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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

月を見て、君を想う

作者: 靫 マギー

なんとなく、落ち着かなくてバイクを走らせていたら電話が鳴った。

相手は…佐久間?

「今日の月は?」

と、聞かれて、月?とそのまま素直に顔を上げて見た。

「半分だな?」

「上弦の月って言うんだよ。」

「へえ…ってそれだけか?」

「ン。冷える前に帰れよ?」

「お、おお…。」


そんな会話をしてから、夜中にバイクで走ってる時にちょいちょい電話がかかってきた。

いつも決まって「今日の月は?」の問い。

三日月や半月と答えていく。

そんなやりとりが少し楽しくて、最近はスピードが出せる道じゃなくてすぐに路肩に寄せれる道を選んでる自分がいた。

しばらく走ってたが今日は電話は来なかった。

なんでだろ?と空を見上げて月が無いのに気づく。

「…新月、か」


次に電話が来たのは、スマイルマークみたいな三日月の日だった。

月暦を見てたら次の満月は土曜日らしい。

半月の日に「次の満月の日、一緒に月見しねえ?」と誘っていた。

しばらく無言で、あ、やべ、引かれた?と焦ってたら「ドコで?」って返ってきた。

「迎え行くから、どっかで飯食って、山の方とか?」

「…部活あるから部室で、待ってる」

「お、おう、じゃあ、おやすみ」

「ン、おやすみ」

…なんか、なんだろ、初デート誘った時みたいな、変な感じになってねえ?

やべぇ、なんか、やべぇ!

「月が綺麗ですね」とか言ってしまいそう。

ありえないけど冗談でも「死んでもいい」って返されたらちょっとドキドキしそうだ。 


土曜日。部室に行くとちょうど佐久間がカバンを抱えてるとこだった。服はいつもの黒ジャージ。

ファミレスで飯食ってゆっくりバイクを走らせる。

展望台のある駐車場に着いた。

車は数台。夜景を見てるカップルが数組。

こうやって見ると意外と綺麗なもんだなー。

夜景から視線を外して月を探す。

割と大きめな真ん丸お月様。

「おー、満月だ、綺麗だな」

…うん、コレはただの感想。

「ン。でも、ちょっと肌寒い…」

腕を摩る佐久間に慌てて上着を脱いで着せた。

「風邪ひく前に帰るぞ!月は家でも見れるだろ」

すぐにお開きはつまんなかったので家に誘った。


「こっちはー?寝室?客間?ならこっちは?」

「ったく!んな事より服貸してやるから風呂入って温もってこい」

「…そんな事言って服隠して嫌がらせするんだろ。」

「しねーよ!」

「ケケケッ!まあ、たしかに汗臭いし風呂借りるわ。」

「タオルは脱衣所に置いてあるの使っていいから。」


佐久間が風呂入ってる間にテーブルに飲み物とお菓子やら食べ物をだす。

「あがったー!」

「お?早かった、な…。」

振り向いて固まってしまった。

貸した俺の服は佐久間には少し大きめで、ズボン履いてないから太ももが半ばから見えてミニワンピみたいになってる。

「ズボン、は?」

「デカくて脱げんだよ!」

睨まれるが、ムゥと唇を突き出してて可愛いしかない。

「細すぎ、だろっ」

「家の中だし、もうコレでいい」

プンと言う擬音が似合いそうな顔でラグの上にペタンと座るのが可愛い。


「そう言えばさー?」

コーヒーを飲んでたのを止めて、テーブルにカップを置くと、くるりと向きを変えてソファに頬杖をついてこちらを見上げてくる。

「『月が綺麗ですね』てネタ知ってる?」

「『死んでもいいわ』か?」

「そー、それ。ネットで見たらいろんなパターンの返しが考えられてんだぜ」

「へぇ、たとえば?」

「お断りは『私には月が見えません』とか『星の方が綺麗ですよ』とか」

「あぁ、『愛してる』だからNOもあるか」

「そーそー。でもコレ、ちゃんとネタ分かってないと使えないじゃん?分かってても雰囲気とかあるし。」

「まあ、確かに。」

例えばさ、と横に座ってくる。

「『肌寒いですね』て言うのお誘いの意味になるらしいんだけどさ?」

…ん?なんか言われた気が?

「お前は普通に上着貸してくれたけど、この意味知ってたら気まずくね?」

「あ、ああ、一瞬戸惑うだろうな。」

「でもこれ、こんなふうにさ?」

ギュッと腕に抱きつかれ、コテリと頭を肩に乗せられる。

「これで『寒いな?』て言われたら、どうとる?」

「…好きなやつなら『お誘い』だな。」

「ン。意味知らなくてもそうとるよな?」

「てか、あのネタ自体知らないやつの方が多いだろ」

「ン、だから、やっぱりこう言うのは相手の教養度と雰囲気があるから成り立つてこと。」

「まあ、そうだな。」

だめだ。別に女みたいに胸が当たるわけでもないのにドキドキしてる自分がいる。

「やっぱりお前の方がゴツい」と言って腕絡めたまま掌合わせしてから指絡ませて握ってくるのやめて?変な汗かくから!

「なぁ」

チョンと服を引っ張られ振り向くとまた拗ねた顔で見つめられる。

え?な、何?


「好き」

…。…!?

「ちょ、ちょっと、待ってくれな?」と頭を抱える。

え?何これ、夢?

改めて佐久間をみる。

否定を予想してか俯く姿に胸がざわつく。

「俺も、好きだよ?」

そっと頬に触れて顔を上げさせて額にキス。

途端に目がウルリと潤んで涙がポロポロと溢れるのは心臓止まりそうなくらいビビった。

「えっ!?ちょっ、悪い!ヤだった!?」

フルフルと頭を横に振り、抱きつかれたので抱きしめる。


「気色いとか、言われると思ってた。」

「あー、まあ、そうだよな。」

「…嘘じゃないよな?」

「ああ。本気にしてくれなきゃ俺が泣くぞ?」

大きなため息を吐いて佐久間の体から力が抜ける。

ずり落ちそうだから抱き寄せたら、際どい位置に手が行って慌てて手を離す。

「別に、そういう対象に、してくれるのは、いいけど…。」

なんて可愛い事言って顔を真っ赤にしてるのめちゃくちゃ可愛いんですけど!?

佐久間の細い顎を掬って薄い唇に口付ける。

目瞑って真っ赤になってるのめちゃくちゃ可愛い。

「…まだ寒いならベッドで暖まろうか?」

ソッと耳元で囁けば

「…お、お手柔らかに、お願いしますっ」



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