさそうだ。


強い日差しとぬるいプール、2人は、ゆらゆらと水面を漂う。


均が泳ぎながら瞳見が乗る浮き輪を押す。あっちへふらふらこっちへふらふらと行ったり来たりして泳ぎながらはしゃいでいる。


「疲れたでしょ、交代しようよ」瞳見は振り返って均に声をかけた。


「大丈夫、大丈夫」均は答える。


「浮き輪も気持ちいいよ、じゃあ、やっぱり一緒に乗ったら?」


二人でも十分に乗れそうな大きな浮き輪なので均が一緒に乗っても問題なさそうだ。


浮き輪の上から瞳見が手を差し伸べて、均は浮き輪の上に勢いよく登ろうとした。


大きな二人乗りの浮き輪。


均は瞳見の手を握りながらもう片方の手を浮き輪に置きグッと体重をかけて飛び上がった。


浮き輪はぐらっと大きく揺れたけれどひっくり返るほどでもなく、均は腹から体を滑らせて、倒れ込むように乗り込もうとした


瞳見は、足を投げ出して浮き輪に座っていた体勢だった。


均をひっぱりあげた拍子に、瞳見は浮き輪の上に寝転んでしまった。


その上に均が滑って上がってきたので、均は瞳見の上に覆い被さってしまった。浮き輪はまだグラグラと揺れている。


「あっ」 瞳見が驚いたような声を出す。


2人の顔がすごく近付いている。


ここまで来たらもう絶対に気づくはず、香織はそう思った。


浮き輪の上に抱き合うように2人が横たわる。


均は、自分の太ももから、瞳見の体温を感じて心拍数を上げていた。


目の前に、均の瞳見の顔が迫る。もうくっつきそうな距離で均はめまいがした。


こういう時、どうすれば、いいんだろう、と均は思っていた。


高雄なら、夫婦だし、せっかくの機会だからとキスくらいするかもしれない、と考えていた。


瞳見なら、鼻息の荒い夫にさらっとどいてもらって上手にかわすだろう、と香織は思っていた。


この男は、私のことを見ているようでもしかしたら、何も見ていないのかもしれない、と、冷たい汗が流れた。


「ちょっと、重たいよ・・・」


瞳見は、均の肩を押し返して逃れようとしたが、びくともしない。


こんなに、均が力持ちだとは思っていなかった。いつもと違う力強さを感じる。


やっぱりこの男は均ではなく、他人なのかもしれない、香織は思い始めた。そう思うほどに冷たい汗が増してくるが体を動かそうとしても浮き輪が安定しないのでモゾモゾとするだけで抜け出せない。


「瞳見・・・」と呟いて均は、瞳見の目を見つめる。


「ごめん、ちょっとどいて欲しいんだけど」と香織は苦笑いをしながら、均を押し返す。


均は、高雄と瞳見は夫婦なのだからこのままキスをして、自然だろうと思った。


こんなに気持ちのいい素敵なプールで、抱き合う夫婦なのだからと。


瞳見は照れているのかもしれない、と均は考えていた。


均は、焦る気持ちを抑えながら、瞳見にキスをしようと覆い被さった。


香織は、もはや諦めて目をつぶってこの悲しい出来事を受け入れるしかないのか、と思た。


咄嗟に、肩を押していた手を外して均と自分との唇の間に挟むことができた。メイクの時に、瞳見が塗ってくれたハンドクリームの香がする。その匂いに救われながら、均をにらむ。


