第8話 ロマンなんか無ぇ
「……撃ちやがった!? 隊長……!」
『く…っ! フリッパー3、すぐに向かうぞ……!』
「了解…っ!」
どうなってやがる……!
いくら距離があったって、目視で確認できたはずだ。
なまじ出来なかったとしたって、向こうのレーダーには友軍機の反応が出ていたはず。気づかなかったわけがねぇ。
……友軍機を見捨てて、撃破を優先したか……?
……いいや、いくら素人同然とはいえ、数では向こうが圧倒的優位だった。普通なら、「数にまかせて正面から」だろ。
「何だってんだ! くそ…っ!」
『……恐怖で錯乱状態に陥ったのかもしれないな。新兵にはよくある……』
「……恐怖……って……。あれだけ数がいて……! それに、やつらすっかり調子に乗ってたじゃないですか!」
『俺たちは、今日だけで何機墜とした? 今度の増援は、それを知った上でここに来ている。【ウィクトーリア】のいる戦線とは違う。……数は関係ない。むしろ、数が多いからこそ、一度パニックが起きれば止められない』
「く…っ! 畜生……!」
そんなのありかよ……!
『とにかく、今は急ぐぞ。……ロンダの捜索、救助が最優先だ……』
隊長は、ああ言うが、ロンダは死んでる。
射撃音と爆発、識別信号の消えたタイミングを考えれば、脱出するような時間はなかった。
それは、隊長にもわかっているはずだ。
いや……そんなことはどうだっていいんだ。
連合のやつら。
全員、生かしちゃおかねぇ。
『【ネスト】から、フリッパー1……! 二次防衛ラインが突破されました! 救援を…っ!』
ロンダたちが向かった地点に急ぐオレたちに、支援車両で後方にいたモレル少尉の声が届いた。
『くっ……なんてタイミングの悪さだ。……フリッパー3、ここは放棄する。【ネスト】の救援に向かうぞ』
「隊長だけで行ってください。ここはオレが」
『今の状態のお前を、ひとりで行かせるわけないだろう。……【ネスト】はまだ間に合う。……いくぞ』
「……了解」
はらわたは煮えくり返ってるが、モレル少尉たちも心配だ……。
悪ぃ、ロンダ。すこし待っててくれ。
すぐにあいつらを殺しに戻ってくる。
~・~~・~・~~・~
二次防衛ラインは、酷い有様だった。
ほとんどは敵機の残骸だが、味方の被害も尋常じゃない。
隊長の後に続いて進む中、折り重なるようにして倒れる機体の残骸が目に入った。
「……チッ。やつら、獣と変わんねぇな……」
一機に対して複数で群がったんだろう。
下敷きになった【ロックホッパー】の上に、機体を銛で貫かれた〔シーガル〕が覆い被さっている。
ズタズタになった他の〔シーガル〕が一機、重なった二機に手をかける様に倒れ、すぐ近くには頭部と右脚部の無いもう一機が、爆発後の火をまだすこし残しながら倒れていた。
『【ネスト】との通信が途絶えた……。電波妨害の影響だと思いたいが……』
隊長の声が重い。
少尉たちまで……。
何で、こうなった。
何日か前までは、こんな戦場とは無縁だった。
相手が、ちょっとばかし数が多くたって、オレたちの腕なら簡単に切り抜けられた。
連合のやつらはド素人ばっかりだ。
それは、ここでだって変わらねぇ。
なのに。
『あれは……』
隊長の声に前方に目をこらすと、〔シーガル〕の部隊が見えた。
数は、五機。
うち、一機が仲間に見せるかのように何かを掲げていた。
『……下劣な! ……ネっ…フリッパー3! むやみに飛び出すな! 戻れ!』
ブーストをかけて突進したオレに、唯一こちら側を向いていた一機が、掲げた腕をそのままに動きを見せた。
鈍くせぇ。
銃を構えることすらできねぇのかよ。
大慌てで仲間に通信したんだろう。
ノロくさ振り返った他の四機を素通りして、右腕を掲げたままのそいつを蹴り倒した。
そのまま右肩を、銛で地面に縫い付ける。
「そんなに、うれしいか? あぁ?」
両脚部から抜いたサブマシンガンを左肩に打ち込む。
この距離なら無駄な爆発もなく、切断もキレイなもんだ。
「支援車両一機いたぶって、手柄立てたつもりか? それが、テメェらの『戦い』かよ? ……あぁッ!? 答えろッ!!」
右脚、左脚も根元から断ち切ってやった。
右腕だけになった「そいつ」のコックピットブロックに、足を乗せる。
右腕の先には、潰れた支援車両が握られている。
ひしゃげたフリッパー小隊の隊章のすぐ脇に、誰かの腕がはみ出していた。
どんな気分だ。
機体が歪む音を聞きながら、死ぬのを想像するのは。
今ほど、敵と通信したいと思ったことはない。
「なぁ……聞かせろよ」
コックピットブロックに乗せた足で、ゆっくりと圧力をかけた。
「いや……お前には、こんな芸当できなかったか……」
『背中がガラ空きだ。フリッパー3』
「鉄の塊」にめり込んだ足を引き抜いて振り返ると、 隊長が最後の一機を墜としているところだった。
「……隊長なら、やってくれると思ってたんで」
『妙な信頼を寄せられたもんだ。……気は晴れたか?』
「いえ……」
むしろ、最悪な気分だ。
『だろうな。……だが、感傷に耽ってる暇はないぞ? 敵は、かなり深く入り込んでいるようだ。……やれるな?』
「……やります」
やるさ。
まだ、殺らなきゃいけねぇやつらが残ってるんだ。
『ん……? あれは……』
隊長の機体が見上げる遙か先に、【ウィクトーリア】が浮かんでいた。
そこに小さな機影が飛んでいく。
『【ウィクトーリア】の艦載機が補給に戻ったか。これで盛り返せるといいが』
帰投の手際まで見事なもんだ。
地べたで惨めに戦うこっちとは、えらい違いだな。
やつらとやれたら、この最悪な気分も、すこしは晴れるかもしれねぇ。
ぴゃーっ!(´・x・`;)
ウィクトーリアが飛んでること、前話で書きそびれました!(´・∞・`;)なんてこったい
7話、最初にバーニー視点で書いたんですけど、そっちでは書いていたのでうっかり…(´;∞;` )くぅ…
加筆させて頂きましたー \(´;∞;` )うわはーん




