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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ルナ、アイスグラウンド国王に会う

 「そろそろ着きそうですね」 


ガイドのマルクが、馭者をしているアゲンストに声をかけた。


あれからも宿から宿を移動し、アイスグラウンド王国の王城に辿り着いた。


商品の売買や視察が殆どだけど、この国の国王にも用事があった。

紫の妖精に、最初に願いを捧げた王妃がいた場所に。



ルナはランドバーク伯爵、アラキュリ侯爵、オスカー・フランベル子爵から、アイスグラウンド王国のライナス・アベニュリア国王に向けて親書を送って貰っていた。


内容は、リオルナリーの身分を保証する内容と訪問の目的だ。


突然の親書だが、その手紙の中心がリオルナリーであり、送ってきた貴族が紫の瞳のリオルナリーの関係者だと解り納得する。

ランドバークならば国王に親書を書かせることも可能だが、検閲によりタルーシアラ国の高官に秘密が漏洩することを防いだのである。


当然アベニュリア国王側でも検閲するだろうが、アラキュリ侯爵家の細かな人間関係などはすぐに調べられないと思い、侯爵令嬢のリオルナリーとして会うつもりでいるルナだ。

どうしてもイッミリーやフローラの説明をする際、子爵令嬢ルナでは説明が難しいと思ったからだ。万が一アベニュリア国王がリオ(今はリオルナリー)に手紙を送っても、リオから伝えられるから大丈夫だと考えたのだ。



ルナが国王に会いに来た目的は、

妖精の祝福を解除する薬のレシピと、祝福から出来たポーションを渡す為だ。この国で紫の瞳の人がいなければ、それで良い。けれど血縁者に血が残ることも考えられるので、発祥の地であるこの国には伝えておきたかったのだ。念の為に祝福から出来たポーションを持参したのは、レシピを信じて貰う意味もあった。


ボビーに来て貰ったのは、一時的にポーションの時間停止を解き、病人を一人救う為だった。


事前にやり取りしていた通り、治癒を希望している人も王城で待っていると言う。




◇◇◇

「謁見を許可していただき、誠にありがとうございます。ライナス・アベニュリア国王様、コットリー・アベニュリア王妃様にご挨拶いたします。私はアラキュリ侯爵家の長女、リオルナリー・アラキュリと申します」


謁見室に案内され、挨拶をするルナ。


ルナは丁寧なカーテシーを行い、従者としてケイシー、シュートン、アゲンスト、ボビーが、ボウ・アンド・スクレープ(紳士の礼)を行った(ガイドのマルクは、応接室に待機中だ)。


「面をあげてください、リオルナリー嬢。遠くまでご苦労様です。こちらの方がお世話になりますよ」

「そうですよ。よろしくお願いしますね」



国王も王妃も優しい口調で、こちらを見つめていた。

威圧を解いてくれているのか、雰囲気がとても優しかった。

ルナは自分の祖母や母親が紫の瞳で若くして亡くなり、デバルム帝国でも若くして亡くなった王女がいたことを伝えた。そしてデバルムの最上級薬師が、祝福を解く薬を作ったことを伝えたのだ。