均は、間に挟まった手に驚きながら、目をぱちくりさせている。


そして「え、香織!?」と慌てふためいた顔で 体をのけ反らせ膝立ちしようとして大きく浮き輪はバランスを崩す。均はそのままプールに落っこちる。


香織はザマアミロと思いながら、プールに落ちる均を見た。


浮き輪の上から盛大にひっくり返った均は、バシャーンと大きな音を立ててプールに落ちた。


その直後、一瞬で空が真っ黒い雲に覆われあたりが夜のように真っ暗になる。


ピカピカと稲光が横に走る。龍が空からこちらの様子を見ているような不気味さだ。


後ろのソファで寝そべっていたカップルが飛び上がって、何か叫びながらこちらに走ってくる。


「危ないよ、逃げよう!早く逃げよう!」


2人が何か叫びながらプールサイドに駆け寄る。


女性が手を差し伸べて、香織を岸に手繰り寄せながら声をかける


「あなたの勝ちよ」と瞳見は香織に微笑みかけた。


男性が慌てていう「勝ってないよー、これはもう手遅れだったんだよ。どっちも負けちゃったってことなんじゃない?早く逃げないと、やばいよ」


男性はプールに飛び込んで泳ぐ、この後なんて香織に言い訳をしたらと考えて放心状態の均を抱き抱えた。


均は男を見て我に帰る「え、高雄さん?どうして」


高雄は答える。「多分、アウトだったのかも」


高雄に抱き抱えられるように、均はプールの岸に上がる。


夜のように真っ暗になってしまった庭のプールに、雷鳴が轟く。


暗くなった庭が稲光の瞬間その時だけ真っ白に輝く。


その度に、庭の木々の影が大きくなっているような気がして、均は目を擦った。


瞳見と香織が2人に走りよってきた。


「あ、えーと、どういうことかな」均はぼそっと言って2人を見た。


瞳見だと思っていた見知らぬ女性は香織で、いつもと同じ香織の顔をしているのが瞳見である。


「目にみえるものだけを信じちゃダメって、ことじゃない?」と瞳見は自慢げに、嬉しそうに言った。


「均くんは、浮気しようとしたんだよ、あのまま瞳見さんにキスしようとした訳だから」と香織は均を睨みつけた。


「いやいや、違うでしょ。香織さんにキスしようとしたんだから2人は夫婦なんだから、問題ないでしょ」高雄が割って入ってフォロー。


均は何がなんだか、あっけに取られていたが「痛っ」均は、腕に何かが刺さり痛みで声を上げる。


「香織さんはやまっちゃダメよ」と高雄が慌てる「えっ、私、まだ何にもしてませんよ」香織が慌てる。「これからするつもりよね」と瞳見が笑う。


均の腕には、バラの蔓がキツくまきついている。「痛い痛い、なんだこれ?」


庭のバラがどんどんと動物のように大きくなって均の背中まで迫っていた。


「バラが動いてる、」均の腕に絡まるバラに香織が驚く。


「ちょっと眺めてないで、とるの手伝ってよ、痛っ」


均は絡まるバラの蔓を剥がしている。瞳見が手伝う。腕が傷だらけで血が流れている。


庭のプール全体のバラがどんどんと、周りからプールに向かって迫ってくる。まるで彼らをここに閉じ込めようとするかのように。


「これ、どういうことなんですか?」香織は後退りしながら、瞳見に尋ねる。


「2人の世界が、香織さん、あなたの心に呼応して、今閉じようとしている、ってことだと思う」瞳見が答えた。


「早く、逃げないと」均は棘が刺さって血が出る腕を押さえている。


「私たちの世界が閉じちゃうってどういうことですか?」香織は、瞳見に聞く。


「バラのトンネルまで急ぎましょう」瞳見は香織の手を引いて走る。均も後に続く。


瞳見が走りながら、香織の質問に答える。「私たちが思ってる以上に、夫婦の世界って不安定ってこと。たまたま一緒にいる、ってくらい偶然のことで。維持しようとしなかったら簡単に壊れちゃうのよ。お互いのちょっとした行動でもね」


「均くんが瞳見さんに浮気しようとしたり、とかですね」香織が振り返ってチラッと顔を見る。


「そうじゃないよ、僕は、高雄さんになりきってただけで、瞳見さんは奥さんなわけだから、浮気とかじゃないよね」均が後ろから走りながら慌てて取り繕うが、取り付く島は無い。


