表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/56

アメリアとリオ

 アメリアの家に訪れたリオとナジェールは、素朴な家に驚いた。


「うわー、素敵ですね。真っ白いお家」

「良いでしょ? この街は日射しもキツいから、反射するように白い家が多いみたいね。まあ、私はずっと、長く住むなら白い家と決めていたけどね。ニシシッ」

「大勢でご迷惑じゃないですか?」

「だから遠慮なんていらないって。孫は婆ちゃんに甘えるもんよ。って、今までずっと構えなかったけどさ。だから、話でもしようよ」

「是非とも。いろいろ聞かせて下さい」

「良いよ。そのうち、グルーニーも帰ってくるからさ」



外壁は白いペンキで塗られ、屋根は赤く煙突は茶色。

中に入れば突き当たりは、階段に繋がっている。

10畳程のリビングと5畳のキッチン。

個室は1階の左奥に10畳の部屋が1つ。

2階に8畳の部屋が3つ。物置部屋が1つあった。

トイレは1階、2階に1つづつ備えられていた。

浴室は1階の右奥にあるそうだ。


小さな庭には花壇があり、犬小屋にはコリー犬『ジル』が人懐こい顔でこちらを見ている。

みんなを部屋に案内したアメリアは、アイスケースを乗せる荷台が仕舞われている物置から荷台を出し、馬が寝られるように藁を敷きつめて場所を作ってくれた。バケツに新鮮な水を入れて、人参を4つ程食べさせながら“可愛いね ”と背を撫で終えた後、馬食用の草も準備してくれていた。



侯爵邸の10分の1程もないが、それでも満ち足りた雰囲気が漂い、不足な物など無いように思えた。



アメリアに案内された後、好きな部屋で寛ぐリオ達。


ナジェールが1部屋。リオとロザンナで1部屋。護衛のガルードとコーマで1部屋を使うことにした。

本来なら、リオが1人部屋であることが望ましいが、そうするとロザンナが男性と同室になってしまうのだ。ロザンナは野宿も平気なので、部屋はどうでも良いと言うが、リオがロザンナと同室を希望したのだ。


勿論、侍女としての彼女(ロザンナ)を望んだ訳ではない。

リオはルナとしか外泊したことがないから、女性とゆっくり話をしたいと思ったのだ。幸いなことに護衛人とは、長旅で気心はだいぶん知れて来たと思う。


それに何となく、ナジェールは1人の方が良い気がしたのだ。



◇◇◇

「ただいま。あ、みんなに会えたんだね。じゃあ、今日は宴会だ!」

「私はアイス以外作れないから、着いてきてね」

「「「「「はい。ご馳走になります」」」」」


仕事帰りのグルーニーが、待ち構えていたように笑顔で来客に挨拶をして来た。

残念ながら普通食くらいなら作れるグルーニーだが、ご馳走を大量に作るスキルはない。その為、外食一択となった。

歩いて10分くらいの所に、美味しいと評判の大衆食堂があると言う。


てくてく、てくてく、てくてく、てくてく。


近隣の街と同じように、この街の夜も半袖で丁度良い気温だ。


貴重品だけ持って、みんなで歩く。

ジルは留守番。

アメリアとグルーニーの認めた人以外には牙を剥くそうなので、一先ず安心だ。


着いた先は、店の前に大型テントをいくつも繋げたテラス席だ。

テント天幕の端にお祭りの提灯のように、魔道具を並べて下げて明かりが照らされる。虫除けの香が焚かれ、テントに害虫も寄りつかない。


全員で席に着き外を見れば、暗くなった空に無限に続く星ぼしと月が、スパンコールを散らしたように煌めいていた。空を映す昼とは違って暗い湖も同じように煌めくのだ。


ここを一度知った人は、この景色が忘れられず遠くから再び訪れるのだろう。


「ここまで、お疲れさまでした。何でも好きな物を頼んでね。明日からは屋台で買った物とグルーニーの作ってくれる粗食だから、遠慮しないで飲み食いしてね」 


「はい。ご馳走になります」

「ありがとうございます」

「おー、大きいお肉だ。この地域の牛か? 脂がのって旨そう」

「魚も新鮮ね。これって、生でしょ?」

「ああ、酒も旨い。濁り酒か? この地域特有の味だな。料理と合うぞ」


リオとナジェールが景色に感動しているうちに、ロザンナ、ガルード、コーマは、料理にかぶりついた。


花より団子である。


そんな私達を見て、微笑んで頷き合うアメリアとグルーニー。

仲良く乾杯して、ビールを飲んでいるようだ。


リオはアメリアを見たことはあっても、グルーニーとは初対面だ。けれどさすが双子だけあって、ジローラムにそっくりだった。違和感はあまり感じない。ジローラムと言われれば信じてしまうだろう。

