ルナ、デバルム帝国へ戻る
10/27 6時 誤字報告ありがとうございます。
大変助かります(*^^*)
11/5 11時 誤字報告ありがとうございます。
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「結局国王にも、ルナってことをバラしちまったな」
「いやぁ。隠せなかったよ、さすがに。
だって私が何か困ったら、何があっても駆けつけるとまで言ってくれたんだもん。さすがに身分を明かさないのは、違うかなと思って」
無事にルナの懸念事項だった、祝福を解く薬のレシピを伝えることが出来た。ついでではないけれど、無事にユズキューレを救うことにも成功した。
寒さの激しい場所では、喘息は命取りである。このタイミングで出会えて良かったのかもしれない。
彼女は国王夫妻の1人娘だから、継承権争いに巻き込まれるかもしれない。けれど今までの不調は、みんなが知るところだ。
もし彼女がその地位に留まるのが嫌なら、体調のせいで辞退することも出来るだろう。
祝福の薬で彼女が健康体になったのは、彼女の身内のような人しか知らないのだから。
もしメシャーベル国で紫の瞳の人が見つかったなら、時間がかかっても馬車を飛ばしていつでも行けるだろう。
けれどアイスグラウンドは、天候によっては視界不良で入国出来ないこともある。だからこそ、自分が行ける最速の冬期休暇で向かったのだ。
国王夫妻や家臣達にも、紫の瞳の人は見たことがないと言う。いないことに越したことはないが、今後も注視して貰うことを約束してくれた。
「また一つ、やりたいことが叶ったよ。こんな所までついて来てくれてありがとう、ケイシー」
「何処にだってついていくさ。存分に頼ってくれよ。まあ今は、頼りないかもしれないけどさ。もっともっと、強くなって守ってやるからな」
「私はずっと、ケイシーに助けて貰っているよ。いつだって、頼りがいあると思ってるからね」
ルナが知らない時から、ケイシーに守られていた。最初は仕事だったのに、いつの間にか目が離せなくなっていたケイシー。
今は照れることなく、自然とこんな台詞を言い合えるようになっていた。ちょっと熟年夫婦みたいだ。
恋人より相棒と言う言葉が似合うけど、いつも一緒なのが当たり前になりつつある2人なのだった。
「リオの為に主婦達の刺繍も買い取ったし、白熊や大鹿の肉のスパイス漬けのお肉や、アイスグラウンド王国にしかないアルコール度数の高いお酒も貰ったし、伝統の砂糖菓子も作りたてをくれたし、ホクホクだよね」
「そうだな。みんな待ってるから、早く帰りたいな」
「うん。やっぱり、みんながいる場所が良いね」
なんて余裕な2人を他所に、魔法使いのボビーはフラフラしていた。
「もうすぐ大金が入るから、格好良い魔法使いのローブを買って、モテモテになるんだ! イチャイチャの2人に(精神的に)負けてたまるか!」と、呟くのだった。
ケイシーのことを知っているシュートンとアゲンストは、“ずいぶんと成長したな ”と感慨深く馭者席で会話を交わす。彼らはケイシーが根無し草のように生きていた時も知っているから、余計にそう思うのだろう。
幸いにして車輪の音で、後方にいる者に会話は聞こえないのだった。
◇◇◇
デバルム帝国内で、ルナやリオが活躍していたことにより、一つの問題が起きていた。
帝国に来てからは、全然社交界に出ていない2人なので気にしていなかったが、彼女達は注目されていた。
ルナは既にケイシーと婚約状態だが、親しい高位貴族との繋がりや商売利益のことで、アプローチしてくる貴族が未だに多くいた。
リオは教会への高額の寄付や孤児院への慰問、さらにはタルーシアラ王国の侯爵令嬢で婚約者がいない為に、人気が集まってしまったのだ。
お忘れかもしれないが、2人とも黄色の明るく艶やかな髪とエメラルドグリーンの煌めく瞳を持つ美人。
カトレイヤ造園商会の美容用品を使うことで、いつも良い香りを纏っていた。
そこに帝国の第一皇子ビヨンドから、アラキュリ侯爵家にアプローチがあったのだ。勿論、それは王命ではない。
「我が国に貢献している令嬢に、第二夫人になる気はないだろうか?」と。
既にビヨンドには妻子がいる。年齢も31才とかなり上である。第二皇子ユガットは25才でまだ独身であるが、それは皇子のいないビヨンドを慮ってのことだった。優秀で体術も剣技も強い彼は、多くの騎士からも一目置かれる存在なのだ。
まだ将来の皇帝となる皇太子は決まっていない。
国力を上げる為に、自然豊かなタルーシアラ王国は魅力のある国である。
王位を決める為にもタルーシアラ王国と協力関係を強く結びたいビヨンド。その為には婚約者のいる王女よりも、まだ年若く婚約者のいない公爵または侯爵の令嬢が狙われていた。
デバルム帝国は実力主義社会で、平民にもチャンスが多い良い国である。今の皇帝はうまく治世を維持している賢王と呼ばれていた。しかしビヨンドは貴族優勢主義を掲げており、一部の貴族には支持されていたが、他の貴族や平民には人気がなかった。
「国が富めば、自然と民はついてくる」と持論を翳すビヨンド。
それでも安寧の為にビヨンドを指導しながら、彼に皇位を継がせようとする皇帝とユガット。その心はビヨンドには伝わらないのだった。
そんな時に帝国に現れたルナとリオ。
帝国は、軍事力も商いも賑わう広大な国である。そこからの要求であれば、なかなかに断るのは難しい。
せめて正妻ならまだ話は解るが、皇帝になる為の駒にされるのが見え見えである。
タルーシアラ王国の国王とて侯爵家には負い目があり、無理にリオを嫁がせたくはないのだ。
肝心のリオはと言えば、まだまだ旅の途中である。
楽しくも大変な旅の最中に、こんな知らせなどしたくはないジローラム。ルナをリオルナリーだと知っているアルオさえ、何とか回避出来ないかと思考を巡らせていた。
リオがリオルナリーになっていることを、最近知ったアルオには罪悪感が芽生えていたのだ。
「俺が2人の運命を歪めてしまった。こんな思いをさせるくらいなら、縁を切った方が良いのかもしれないな」
そう言う彼には、もう養育権はない。
ジローラムに託す以外、道は残されていないのだ。




