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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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再会した2人

 「リオ、ナジェール、おかえりなさい。みんなもお疲れさま。ちゃんと無事に帰って来たわね」

 「やっと一安心だ。やっぱり無事に帰るのが、一番のお土産だな」


 「うん! 心配かけてごめんね。その代わり、報告したいことがたくさんあるのよ」

 「ただいま帰りました。無事にリオと戻ったよ」


 「今帰ったよ。馬車のせいで、お尻痛いわ」

 「 メシャーベルの視察は、無事終了しました。美味しい旅 でした」

 「移動中、誰も傷病されていません。みんな元気です」


やや疲れ顔のリオ達だが、久しぶりの再会に笑顔満面となり、テンションが上がってしまう。勿論ルナ達もだ。


リオ達はメシャーベルを出立し、みんなで元気に帰還した。リオとロザンナ以外も日焼け止めはしていたが、塗る頻度のせいかナジェール、ガルードとコーマは小麦色に焼けていた。長い時間馭者席に乗って貰うからとリオは気にしていたが、男性陣は面倒だったよう。日差しで赤くならず、丈夫な肌で良かったと取りあえず安堵。

塗るのを頑張った女性陣の美白も守られた。



◇◇◇

「北は寒かったわ。でもね、空気が澄んで景色も幻想的だったよ。スキーが好きな観光客もけっこう居たし。妖精の祝福を解除する薬のレシピを伝えるのと、祝福から出来たポーションを渡す為にお城に行って、王女様の重度の喘息を治して宴会してきたの。向こうのお肉は大型の猛獣なんだけど、旨味が詰まっていて美味しかったわ。じゅるりっ。あ、いけないヨダレが」


「ああもう、ルナはあの肉の虜だな。またすぐに行きたいって言いそうだな。でも当分は学園に通えよ」


暢気に笑いながら、ハンカチをルナに渡すケイシー。

周囲の目があっても気にしない、マイペースさだった。



ルナはアイスグラウンドで、ライナス国王とコットリー王妃、王女ユズキューレと友好を結び、今後も手紙のやり取りをするんだと笑っていた。


何でもないように話すが、アイスグラウンドはわりと閉鎖的な国で、デバルム帝国もタルーシアラ国も気軽にやり取りなど出来ない、広大な雪に囲まれた国だ。

ここは遠い昔、謀反の罪で追われた勇者や魔法使いが、逃げ延びて出来た国。戦後に平和になった際、強大な力は当時の国王には脅威でしかなかったから。


現在の婚姻は昔より自由ではあるが、王族の婚姻はここ数百年は他国とは行われていない。単純に王子や王女の数が少ないからだ。


交流が薄くなった昨今にルナが国王に会えたのは、紫の瞳の者が早世する話に信憑性が高かった故だ。アイスグラウンドではない国で、書簡に記されたルナ以外にも被害者がいて、尚且つ祝福の解除が出来ると聞いたからだ。


そうでなければ、

どの国の国王が面会を望んでも、今回のように早期に会えることなどなかっただろう。


昔の王妃が王の為に作った祝福を受けたポーションは、重症を負った人々の為に用いられて既になく、王女の病気を癒す為にも期待した気持ちもあった。


アイスグラウンドは閉鎖的な国ではあるが、一定の観光客は存在し、そこでしか捕獲できない毛皮は一流のデザイナーに高値で取り引きされている。


一部商人に卸されている魔物の角や爪は、魔除けにも効果が絶大である。


そして軍隊。

極寒の中で鍛えられし民は、自身を損傷から保護する魔法が生まれし時からかけられている。最初に移り住んだ勇者や冒険者達が、獲物の一部をその地に存在する女神に捧げたことで、後の子孫に力が与えられていた。

