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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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アメリアとの再会

 「パイナップルはいかが? 甘くて美味しいわよ」


様々な村や街を巡り、リオとナジェール達はメシャーベル・アイランドの前の関所街に到着した。



ここで1週間、この街レイザヴァニーに滞在する間、申請後の審査があると言う。この国の諜報員により、他国の諜報員でないか問題のある犯罪者でないかを密かに審査されるのだ。


問題がないと入国でき、入国できなくてもこの街レイザヴァニーも住みやすいので滞在する者が多い。


リオ、ナジェール、ロザンナ、護衛のガルードとコーマは、幌の付いた馬車を宿屋に預け街を散策する。



そんな時に聞こえた声に、ナジェールは聞き覚えがあった。


「あれ? ………この声聞いたことがある。えっ、これもしかして、アメリアさん?」


「それって。失踪したと言う、貴方のお婆ちゃんね。何処にいるの?」


「えーとね、あそこでパイナップルの串刺しを売ってる人?」


「「「「ええっ、マジか!?」」」」


次の瞬間、たくさんの顔に見つめられたアメリアは、「あらっ、いらっしゃい」と、暢気な声を出していた。



「取りあえず、1本づつで良い? もう懐かしいから、1本分サービスで銅貨3枚ね」


銅貨1枚千円だから、3000円くらい。

でもパイナップル1個で500円(半銅貨1枚)くらいだから、かなりの高値だ。

ケースには冷蔵魔法がかけられているのか、切り分けて串に刺したパイナップルは美味しかった。ケースには他にもマンゴーやオレンジ、メロンも冷やされていた。


冷凍ケースには、アイスクリームも入っている。


魔法使いは数が少ないので、貴族が抱え込んでいることが多い。パッと見、庶民のアメリアに雇えるようには見えなかった。


喉が渇いていたので、取りあえず全員でかぶりつく。

そして、

「美味しい!」

「うまい!」

「冷たい、最高!」

「こいつは喉に滲みる。うまい!」

「果物あまり食べんのだが、これは美味しいな」



絶賛の声に、アメリアはニカッと笑顔を向けた。


「ふふっ、美味しいでしょ? おかわりのお金はいらないから、自慢のアイスも食べて頂戴!」


その声で「やっぱりぼったくったな」と、ロザンナは激昂したが、莓のアイスを口に突っ込まれて沈黙した。


「ウマイ!」って、叫びながら。


その後すぐ、他のみんなもアイスを食べ始めたのだった。桃、蜜柑、葡萄、レモンと別々の物を食べたが、色も綺麗で良い香りだった。



南国では果物が年中栽培され、安く市場に並ぶらしい。


鉄貨1枚が100円。

冷蔵・冷凍魔法が施されていても、原価は1つ200円くらいなので、かなり多くぼったくられていたようだ。


それでも砂漠や高温地帯を渡り、暑くて疲れた体にはとても甘美だった。普段でも美味しいが、シチュエーションのせいでさらに旨味が増したのだろう。



まあ、それはさておき。


「生きていたんですね。アメリアさん」

ナジェールは確かめるように、アメリアに声をかけた。

いつもは様付けだったが、今はさん付に変えていた。ここで様は目立ってしまうと思って。



父親(アルオ)が死にかけたのは、アメリアの失踪が原因だった。心底辛かった思いは今でも消えない。

けれど今になってみれば、秘匿されていた生い立ちも何も知れ、ナジェールにとっては良かったことが多かった。


以前は祖母とは言え、貴族のアメリアには声などかけられなかった。会う機会さえ、殆どなかったから。


リオルナリーはアメリアからすれば、何度か会っていた孫である。しかしリオからすれば、本当の他人だし、会ったことはない。母親のナミビアが追い出されたのを、お腹の中で聞いていたか聞いていないかくらいだ。



「ごきげんよう、お祖母様。お元気でしたのね」


リオは当たり障りなく挨拶するも、アメリアに追撃された。


「あんたは私の血なんて1滴も入ってないだろ? なあ、リオ。くふふっ、良い顔!」



どうやらアメリアは、全て知っているようだった。


忘れていたが、彼女は悪徳公爵のダニーラル・ウィスラル公爵の娘。様々な修羅場を潜り抜けてきた女傑なのだ。

当然に周辺の警戒は怠るはずがない。


とっくにリオやナジェールのことは知っていた。

さすがにルナの瞳のことや、祝福を解いたことは知らないけれど。


アメリアの情報は、タルーシアラ国を出た時点で一度途切れている。けれど熱狂的なファンの伯爵令嬢が、凄腕冒険者を雇い、アメリアの居場所を知ったようだ。訪れることはないが、定期的に手紙を送って来るのだ。

