第10話 「悪い」のは
それから俺たちは、隊長の命令通りパミール基地を目指して進んだ。
ジャンさんたちがバイクで「斥候」っていうのをして、大丈夫だったらピートさんの運転する小型の支援車両で進む。
ネイトの【ロックホッパー】は、その後。
「逆じゃないの?」って聞いたら、「極力、戦闘は避けて進みたい」から慎重に行くんだって。
今も、ジャンさんたちがパミール基地近くの様子を見に「斥候」に出ていて、俺たちは林の中で待機中。
「まだかなぁ……」
待機中は、意外と暇。
じっと隠れていなきゃいけないし。
ネイトは常に見張りに出てる。
それはいいんだけど――
ピートさんとリーナさんも交代で見張りに出ちゃうから、せっかく見張りから帰ってきても、なんだか話かけづらい。疲れてるだろうし。
今は、リーナさんが見張り中。
「あれ? ピートさん、何見てるの?」
言ったそばから、話しかけちゃった。
だって暇なんだもん。
「……ん? ああ、これさ」
ピートさんが、手に持っていた小さい紙を俺に見せながら微笑った。
「写真?」
整備班のみんなで撮った写真。
どこかの基地っぽいから、俺がみんなと出会う前なのかな。
ピートさんを真ん中にして、三人で笑顔で映ってる。
「ふ…っ、まったくあいつら……俺の全部を叩き込んでやったってのに、先に逝っちまいやがって。師匠不孝もここになんとやら、ってやつだ」
「鉱山地帯」の守備任務には、ピートさんの「お弟子さん」たち二人が出ていた。
ピートさんは「自分が行く」って言ってたけど、お弟子さんたちに止められて残ることになったから。
写真を眺めなら微笑ってるピートさんだけど、声はすごく寂しそうだった。
わかるよ、ピートさん。
俺も村のみんなが殺された後、すごく悲しかったもん。
「許せないよね……連合のやつら」
ピートさんのお弟子さんたちには、俺もよくしてもらってた。
手伝ったご褒美にチョコバーをくれたり、作業の合間に遊んでもらったり。
二人とも優しくていい人たちだったのに。
「……バーニー。敵を恨むなよ?」
…………?
「悪いのは戦争だ。争いを止められず、この戦争を起こしたやつら、それを終わらせられる力を持ちながら、終わらせようとしないやつらだ」
「よく……わかんないよ。だって……みんなは連合のやつらに殺されたんでしょ? あんな酷いやり方で……。なのに、悪くないの?」
「俺だって人間だからな。腹に据えかねるものはある。……けどな、やり方こそ違うが、俺たちだって連合の兵を大勢殺してきた。隊長たちも、だ」
「それは……そうだけど……」
でも――
連合のやつらは、悪い人間だ。
悪いやつらをやっつける、フリッパー小隊のみんなは悪くない。
「そもそも、こんな戦争すら無ければ、俺たちが連合の兵を殺すことも、隊長たちが殺されることもなかったんだ。……だから敵を恨むな、バーニー」
ピートさんの言いたいことは、なんとなくわかったけど。
けど。
「隊長は死んでないよっ。ロンダさんだって、脱出して生きてるよっ。ピートさんだって聞いてたでしょ? ネイトは、ちゃんと確認してないもん。早とちりだよ」
「……バーニー」
支援車両のみんなは残念だけど……でも、隊長とロンダさんは、きっと生きてる。
「ネイトは、まだ若いところがあるが優秀なパイロットだ。あいつの判断に間違いはない。俺も、話を聞く限り同じ意見だ」
「なっ……何でっ! そんなの、うそだよ! じゃあ……隊長は!? はぐれただけで、撃墜されたわけじゃないでしょ!」
「……隊長はずっと、こういう機会を待っていた。責任感の強いやつだったからな……今までは、それだけでやってきたようなもんだ。条件が揃っちまったんだよ」
わかんない。
わかんないよ。
「死んだ人間は心の中で生き続ける。だが、もう『生き』ちゃあいない。……隊長たちは死んだ。お前だって、本当は理解できているはずだ」
「うそだよ……そんなの……」
「遺された人間にできることは、それを受け入れて、そいつらを心の中に連れて生きていくことだけだ。隊長たちは、最期まで懸命に戦って生きた。だから……ちゃんと死なせてやれ、バーニー」
ひどいよ。
そんなのって、ない。
……本当は、わかってたんだ。俺だって。
でも。
でも……。
「つらいな……」
ピートさんが、俺の肩を抱いた。
ネイトにしたみたいに、強い力で。
「……ねぇ、ピートさん」
「何だ?」
「俺にも、銃を頂戴」
「何……?」
隊長たちは死んだ。それは、わかった。
連合のやつらが殺した。
俺を助けてくれた隊長たちを、またあいつらが殺したんだ。
「隊長たちの仇を討つんだ。俺も戦いたい!」
「駄目だ」
「何でっ! 隊長たちは死んだんでしょ? 殺されたんでしょ? だったら、俺だって…」
「敵を恨むなと言ったはずだ。そんな心構えのやつに持たせる銃はない」
「ピートさん!」
「おい、声が大きいぞ」
「……なんの話だ?」
ピートさんに食ってかかろうとしたところで、「斥候」に出ていたジャンさんとリゾーリさんが帰ってきた。
ピートの「お弟子さん」たち、名前はありますが混乱をさけるため「お弟子さん」にしておきました(´;∞;` )ごめんよ、2人とも
ジャンとリゾーリの戦闘支援班コンビも、本来は名前を出さない予定だったんですけど(´・∞・` )ままならぬものです