寒さはあっても凍傷にならず、魔獣と同じ程度の守備力が備わっている。そうでなければ、長く人は暮らせなかったはずだ。

強大な魔法使いや屈強な戦士も多く、彼らは誇りを持って生きている。



まあそんな、ある意味選らばれた人の懐に、あっさり入ったルナだ。だが、本人に自覚は皆無。


「なんかユズキューレ王女が、そのうち遊びに来るんだって。すごく明るい子だったから、きっとリオもすぐに仲良くなるよ」


「ああ、そうだな。王様も気の良い人だったな」

「ねえ、みんな穏やかな人だったね」


リオは笑顔でそうなんだと聞くも、ルアニートとその夫オスカー・フランベル子爵は驚愕した。デバルムの皇帝さえなかなか交流が図れないアイスグラウンドの国王に、妖精の祝福の件があったとて、ここまで友好的になっているなんて。


シュートンとアゲンストは、既にランドバーグに報告済みである。


「まあ、ルナはサービス精神旺盛だから。きっと酒でも飲んで打ち解けたんだろう。あいつには打算なんてないからな。そういうところが、気に入られたのだろうね」


そう言って、ただ笑って様子を見ることにした。

下手に国王達に報告して、ルナを利用されては困るからだ。ルナには自由に過ごして欲しい。そして奥の手は自分の手に残して置くために。


(まあ、使うこともないだろうけどな。そういう繋がりは大事にしないと)


シュートンとアゲンストも同意する。

ルナにもケイシーにも、面倒ごとが及ばないように願って。




◇◇◇

リオは旅の途中での出来事やメシャーベルアイランドについてルナに話した。


ルナとは別に暑かったことでの不便さや、野宿で虫や蛇などが異様に多かったことを先に話して笑った。


四季があるデバルムやタルーシアラでは、そんな風ではないから。精々、夏場がそうかなくらいだ。


ふむふむと聞きながら、南国で流行りのビーズ刺繍やビーズ細工をルナに見せる。


「わあ、すごいね。光に当たるとキラキラしてるよ」

「すごいよね。私もビーズだけで刺繍している服やアクセサリーを見たの始めてだったから、興奮した。こっちだと、ここまで使わないよね。ドレスにだって、白や青のビーズを単色で使うくらいだものね」


「うん、すごい! でもこれなら、刺繍が苦手な私でも、誤魔化しがきくかも。なんてね」

「はははっ。ルナは意外と大雑把だもんね。でもそうかも。南国ではちゃっちゃっと作って、すぐ使う感じなの。麻紐にビーズを通すブレスレットを、子供でも作れちゃうのよ。大きいビーズから細かなビーズまで、種類も多いから」


「ふむ。良い国だわ」

「ふふふっ」


「私もアイスグラウンドで、刺繍された布地をたくさん購入してきたわ。もうね、絵画みたいに素敵なの」

「ほら、見て。リオもアイスグラウンドに行った気分になるでしょ? 冬の風景の他にも、夏の風景とかリスや小動物、花の刺繍の細工も細かなものよ。動物の皮を鞣したこのポーチにも花が細工されていて、普段使いしてるくらい気にいってるよ」