害はないので放置しているが。その手紙でリオ達が、メシャーベル・アイランドに来ることも解ったのだ。


解ってはいたけれど、いつ来るかなんて知らないから、通常運行で生活していた。ここでパイナップルを売っていたのも偶然なのだ。




◇◇◇

アメリアとグルーニーは、残念ながら入国審査に落選していた。だが、この街で問題なく3年を生活すると、再審査を受けられることを知り、商売をしていると言う。

お金なら腐るほどあるアメリアだが、無職だとNGらしく、彼女は果物を売り、グルーニーはとび職や大工仕事に就いていた。


最初は宿屋に泊まっていたが、慣れていくうちに海辺の古びた一戸建てを買った。

魅力の観光地の一つ、“綺麗な湖ローレライ湖”が一望できるからだ。


何度か砂浜を散策し、裸足で歩くと足跡がついては波に消えていくのを見ると楽しくなった。足裏が僅かに砂に沈むのも良い。泥のように足を取られるだけではなく、ある程度で止まるのも面白かった。


ぎゅっ、ぎゅっと、早朝の誰もいない湖は歩く音さえ耳に届く。グルーニーと一緒に、向こう岸が見えないほど大きな湖と空に息を飲む。白い砂浜は、何処までも続いていた。


「遠くまで来たね」

「そうだね。実際南の果てだしな。………それにしても綺麗だな」

「そうね。私の次に美しいわ」

「くすっ。そうだね、アメリアの次に良いな。絵画みたいだ」

「じゃあ、この辺に住もうか?」

「大丈夫か? 料理も作らないといけないんだぞ」

「ああ、そうね。まあでも、最悪買うことも出来るじゃない。いける!」

「そうか、嬉しいな。こんな楽園みたいな場所に来られるなんて。それもアメリアと一緒だ」



グルーニーは穏やかに笑い、アメリアは泣きそうに笑った。


(ああ、ここに来れて良かった。グルーニーが笑ってくれて良かった)


入国拒否され一度は落胆したも、アメリアは気づいたのだ。

別にメシャベールじゃなくても、グルーニーが一緒なら何処でも良いんじゃないかと。


手持ちの貴重品だけは銀行の貸金庫に入れて、1か月分ギリギリ暮らせるくらいの資金だけを持って、不動産を扱う店に行く。


湖近くの家を借りたいと言えば、どうせなら買わないかと返された。古くて取り壊そうとしていたらしい。土地は砂が多い為、農業は出来ない場所らしい。気候の良い土地なのでその分料金がつくらしいが。


知らない土地だし、ぼったくられても解らない。

けれどそれは適正な値段だったらしい。




◇◇◇

ここまで護衛をしてくれた傭兵ギルドの魔法使いマーディ(女)、剣士モリーバ(男)、格闘家デペン(男)は、この地では珍しかったので目立っていた。


その時にマーディと一緒にいたアメリア達を、不動産屋ワーグナーは偶然見たのだ。この街のレストラン内の近くの座席で。


そこでマーディ達は、しきりにアメリアに頭を下げていた。


「自分達だけ入国出来るなんてスイマセン。高額で雇って貰って楽しい旅だったのに」


「本当ですよ。こんなに対等にしてくれて、優しくて話も楽しくして貰ったのに。申し訳ないっす」


「貴族なんて嫌な奴しかいないと思ってたのに。姐さん達を見てると、人それぞれだってことが解りました。ありがとうございました」



どうやら護衛されて来た依頼者が、入国出来なかったらしい。悪事でも働いて逃げてきたのだろうか? それにしては冒険者に好かれているな。


「仕方ないわ。貴族夫人が旦那の弟と駆け落ちしたんだもの、こんな厄介者は弾かれるわよ。気にしないで。私はここの湖を見れただけで満足よ。旅も楽しかったしね。今まで、あんなに笑ったことなかったわ」


「そうだよ。楽しかったよ、ありがとうね。無事にここまでこれただけでも十分だよ。ここで暫く暮らすつもりだから、気が向いたら遊びに来てよ」



ああ、駆け落ちか。

それも、もう熟年だな。

気のよさそうな雰囲気なのにな。

まあ。あの年で惚れた晴れたで逃げるなら、真剣なんだろうな。

元々の貴族がこんなことするなんて、きっとよっぽどのことだし。



なんてコーヒーを飲みながら、自然に耳に入った言葉を聞いていたワーグナー。


その後に宿屋に行く組と、メシャベールへ行く組に別れレストランを彼らは去って行った。


「真実の愛なんだろうな。良いな」


妻を数年前に亡くし、娘と2人暮らしのワーグナーは思った。

(今からでも愛する人に会えるだろうか?)


