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新人メイド、ルナ誕生

 「遺伝ってすごい! もう150cm以上は伸びたわね」


あれから1年が過ぎて、7才になった(リオルナリー)

親族みんなが高身長なせいか、(リオルナリー)もそれなりの成長を果たしたようだ。


ここ1年、殆どが部屋暮らし。

食事は天井から。

以前は朝だけだったが、今は夕食後も狙っている。

何故か余ったおかずを小皿に入れて残してあるのだ。

小腹の空く、誰かのリクエストなのだろうか?

深く考えずに、ちょこちょこ頂いている。


入浴は出来ないから、部屋の手洗い場のシンクにお湯と水を溜めて体を拭いた。石鹸は浴室から、小さくなったのを釣り針で釣り上げて頂いた。

髪を洗うのにだけは、シンクが狭くて苦労した。使用後は床が毎回べちょべちょで、拭くのが大変なのだ。


背が伸びて、衣類も小さくなった。

どうやらリオを(リオルナリー)だと思っているらしく、そちらの方に最低限の支給はされているようだ。

本当に最低限みたいだけどね。

家庭教師に学ぶ時用の外向きの服や靴は、本邸の私の部屋に用意してあるらしい。

そして、小さくて着られなくなった物は、物置に纏められているらしい。

なんと家庭教師が帰った後に、リオ本人に持って行かせたと、母子が話しているのを(天井から)聞いたのだ。


ニクスにすれば、憎い女の娘を苛めているつもりなのだろうけど、リオも(リオルナリー)もノーダメージである。それで溜飲が下がって暴力に繋がらないなら、まあ良いことだよね。


でもさあ本当にリオルナリーだとしたら、使用人と2人部屋という時点で、可笑しいと思わないのかな? それとも、侍女的な感じだと思ったのだろうか?



そして私は、ボロボロになったお仕着せが捨ててある場所へ夜間に忍び足を向ける。置かれているボロは、小さく切って掃除に使われるらしい。

それの使える部分を繋ぎ合わせて服を継ぎ足す為に、数枚拝借した。

本邸に行ければ、昔の私の服やお母様の服を活用できるのだけどね。お母様の服はニクスのサイズに合わないからと、全部本邸の物置行きらしい。

何でも実家や王妃様に貰った服が高額だったらしく、捨てることも売ることも出来ないらしいのだ。それがどの服かも解らないんですって。はぁ。

その分、アクセサリーを使おうと張り切っていたみたい(天井から聞いたメイド情報である)。

だけど既に良さそうな物は、私が頂き荷物庫に入れたからね。残るものは大して良いものはないのよね。


あれこれ探さないで、あっさり諦めてくれたらありがたいが。


と言う感じで、人形の服をお母様と縫っていた記憶を辿り、今の服に継ぎ足して着ていたの。でももう、限界なの。服は背中のボタンやファスナーの閉まらなくなった部分に、布を貼り足せばゆとりが出来るわ。

でもね、おパンツが困るの。

やはり木綿が基本よね。絹なんて贅沢は言わないわ。

でもお仕着せは、ごわごわして硬いのよ。

キツくて履けないパンツを切って、お股部分にだけ当ててもやっぱり駄目なの。背中やお腹部分が気になるのよ。通気性も悪くて、肌も荒れるし。


と言うことで、ちょっとメイドデビューしようと思うのよ。

たかがおパンツと思う?

もうね、本当に辛いんだから。



そんなこんなで、お母様のウィッグ(かつら)を使い、茶髪オカッパと伊達眼鏡で変装し、リネン庫からSサイズのお仕着せを拝借すれば、新人メイドの完成よ。

メイド用の部屋は、厨房に近い部屋を使わせて貰うことにしたの。

どうやらニクスの我が儘のせいで、使用人の入れ替わりが多くて、新しいメイド長も入れ替わりの把握が出来ていないみたいなの。チャンスでしょ?


後は私が、ちゃんと働けるかが問題ね。

日々お母様から課せられた、スクワットや腹筋背筋運動は継続してきたけれど、どこまで通用するかしら?

時間がありすぎて1日1回100セットを朝昼晩でしてたから、少しは足しになっていると良いけど。



何て感じで、しれっとメイド用の部屋の鍵を釣り針で手に入れ、前から入居してましたよという顔で朝の食堂に顔を出した。


「みなさん、おはようございます」

もうね、こういう時はビビったら負けだって、お母様が言ってたから、大きな声で入っていったわ。

朝食を食べている様子も何日か観察していたから、全員の名前も知っているしね。


向こうがポカンとしてたって、「キャス、おはようございます」とか、「ケイシー、リンダ、バネット、おはようございます」と、次々声をかけていけば、相手も挨拶を返してくれたわ。


「おはよう」

「おはよう」

「……おはよう」


ね、何とかなるでしょ。

でもケイシーだけ、なんか苦しそうな顔をしてたのよね。

変なところがあったかしら。ウィッグ(かつら)がずれていた?


「私、最近入りましたルナと申します。いろいろと、よろしくお願いします」

可愛く笑って礼をしたら、みんな微笑んでくれたから掴みはOkよね。お金はお財布にも少しあるから、早く外出したいな。


ケイシーだけ、変に私を見つめてくるの。

もしかして、一目惚れ的な奴かな?

困ったわ、私7才だもの。

でも恋は止められないものよね。

ああ、テンションが上がって、変な妄想ばっかり考えちゃうわ。



こうして1年ぶりで、他人と会話したリオルナリーだった。



◇◇◇

「あいつ、髪は茶髪だけど、リオルナリーだよな? 何でこのタイミングで出てきた? 祖父母の家に助けを求めるでもなく、メイド姿かよ! お前は本当に7才なのか?」


いろいろ思うところはあるが、指をさして叫ばなかった俺、ナイスとか思っていたケイシー。

朝の厨房は忙しく、考えるのを放棄したのだった。


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