「この雪の風景の刺繍、素敵ね。真っ白な世界は憧れるわ。他の刺繍も手が込んでいるわ。欲しがる人は多いでしょうね」

「素敵だったよ。もう静寂の世界なの。動物達も目立たないように、ひっそりと行動しているのよ。寒いけど、魔法で保温すれば何とかなるし。いつか一緒に行こうよ。

あと、刺繍はリオにあげたくて買ったのよ。売る気はないわ。リオが飽きていらなくなったら、売っても良いよ」


リオは瞬いて、泣きそうな顔でルナを抱きしめた。

「ルナ、大好き。ありがとうね。あと、絶対売らないよ。売るわけない! いつか、アイスグラウンドに行こうね。きっとよ」


「ああ、ずるい。ラーニャも行きたいよ」

「じゃあ、一緒に行こう。女3人旅、うん楽しそう!」

「まあ、ラーニャったら。寒いの苦手なのに」

「保温魔法があれば、大丈夫よ。お母様も行こう」

「あら、どうしようかしらね。お父様が寂しいって泣くかもよ」

「ええっ、男の子なのに?」

「ラーニャのことが大好きだからね、お父様は」

「もう、しょうがないな。じゃあ、お父様も一緒だ」

「ふふふっ」


楽しげな様子に、使用人達も微笑ましくなった。

既に護衛達はタルーシアラ国へ戻り、ロザンナはリオの傍に付き、楽しげに頷いている。ラーニャとルアニート達はリオやルナ達と応接室にいるが、オスカーは業務で外に出て行った。


ケイシーとナジェールは庭で、剣術の訓練をしている。

ナジェールの体が鈍っているのではないかと、ケイシーが誘ったのだ。


「女の話は長いからね。少し体をほぐす方が、座っているより気晴らしになるだろ」


笑顔で微笑みながら木剣を渡し、剣の打ち合い稽古をする。


「感謝します、ケイシー。ずっと座りっぱなしだったので、動きたかったのです」


何度も打ち合い、お互いに息が切れた頃に庭の東屋に腰かけて座る。季節は1月。デバルム帝国ではちらほらと雪がちらついていた。南国帰りには、肌寒く感じるはずだ。


それでもナジェールは、この旅でかなり体力が付いた。荷運びや時々馭者もし、野宿では薪広いや小動物の狩りもした。全てが始めてのことばかりだった。


そして祖父母にも会えた。


「ケイシー、僕は祖父母に会いました。アメリアさんとケイシーさんに」

「そうか。どうだった?」


何でもないように聞くケイシーに、ナジェールは話を続けた。


「普通の人でした。アメリアさんはドレスなんて着ることもなく、エプロンしてパイナップルを売ってました。グルーニーさんは大工さんの手伝いをしたり、家具なんかを作ってました。みんなで宴会して、大笑いして、楽しかったです」

「そうか、良かったな」


「はい。会えて良かった。僕をリオと一緒にメシャーベルに行かせてくれて、ありがとうございました」

「俺が行かせた訳じゃないけど、なんか楽しそうだったみたいだな。お前、良い顔になったよ」


「ありがとうございます。また明日からは、ルナの護衛兼執事として頑張ります」


「ああ、それはもう良いよ。リオからお前を護衛にしたいと希望されたんだ。ルナから後で話をされるだろう」

「それは! ……嬉しいな」



ナジェールの気持ちに気づいているケイシーは、頬が緩んだ。冷やかしてやろうという気持ちを、何とか押し込める。


(ああ。ちゃんと表情が出るようになったな。貴族としては前の方が良かったかもしれないが、そんなの訓練で何とでもなるしな。いろいろ吹っ切れたのだろうな)



「ああ、頑張れよ。リオもルナに触発されて、だんだんお転婆になってるから注意してやらないと。放置すれば、ルナになるぞ」


「ルナになる? それはすごいですね」

「本当、すごい大変だぞ。俺達が! ルナは一人で十分だからな」

「はははっ、そうですね」

「そうだぞ。既に大変だからな」

「ふふふっ」



笑いが止まらない2人は、肌寒さを忘れて愉快そうにしていた。そこにルナから声がかかる。


「風邪ひくよ、2人とも。世話が焼けるんだから、もう」

「ルナ、言い過ぎよ。でもナジェールは疲れているでしょう? そのくらいにした方が良いわよ」


「あらっ、優しいねリオ。ナジェールの幸せ者」

「違う、わよ。だって私も疲れたから……」

「へへへっ、そう」



自らのことは鈍いのに、リオの様子に気づいたルナ。さすがに、いつも一緒にいるからだろう。その向こうで焦って汗をかくナジェールは、顔を赤くしていた。



外は寒いのに、庭には春が来ているようだ。



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