第7話 ウィクトーリア
「よっ……と! ……はんっ、次から次へと。これで何機目だよ」
オレの銛にコックピットを貫かれた〔シーガル〕が、ゆっくりと崩れ落ちた。
連合の人型機動兵器〔シーガル〕。
オレたちの【ロックホッパー】同様、〔シーガル〕にも陸戦仕様の機体があるが、オレが墜としたこいつは空戦仕様だ。
「飛んでこられたら、もうすこし歯ごたえがあっただろうけどな」
『人型機動兵器での空中戦闘は簡単じゃない。彼らには無理だったんでしょ』
オレの独り言に、「フリッパー2」、ロンダが通信で応えた。
「わかってるよ、んなこたぁ。オレはただ、もうすこしマシな相手とやりたいだけだ」
『そんなのが来られても迷惑なだけ。補給だってままならないのに』
「ま……それもそうなんだけどな」
鉱山地帯に到着して二日目。
昨日からの連日の大攻勢で後方も混乱している。
特に今日は、酷ぇ。
オレだって、やるなら完全な状態でやり合いたいしな。
「隊長。そこんとこ、どうなんです?」
『何度も要請はしてるんだがなぁ。今、モレルたちが何とかかき集めてくれてるところだ』
「あっちは大丈夫なんですか?」
『かなり押し込まれているようだ。混乱が起きているのも無理はない』
「【ウィクトーリア】……。『さすがは』ってやつですか」
望遠カメラでモニターに映った連合の艦が、主砲から火を噴いていた。
〔ムーンバード〕級、重航空巡洋艦【ウィクトーリア】。
長く続くこの戦争で幾度となく戦果を上げ続けてきた、連合の最精鋭艦。
当然、オレたちの間でも知らない者はいない。
艦載機の動きも見事なもんだった。
そうこなくっちゃな。
「一度でいいから、やり合ってみてぇなぁ」
『はははっ。勘弁してくれ。あんなのが来たら困るよ』
「隊長だって、やってみたいでしょう? あいつらと」
『ふふっ。まぁ、〔バトリーク〕乗りとしての血は騒ぐな』
「でしょ?」
連合の艦は、どれも空を飛ぶ。
どういう技術なのかは知らない。こっちに無い技術を何で連合のやつらが持ってるのかも、何でこっちにあれが作れないのかも。
鹵獲のための作戦をやった、って話も聞いたことがない。
確かに簡単じゃないが、やらないことのほうがおかしい。
~・~~・~・~~・~
オレたちは、余所の小隊と合同で別ラインの防衛についていた。
こっちの相手は、数こそあるが素人同然のやつらばかり。
いい加減、うんざりだ。
何より気に食わないのが、【ウィクトーリア】が来てからというもの、「その他大勢」共が嵩にかかって攻めてきやがってることだ。
向こうの戦線が押されてるのも、【ウィクトーリア】とその部隊が食い破ったところに、「その他大勢」共が群がってねじ込んでるせいらしい。
『二人とも、馬鹿言わないで。彼らだけを相手する訳じゃない。戦闘の規模を考えて』
『う……すまない』
「それもわかってるってんだよ。そういう話じゃねぇんだ。……ったく、お前はホントに〔バトリーク〕乗りのロマンってやつが足りねぇよな」
『かけらもないわ。そんなもの』
「……チッ。あー、そうかよ。もし【ウィクトーリア】の連中が来たって、お前にはまわしてやらねぇ」
『いらないわ。やれるなら勝手にやって。やれるなら』
「あぁっ!? 今、何でもう一回言いやがった!? ……って、おい! どこ行きやがる!」
『敵よ。散漫だから気づかないんでしょ』
レーダーに視線を落とすと、確かに表示板の端に敵機の反応が出ていた。
「待ちやがれ! オレも…」
『単機でいいわ。敵は小隊規模。そっちは持ち場を優先して』
『そういうわけにはいかんよ。フリッパー3、2に続くぞ』
「了か…」
『その役目! 我らトボガン小隊が承ろう!』
オレと隊長がロンダの後を追おうとした横を、三機の【アデリー】が飛行体勢で通り過ぎていった。
〔バトリーク〕、【アデリー】。
オレたちの軍で最も数が配備されている主力量産機。
水中戦はもちろん、空中戦闘においても、高い性能を発揮する。
オレたちゲリラ部隊と違って、どこぞの正規部隊から今回の防衛任務に駆り出されたんだろう。
「……どうします?」
『あちらさんのほうが、足が速い。任せよう。持ち場を空にするわけにもいかんしな。――トボガン1、よろしく頼む』
『了解した! トボガン1より各機、これより我らがクイーンを援護する!』
『今、参ります! 女王陛下!』
『踏んづけられたい!』
あいつら、揃いもそろって、ロンダに惚れてるみたいだったからな。
……クイーンはともかく、「踏んづけられたい」って何だよ。
怖ぇ。
『不要です。貴隊は、持ち場の守備を』
『我らトボガン小隊は、貴女の剣!』
『貴女の盾!』
『貴女の足台!』
怖ぇ……。
ロンダのやつに同情するぜ。
『フリッパー2から1。前方に敵の増援を感知。数、およそ三十』
『何…っ? フリッパー2、いったん下がれ』
レーダーを確認したが、こっちには表示されていない。
電波妨害のせいで索敵範囲が狭くなってるのもあるが、ここから探知できないってことは、相当距離があるんだろう。
それに、「前方」ってことはロンダたちとの間に、目標の敵小隊がいる。
増援のやつらは、接近しなければロンダたちを攻撃できない。
やつらはウスノロ揃いだ。
隊長の心配もわかるが、ロンダなら、目標を墜としてからでも十分離脱できるはずだ。
『まだ距離があります。当初目標を撃破した後、離だ――――』
激しい銃撃、砲撃音と共に、複数の爆発音が響いた。
……何……?
『フリッパー2! どうした!? ……応答しろ!』
隊長の呼びかけに、ロンダの応えはない。
レーダーからは、ロンダたちと敵小隊、全機分の識別信号が消えていた。
あのままバーニー視点でネイトに語らせようかと思ったんですけど、書き比べてみた結果、ネイト視点のお話にすることにしましたー \(´・∞・` )
トボガン小隊、ちゃんと書いてあげたくてw (´・∞・` )出番短いですけど
うーん…構想当初は10話以内で終わる予想だったんですけど、意外と長引いております(´・∞・`;)
気長にお付き合い頂ければ…!(´;∞;` )うはわーん




