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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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アメリア達との別れ

11/5 11時 誤字報告ありがとうございます。

大変助かります(*^^*)

 リオ達は1か月をレイザヴァニーとメシャーベルで過ごした。デバルム帝国に戻るまで2か月はかかる為、そろそろ重い腰を上げることにしたのだ。


さすがに通い始めた学園だから、あまり多く休学出来ないと思った。でも本音はこれ以上ここにいると、居心地が良過ぎて動けなくなりそうだから。


多くの者は知らないが、

メシャーベル・アイランドは南国の街々を纏めた総称で、もっとも栄えているメシャーベルが、いつの間にかメシャーベル・アイランドと呼ばれ出したそうだ。


だからアメリア達は、首都入りをしていないだけで、メシャーベル・アイランドに住んでいたことになる。


他国から来た者はみな遠すぎて、そこら辺の情報が不足していた。現にアメリア達もリオ達も、メシャーベルだけがメシャーベル・アイランドだと思っていたから。



メシャーベルに入ったマーディ達とリオ達もメシャーベルに入り、図書館で調べたり口伝えでわかったことがある。

メシャーベルは、メシャーベル・アイランドの街の一つで、何処も安全で住みやすい。そこ(メシャーベル)はもっとも奥に位置した攻められづらい場所にあり、街の周囲の湖は水深が高く泳げない。許可のない船は保護バリアーで弾かれ、港に着けずに引き返すことになる。最悪な厄災があっても、もろもろの備蓄や戦力面によりメシャーベルだけは守られることになる。


入国審査が厳しいのには、それなりの理由があったのだ。入国が許された者は同意の下、入国時に機密を話せなくする魔法がかけられ、それに触れる意思のある行動をすれば、全身に激痛が走り気絶する。それにより、筆記も会話も出来なくなるのだ。

その為に潤沢な資金を存分に使い、優秀な魔法使い達を終身雇用している。その魔法使いはもうその街からは出られないが、優遇は約束されていた。


その街を出る一般人は、軍事機密に関わることを生涯話すことが出来ないだけだが。



そしてその隣の街レイザヴァニーは、メシャーベルの次に安全な場所であると言っても良かった。ただ優先させるべきはメシャーベルであり、切り捨ての対象にはなる。


その基準で判断するならば、諜報的なことをしてきたアメリア達は、生涯メシャーベルには入れないことになる。


でもきっとメシャーベルに入れなくても、アメリア達はレイザヴァニーから離れないだろう。もう家もあり生活も根づいている。入って良いならちょっと入るが、すぐに戻って来ることが予想できた。


アメリア達は既に、レイザヴァニーの住人なのだ。



メシャーベルには孤児院や教会がない。

国に不満を抱く、不特定多数が集うことを嫌うからだ。

特に孤児は諜報かどうかを見抜きづらく、設置は見送られている。そもそも両親が死んだくらいで天涯孤独になる者は、入国審査に通らない。


表には隠されているがマーディの祖父は、元々メシャーベルの国防担当である重鎮の息子だった。当然にその親族も多くその地にいる。モリーバとデペンは、婚姻関係にあるマーディの家族として認識されていた。そうでなければ、冒険者が入国出来はしないのだ。



でも、もしかしたら、アメリア達もその仕組みに気づいているのかもしれない。





◇◇◇

「もう帰るんだね。寂しいけどしょうがない。また私達が生きているうちに、遊びにおいで」


「ああ、俺も待ってるよ。新婚旅行でも良いんだよ。少し遠いけど、大歓迎するから」



アメリアとグルーニーは、リオとナジェールにそう言って抱きしめてくれた。とても優しくて、本当の祖父母のように暖かい眼差しを向けてくれた。


護衛のロザンナ達にも、機会があれば寄って欲しい。酒盛りしようと声をかけて、笑って抱擁した。


ロザンナ、ガルード、コーマは、アメリアとグルーニーが大好きになっていた。事前情報としては侯爵家を裏切った者達と聞き、ずいぶんと警戒していた。でもとても気持ちの良い愉快な人物であったことで、離れがたいとまで思ってしまった。


だが彼らには、リオとナジェールをデバルムまで安全に護衛する役割がある。だから笑顔で「またきっと来るから。今度は旨いの持ってくるぜ」と告げたのだ。


「アメリアもグルーニーも、元気でいてくださいね。手紙書きますから。またきっと来ますから」


「お爺ちゃん、お婆ちゃん。僕もまた来ますから。元気で待っていてね」


「ああ、またおいで。待ってるから。あとグルーニー、お婆ちゃんは止めとくれ、老けた気になるから。今度来ても、アメリアで良いから」


「俺はお爺ちゃんで良いよ。孫って実感できて嬉しくなるから。ああ、寂しくなるな」


コリー犬のジルを撫でると、「くぅーん」と鳴いて寂しそうにしてくれた。最初は吠えまくられたのに、ここにいる間にずいぶんと懐いてくれた。



いろいろなものに未練を残しながら、青い湖のある街を後にする。陽射し避けの幌を開いた馬車へ、お土産のお弁当や冷凍したアイスや冷蔵した果物も持たされた。仕事の前にマーディ達もお別れに来てくれて、別れを惜しんでくれた。今更ながらたくさんの人にお世話になったと思い、涙が出そうになる。



ガタンゴトン、ガタンゴトンと、馬車が動き出す。


姿が見えなくなるまで、アメリアとグルーニーは手を振ってくれた。今生の別れのように。

リオとナジェールも、同じように振り続ける。


久し振りの走行に、大事にされ過ぎて若干太っていた馬が張り切っていた。けれどこの長旅で、きっとすぐ適正体重に戻るだろう。


デバルム帝国までまた、長い旅路が待ち受けているのだ。




ナジェールは父親(アルオ)に、この地で元気にしているアメリアとグルーニーのことを伝えようと思っていた。最初こそジローラムの子じゃない知り、落ち込んでいた父親(アルオ)だが、今は全てを受け入れていた。そして数奇な運命を辿ってきた両親(アメリアとグルーニー)を、労ってもいたくらいだ。


「先に手紙を書いて送ろうかな? 住所がわかれば、お父さんもお婆ちゃん達に手紙を送れるものね」


「そうね、きっと喜ぶわ。私もルナに書こうかな」



長い旅路だが、待っている人々がいる帰り道は嬉しいものだ。暑さに慣れたリオ達は、旅も少し楽になっていた。


時々休憩し、アイスを食べながら街を振り返る。



「楽しかったね」

「うん。とても楽しかったわ。最近は嬉しいことばかり起こる。生きていて良かった」

「大げさだね」

「……そうでもないのよ。いつも夢だったらどうしようと、朝起きる度に思うもの」


リオはナジェールの方を見て、真剣に伝えた。


「夢じゃないよ。僕もちゃんとここにいるよ」

手を伸ばし、リオの頬に軽く触れる。


今は後方を塞いでいた荷物は横に移動してあり、風が強く荷台に部分に入り込んで馭者席に流れていく。



ナジェールの手は温かく、夢ではないと実感できた。



「……そうね。現実なのね」


リオは目を瞑り、その手に自らの手を重ねた。




青い鳥が羽ばたき、何処までも広い上空を目指して行く。季節が変わり始めていた。



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