瞳見が振り返って均に言う。


「高雄は、男性が自分達の都合のいいようにかっこよくありたい、ていうそういう人なのよ」


「うーん」均は言い返せず黙ってついていく。


棘に絡め取られたビーチソファが強い力で捻じ曲げられ、バキバキと音を立てて壊れている。


あんなものに巻き取られたらおしまいだ、均は恐ろしくなった。


「女がいたら口説く、それしか考えてないんだから。均くんがなりたいかっこいい自分のイメージ、そのものなんだよ。そういうことですよね、瞳見さん」


なぜか香織が捲し立て怒る。


「そうだと思うけど、香織さん言うようになったわね」


棘の蔓が激しくなり、均たちを追いかける。


棘のトンネルまで戻ってきた。


庭の出口につながる棘のトンネルは、もう閉じようとしている。とても裸のような格好で飛び込んだら無事ではいられない。


均はバスタオルをギュッと体に巻きつけて「これで幾分か、マシになるような気がする。中に入って押さえます」


「えっ」香織と瞳見はびっくりした顔で止めようとしたが、すでに遅く、均は閉じつつある、トンネルの中へ駆け足で飛び込んだ。


「ぎゃー、いてて」


均がトンネルに入る入り口あたりで早速、棘のつるに絡め取られ、あっけなく壁に貼り付けられてしまった。


プラスチックのベンチのようにバキバキに折られたりしなくてよかった、と2人は眺めながら思っていた。


「棘も、ちょっと手加減してくれてるみたいね」と瞳見は苦笑い。


「いい気味だから、しばらくああしていてもらいましょう」と香織も同意した。

「全くしょうがないわね」

壁に貼り付けられた均を見ながら

香織は呆れて眺めていた。


「何がしたかったのよ」


「イタタ、助けてよー、

かっこいいところ見せたかったんだよ」


棘が食い込んで、血が滲んでいる。

確かに痛そうだ。


瞳見が小走りで戻ってきた。

「剪定用の大バサミがあったから借りてきた」

大きな枝切り用のハサミを抱えている。


「あ、ありがとうございます」

均は、涙ぐんでいる。


「もう悪さしない、

って誓うなら助けてあげてもいいけど」


「誓います、誓います、助けてください」


ハサミで絡まった蔓を切っていく

切ったそばから次々絡まるのでキリがない。

このしつこさに、香織はふと顔をあげて、

瞳見にいう。


「私って結構、

根に持ってしつこいタイプなのかもしれないですね」


瞳見も蔓を引っ張って手伝いながら答える。

「そうなのよ。

とりあえず謝っておいて

その場を切り抜けようとしてる

均くんを許してないみたいね」


「痛い痛い、もう少し優しく引っ張ってよ

すごい食い込んでる」


均は痛みで半泣きだが、

2人はお構いなしに強引に蔓を引っ張って

切断して、ようやく均を助け出した。


「自分で突っ込んでいって、

捕まっちゃったんだから

自業自得でしょ」


瞳見がバスタオルを

均にかけてあげる。

くるまったバスタオルは

すぐに血が染み込んで

まだら模様である。


「早くいかないと

トンネルが閉じちゃうと思ったから」


もうトンネルは

棘で覆い尽くされようとしていて

素手で中に割って入るのは難しそうだ。


雷はますます激しさを増している。

雨が降り出して辺りはさらに暗くなる。


その時、

雷とは違う明かりが3人を照らした。

光の方を振り返ると、

一台の車が庭のバラを踏みつけながら

走ってきた。高雄だ。


高雄は窓を開けて

大きな声で3人を呼ぶ。


「乗って乗って!」

3人は、急いで車に乗り込む。


「これで、突き破ろう」

高雄は車の位置を調整して

トンネルのバラに照準を合わせる。


「いいアイデアね」

「高雄さんさすがです」

瞳見と香織が褒める。


均はその手があったか、

と考えながら

自分も2人から

褒められたかったな

と思っていた。


「みなさん、

しっかりシートベルトをお締めください。思いっきりいきますよ」


棘のトンネルはまだかろうじて

先の空が見える。

強い力で押し込んでいけば

貫通できそうだ。


「準備OKです」香織が答える。


「行きます」


グッと踏み込んだ時の

加速が売りのEVは、すごいパワーで棘が絡まるトンネルへ突っ込んだ。


突っ込んだ瞬間、

棘たちが塞ごうとする

壁に突撃した衝撃で、

均は目の前が真っ白になり、

気を失った。


均は目を開けたとき、

頭がクラクラして、

寝違えた時のように首が痛かった。


いったい何があったのか

混乱したが、

棘の壁に車で突っ込んだことを思い出し、

気を失っていたのだ、と気づいた。


均は血が滲んだバスタオルにくるまって

運転席に座っていた。


助手席を見ると、

香織が同じように

座って気を失っている。


「香織ちゃん、大丈夫か」

と声をかけると、瞼がピクっと動き、

目を覚ました。

「首が痛い、」首をさする。


均はそこで、ようやく車の中には、香織と均の2人だけだったことに気がついた。


窓の外を見ると、

空き地だった。

いろんな資材が置いてある、大きな工事現場である。


どこだろう?と思っていると、

運転席の窓をコンコンとたたかれて驚く。


ヘルメットを被った

作業服を着た男が、困った顔で

均たちをみている。

均のバスタオルを剥いで香織がくるまった。


男は外から、均たちに注意をする。

「ちょっと、ここでそういうことされると、

困っちゃうんですよね。

もうすぐ、作業の人たくさんくるんで、

早くどいてもらっていいですか」


2人は、顔を真っ赤にして男に謝り、

急いでその場を走り去った。


都会の大きなホテルも

プールもどこかへ消えてなくなっていた。

ここは、老朽化したホテルを取り壊し、

建て直し最中の工事現場だった。


後部座席には、2人の着替えが置いてあった。

目立たないところに車をとめ、

2人は大急ぎで服を上から来て、

高雄から車を借りた駐車場まで走らせた。

駐車場に車を停めた。

車から降りると、車には傷一つ、

ついていなかった。

車はこの駐車場の番号のところに置いておけばいい、

と元々高雄から言われていた。


ところで、

と香織がいう

「なんで最後、私だって気がついたの?」


「ハンドクリームの匂いで、付き合い始めた頃に、

一緒に買いに行ったハンドクリームの香りだったから。

懐かしくなって」


「そう」香織はそっけなく答えた。


均は停めてあった電気自転車を押しながら


「これからどうする?」と尋ねた。


「ちょっと早いけど、早く終わったって電話して、迎えに行っちゃおうか」

香織が答える。


「今日、あの2人、絶対職場に行ってないよね、プールで寝てたし」


「でも面白がって、最初に顔出してる可能性もあるよね」


「確かに。明日、仕事行くの怖いな」2人は歩きながら帰っていった。


(完)


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