何よりリオは、ジローラムとも関わりが薄い。

実の父なのにだ。


ナジェールは仕事でジローラムと関わってきたが、あくまでもビジネスライクだった。素で接することは少なかった。



だから不思議だった。

ここにいるアメリアとグルーニーは、リオやナジェールだけでなく、護衛の人にも気軽に声をかけてくれるのだ。


昔からの仲の良い知り合いのように、心から歓迎してくれているのが解るのだ。


だから暫く果実酒を飲んだ後で、聞いてみた。酔った勢いでリオが。

「どうしてこんなに、良くしてくれるんですか?」と。


そうしたら、アメリアとグルーニーはこう答えたのだ。


「私は、大事な孫に会わせてくれたからよ」

「ここまでナジェールを守ってくれて、ありがとう。俺の愛する孫に。遠くから見守ることがあっても、一生話すことはないと思ってたよ。………本当に嬉しいんだよ。それにリオは私の姪だ。君に正面から会えたことも、奇跡みたいなんだ。来てくれてありがとうな。

俺はアルオが君達と侯爵邸に来てから、商人に変装して何回か侯爵家に荷物を運んだもんだよ。酷いことにアルオは全然良いとこなしで、リオルナリーと君の違いにも気づかないような男になってしまった。

今さらながら、申し訳ないと謝るよ」



謝って欲しい訳ではなかったリオ。勿論ナジェールも。


「僕達は、謝罪なんていりませんよ。その………ランドバーグさんに、お二人のことを聞きました。だから、もう大丈夫です。本当に生きて会えて良かったです」


「そうですよ。私なんてジローラムさんが父親だってことも、ずいぶん後で知ったんですから。ジローラムさんにさえ、きちんとした謝罪なんてないんですから。グルーニーさんは謝る必要は皆無です。可哀想だとしたら、まあ、それはルナ、えーとリオルナリーですね。だから私は大丈夫です」



そう言うリオ達を見て、アメリアは“しょうがないのがいるわね ”とばかりに、溜め息を吐いた。

グルーニーは、「ナジェール、なんて良い子」と泣き出していた。

アメリアはいろいろ割りきっていたが、グルーニーはいつも孤独だった。だからこそ、ナジェールに会えて嬉しかったのだろう。


「こんなジジイは嫌だろうけど。一度抱きしめて良いかい?」

ジローラムに似ているせいか親近感が強い。

だから抵抗なくナジェールは答えた。


「僕も会いたかったです。お祖父様」


二人は煌めく星空の下、強く抱き合った。

その温もりが嬉しくて、ナジェールも涙していた。


50代のグルーニーは鍛えられし肉体で、ジローラムより若々しく、とても頼りがいを感じられる。


二人の包容を横目にして、邪魔しないように料理を食べるアメリアとリオ。護衛組は強いお酒をお代わりして、酔って大笑いし、こちらの方に興味がない様子だ。わざとらしい感じもない。



リオは何となく、さばさばしているアメリアを気にいっていた。母親のナミビアこそ、危険を避ける為にジローラムから離され、肉親からも縁を切られていた。

幼い時は下町のおばちゃんが、リオのおばちゃんみたいなものだ。血縁とは縁がないと思って生きてきた。


だけどアメリアは実の父親が傍にいても不幸だった。それどころか、奪われるだけだった。貞操も仕事で失くし、父親の仲間に命まで狙われる始末だ。けれど微塵も不幸そうにせず、いつも笑っているのだ。


(ああ本当。過去なんて振り返っている場合じゃないわね。楽しんだもの勝ちなんだわ)


そう思い、リオでも飲める果実酒を2つ持ち、アメリアに差し出した。


「女同士、一緒に飲みませんか? 私の夢とかも聞いて貰えると嬉しいのですが」


おっと、意外そうな顔をしたアメリアだが、一瞬にして破顔一笑した。


「ええ、ええ、聞かせてよ。若者の夢、聞きたいわ。あんたも大概、不幸を背負ってきたからね。出来ることなら手伝ってあげる」


少し酔ったアメリアは、年齢のわりに若々しく艶っぽかった。


「じゃあ、まずは」

「「乾杯!」」


こうしてアメリアと服飾店のことから、ニクスが働くレストランのこととか、アルオが真面目にやっていること等を話まくっていたリオ。アメリアも負けじと、殺し屋に狙われたことや応戦したことを、飲みながら話していく。


周囲の人は、酔っぱらいの戯れ言として聞いてはいない。なんなら全員酔っているから。


観光地で成り立つ、レイザヴァニーの街を守る店主達は怪しい者がいれば排除していた。しらふの者や聞き耳を立てそうな者には、飲み物に薬を混ぜて知らぬ間に眠らせていた。アメリアファンの伯爵家の諜報員も、この店では歯が立たなかった。



そして楽しい夜は、更けていくのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