第4話 夕焼け
ロンダさんの、隊長への「お説教」はその後も続いた。
俺のこと以外にも、いろいろ言いたいことがあったみたい。
隊長はすっかりうなだれて、時々、顔を上げては「いや、それは…」とか言ってみるけど、言ったそばからロンダさんに言い負かされてる。
まだかな。
お説教が終わったら、隊長をなぐさめてあげようと思ってたのに、なかなか終わりそうにない。
……うーん。隊長、ごめん。
俺はその場を離れて、キャンプ内を歩き始めた。
だって長いんだもん……お説教。ちょっと疲れちゃった。
俺たちのキャンプは山間部の森の中にある。
「フリッパー小隊の任務」は、「連合領内での奇襲による攪乱」とかいうやつで、連合のやつらに見つからないように隠れながら移動してるんだ。
「あ、リーナさんっ」
キャンプ内を歩いていたら、崖になってるところに通信係のリーナさんが見えた。
「リーナさん、何してるの?」
「あ、バーニー。今、休憩中だから、ちょっと景色を見に、ね」
「ふぅん。……うわ……高い」
「のぞき込んだら、危ないよ?」
崖の下の景色は、まるでジオラマみたい。
俺たち、こんな高いところにいたんだ……。
「見て……バーニー。夕焼けが綺麗……」
遠くを見つめて目を細めるリーナさんを、夕焼けが照らした。
リーナさんも綺麗だよ。……とか、思っちゃったり。
……だけど。
「……俺……夕焼けって、嫌い……」
「え? どうして?」
「俺のいた村が焼かれた時も、こんな夕焼けの日だったんだ……」
「そう……」
「ある日いきなり連合のやつらが来てさ。『スパイ容疑』がどうとか言って、散々暴れて、ひどい事もいっぱいして……。許せないよ……連合のやつら……」
村のみんなが、たくさん殺された。
パパも、ママも。
俺を逃がしてくれたローマンおじさんも、逃げる途中で死んだ。
同じ地球人なのに。
「ごめんね、バーニー……。嫌なことを思い出させて……」
「いいんだ。だって、こうしてみんなと会えたんだもん。俺もみんなと一緒に戦って、連合のやつらをやっつけるんだ」
「バーニー……」
逃げて。逃げて。
死にかけてた俺を見つけて助けてくれたのが、フリッパー小隊だった。
「……ねぇ、バーニー…」
「あっ! そういえばさ、ずっと気になってたことがあるんだけど!」
「えっ? 何?」
「よくネイトが言ってる『羽根無し』って、あれ、何なの?」
俺があんな話をしたせいで、リーナさんが悲しそうな顔になっちゃった。
リーナさんの、そんな顔……俺は見たくない。……なんて。
話を変えようとしたけど話題が浮かばなくて、とっさにネイトの話なんかしちゃった。
「ああ。あれ……。あれはね、良くない言葉よ。私たちの間でも、あまり使う人はいないの」
「ネイトだったら、そういう言葉、いかにも言いそうだねっ」
「ふふっ、聞かれたら怒られちゃうよ?」
「へーきだよっ。うーん、でもさ……どういう意味なんだろ? 俺たちには確かに羽根なんて生えてないけど、リーナさんたちにも生えてないのに」
「うーん。私も、よく知らないの。あれって、すごく古い言葉らしくて」
「ふぅん。でも、リーナさんに羽根が生えてたら天使みたいで綺麗だろうなぁ」
「ふふふっ。じゃあ、もし羽根が生えたら、バーニーに見せてあげるね?」
「う、うん……」
えっ……。そんな……どうしよう。
「ばーか。なに赤くなってんだ。素っ裸になって見せるわけじゃねぇだろ。ガキが色気づきやがって」
「ネイトっ!? な……なななんだよそれ……!」
「あ、軍曹。お疲れ様です」
「おう。モンテーニャ、モレル少尉が呼んでるぞ」
「主任が? わかりました。ありがとうございます。……私、行かなきゃ。またね、バーニー」
「う、うんっ」
よ……よかった。ネイトが変なこと言うから、どうなるかと……。
駆け足で戻っていったリーナさんを見送った後で、俺に向き直ったネイトが口角を上げた。
「ガキが、いっちょ前に」
「う……うるさいなっ! 別に俺は……!」
「へっ」
「なんだよ、それ! あっ! 待てよっ! なんだよぉ!」
やっぱり、この人、嫌いだ。
はい、「リーナ・モンテーニャ」です ”(´・∞・` )
もともとは全員名前だけにしようと思ってたんですけど、あの場面にきて「ネイトが、リーナ呼びは違うな…(`・∞・´;)む…」ということで急遽、名字つけました(´・∞・` )




