表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

油肩ブラ

作者: リン
掲載日:2025/11/02

 油のブラを買ってしまった。

 ベトベトする。

 嫌な感じだ。

 どうしてこんなものを購入したかといえば、語らなくてはいけない。

 福引券が欲しかった、と。

 当たりがほしかったフィギュアだったのだ。

 でもよく考えたら、もうちょっとお金を出せば買えたんだ。

 ただそれで油のブラをしてるわけ。

 肩紐が油でずれる。

 直さなくてはいけないけれど、恥ずかしいことこのうえない。

 このしたがあれば、どれだけいいだろうと、思いながら、わたしはブラの肩紐を直す。

 こういうことはあるのだ。

 それが人間工学というものだ。

 行動経済学とも言う。

 わたしは何でも知っている。

 それでこんなことになるとは、思っても見なかったけれど、ベトベトしている身体を隠して、上着だけはファッショナブルにカッコつけているってわけだ。

 颯爽と歩きながら、通学する道すがら、小声で囁かれた。

「アブラカタブラ」

「油肩ブラ?なんで知ってるの?」

 振り向いて聞いてしまった。

「アブラカタブラ。あなたの願いはわかっています」

「そりゃわかるでしょ。油肩ブラなんだから」

「願いを叶えるためには、この塩昆布を買うといいでしょう」

 誰かも知らない人に差し出されたのは正真正銘の塩昆布だった。

「これを買えばなんとかなりそう?」

 なんとかなるどころか、あなたの願いが叶うでしょう。しかしこれは特別な霊力の宿る塩昆布なので、少々お値段がはりますが」

「おいくらまんえん?」

「そんなにたかくはありません。9990円しかしません」

「一万円するじゃんか」

「一円お得です。それがあなたを救うことでしょう」

「それで油肩ブラがなんとかなるの?」

「それでなんとかなるんです。アブラカタブラ」

「背に腹は代えられないか。じゃあ買う」

「思い切りの良い方ですね。私は好きです。そういう人」

「わたしもそういう自分が好きだけど、それよりこの塩昆布食べればいいの?」

「食べてはいけません。霊力が損なわれてしまうので」

「じゃあ、どうするの」

「その塩昆布を特別な神棚に捧げて、お祈りするのです」

「そうすればなんとかなりそう?」

「なんとかなるなんてレベルではありません。速攻です」

「だったら、その神棚も買えば良いわけ?」

「こちらが紹介する神棚は結構お値段がはりますが、今回は特売日なので99990円しかしません」

「十万円じゃん」

「十円お得です。それがあなたを助けることでしょう」

「なら、買うしかないか」

「ご契約ありがとうございます。それで神棚なんですが、特殊な御札を奉じなければいけません」

「御札か、安ければ買うか」

「99円です」

「やっす。買うのやめた」

「どうしてですか?願いが叶うんですよ。アブラカタブラ」

「だって、あなたもわたしと同じブラしてるから。買っちゃったんでしょ」

「ご存知だったのですか。フィギュアが欲しかったんですけど、福引券にしてしまったので、こうして霊感商法っぽいことをすることになりました」

「もろだけどね」

「もろ服に滲み出てますね」

「お気にだったのに台無しだ」

「アブラカタブラ。そういうときはこの御札を購入すればなんとかなります」

「なら買うわ」

 こうしてわたしは騙されたのだった。99円の損害だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