もうすぐ嫁に行く娘が去った後のことを考えて、寂しくなると共に、もう一度恋をしてみようかと、少しワクワクした。




◇◇◇

その後アメリアは、そこを買い取った。

銀行に行くのも面倒くさいので、たまたま付けていたブルーサファイアの指輪を、宝石店で買い取って貰う。


さすがの侯爵夫人の持ち物は、金貨200枚になった。観光に来る金持ちに売れると好評だったそう。


「良いのか?」と聞くグルーニーに、「指輪より家の方が良いわ」と笑うアメリア。


家は金貨100枚、リフォーム代50枚、中の家具代を残して丁度良い金額が残った。リフォーム中は暇になる為、何かして働こうと思った2人。


丁度遊びに来てくれたマーディ達と観光して、いろいろとその街を見て回った。マーディ達は護衛の資金があるので、暫くのんびりしてから、観光客用の旅館を始めるらしい。3人の資金を合わせると、ちゃんとした場所を確保出来たらしい。良いことだ。



街を見て、アメリアは思った。

「果物売りやアイス屋台がないわ」と。


貴族であったアメリアは、冷蔵・冷凍魔法を持つ魔法使いを常に同行させて、貿易や領地の視察に赴いていた。だからいつも冷たい水や、氷菓を楽しめていたのだ。


だがここでは、レストランでも氷菓や氷の入ったジュースがない。精々が冷蔵庫があるくらいだった。

魔法使い自体が少ないのだろう。


そんな場所にマーディがいるのだ。

ガラスの容器に生の果物を切って入れ、アイスも種類別に作り、冷蔵・冷凍をかけて貰い売れば儲かる気がする。


1回で6時間くらい持続するはずなので、その間に売りきれば良いのだ。


マーディは喜んで協力してくれた。

「こんなことをよく思い付きますね。スゴい!」


「いやいや。タルーシアラではもう普通なのよ。孫が発明したみたいよ。スゴいでしょ」


誇らしく言うアメリアに、マーディは微笑んだ。

きっとお孫さんと仲が良かったんだろうな。

それを捨ててグルーニーさんを選んだんだ。

なかなか出来ることじゃないよ。

まさに真実の愛!

ホロリと涙するマーディ。



見当外れの思惑の中、協力を得たアメリアは翌日からワゴンにそれらを積んで売り歩いた。勿論、マーディには魔法をかけてくれた料金は支払っている。無料で良いと言われたけれど、商売は線引きが必要だからと受け取って貰った。


入国出来ないアメリアのところに、毎日宿屋までマーディが散歩だと言って来る。関所まで行くと言うアメリアに、“最近太り気味だから、良いの ”なんて来てくれる良い(ひと)

アメリアがアイスの元(細かくした果物・砂糖・牛乳を混ぜたもの)を大きいケースに入れ軽く冷凍、そして取りだし混ぜて軽く冷凍を何度か繰り返しアイス完成。次に果物を切り分け、串に指して冷蔵のセットが完了。

そんな訳で、毎回出来上がりを食べるのはマーディか、モリーバなのだ。何度食べても飽きないらしい。



ピンクブロンドの髪と水色の瞳を持つ美女が売るスイーツは、大人気だった。

地元の人には安く、観光客にはぼったくる姿勢は変わっていなかった。伊達に貿易で利益を上げて来た訳ではないのだ。6時間限定のなので、余ったら孤児院でいっせいに食べるのだ。


だからいつも、販売ルートは決まっていた。


アメリアも本当は儲けようとも思っていない。

余って孤児が喜ぶなら、それで良いと思っている。


けれど施しは違うと思うのだ。

売れ残ったから、特別に持って来たが良いのだ。


言葉の通り、余ったのを一緒に食べて欲しいと言うお願いだ。


言葉通り、余らないことだってある。

だから理想は、大きくなって働いて、好きなものを食べて欲しいだ。


孤児だからって卑屈にならないで、美味しく食べてくれれば良いと思う。



そんな活動をしていくうちに、ちょっとした有名人になっていた。





アメリアは、完成した家へリオとナジェール達を招く。


「たくさん部屋があるから、護衛の人達も泊まってよ」



少し考えた後、応じるリオ達。


「それでは、よろしくお願いします。アメリアさん」

「おいで、おいで。今日は宴会だね」


そう言って陽気に笑い、案内するアメリア。


馬を預けた宿屋から馬を引き、宿屋へ宿泊のキャンセル料金を支払ったリオ。


「アメリアさんの知り合いなら、仕方ないわね」


宿屋の奥さんまでアメリアを知っていた。

それも好意的だった。

「アメリアさんって、いったい?」


謎ばかりが膨らむリオなのだ。


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