ルナはボビーの方を向き、彼に持参して貰ったポーションを見て頷く。


「国王様。早速ですが、病傷者の方にお会いしたのですが」


言われた国王は瞬き「では、こちらに」と言って、王妃と共に案内してくれた。

勿論、ルナ達の前後には、国王の近衛兵が付いていたが。



◇◇◇

王城から、生活の場である王宮に場所を移動し、2階の陽当たりの良い部屋に彼女がいた。


この国の王女ユズキューレは、ベッドに横たわったままで此方に挨拶をした。


「ユズ、お話ししていたリオルナリー嬢だよ」

「ああ、この方が。こんな遠方までご足労様です。

私はユズキューレ・アベニュリアです。こんな格好でごめんなさいね」


少し話しただけで、ヒューヒューと息が切れている。顔色も白く目の下には隈が目立っていた。



ルナは早速ボビーに声をかけた。

ボビーは頷き、ポーションを部屋の中央のテーブルに置いた。そしてすかさず、呪文を唱えた。


「時間停止魔法解除」


容器に入ったポーションは水面が揺れ、時を取り戻した。

用意されていたコップにポーションを注ぎ、再び魔法を発動する。


「時間停止。

リオルナリー様。再びポーションの時間停止を完了しました」

そう言って、ボビーはケイシー達のいる壁の方に移動したのだ。



リオは恭しく、そのコップのポーションを国王に手渡した。

「ポーションで御座います。どうぞ」


礼をして、ルナもケイシーの元へ向かう。



「どうか、奇跡を」

ユズキューレの元へ、国王と王妃は共に歩み寄った。

そして体をゆっくりと起こして、コップのポーションを口に含ませた。


ゴクッ、ゴクッと喉元を通り過ぎると、ユズキューレの体が一瞬輝いた。


すぐに王宮医師が診察する。

肺の音を聞く医師は、驚愕していた。


「国王様、奇跡で御座います。王女様の肺の機能が回復、いえ健康な状態に変化しております。脈拍も力強く、何処にも悪い部分はありません」


医師は全身の透視(サーチ)をするが、全身の全て衰弱していた臓器も活気を取り戻し、力強く動き出している。


その言葉通り、彼女の顔色は桃色に色づき隈も消えていた。重度の喘息で余命幾ばくもない少女は、蘇ったのだ。


「苦しくないわ。お父様、お母様。

私、これからも生きられるのね」


「ああ、そうだよ。ずっと、ずっと、私達よりも長生きするんだよ」

「神様、ありがとうございます。何度私の命と引き替えに、ユズの健康を願ったことか。夢みたいです」


王女はポーションの効果で健康を取り戻し、静寂な部屋に彼らの嬉し泣きだけが響き渡る。

絶望から、これ以上ない希望を掴んだのだから。



その後国王がルナに声をかけ、全員でお祝いを告げた。ルナは馬車にある食品も花も全部城の中に入れ、大盤振る舞いで王女の部屋で祝杯をあげたのだった(マルクも祝杯に連れて来た)。


あくまでも内密な謁見だったので、国王達の信頼できる側近や乳母、侍女長、家令、近衛兵達が集まり、ルナ達にも無礼講を許したのだ。ボビーがいれば、暖めくらいは簡単だしね。



いつもの採算を考えるルナらしくないなと、シュートン、アゲンスト、ボビーは思った。だけどケイシーは知っている。ルナは幼い時から、等価交換(働かざる者食うべからず)を実践していたので、無駄な事が出来ないのだ。贅沢も出来ない(食べ物だけは別だが)。


だからこそ、親子が心から喜ぶ姿に感動していたのだ。

自分に救えなかった母親の分も生きて欲しいと、素直に思い。


そしてつい、気が緩んで(ルナ的に)散財してしまったのだ。

まあそれでも、いつものサービス精神で、お花を選んで綺麗にラッピングして王女に手渡したり、王女の部屋中を花で飾り付けた。ボビーには特別料金を出すので、この花にも時間停止魔法をかけて欲しいと頼んだのだ。時間停止魔法は疲労が強く精神力を削るので、嫌がる魔法使いが殆どだ。だけどこの旅で魔法を酷使した彼にしてみれば、“帰り道の方がよっぽど苦行だぜ ”とばかりに、あっさりかけてくれた。

マジックポイントの底上げもされていたようで、彼は一回り成長したのだった。



王女が救われ、幸福の中にいた国王は思った。

「今後リオルナリーに何かあれば、力の限り助けよう」と。


ユズキューレは病み上がりなのに、お菓子やアイスを美味しそうに食べていた。それを見て嬉しくなったルナは、タルーシアラ国の郷土料理や帰りに食べようと取って置いた『レストラン・オルヴォワール』のカレーやビーフシチューも振る舞ってしまったのだ。寝る前にちょっぴり後悔したが、彼女が帰る時には国をあげる程の宝やお料理を持たされるのだった。



◇◇◇

翌日の来客室で、国王夫妻とユズキューレ、ルナ達は帰りの挨拶をしていた。


「ポーションには、時間停止の魔法がかかっていますから劣化することはありませんが、使用時には時間停止を解除する精霊使いや魔法使いが必要になります。


そして紫の瞳の者がいれば、薬を作り飲ませてください。手に入れにくい物もあると思いますが、その時はタルーシアラ国の私の元にご連絡下さい。使われなくても一度作ってみることをお勧めします。不足な物が解りますから。


この度は私を信じて頂き、ありがとうございました」



ルナは頭を下げて、国王ライナスにカーテシーをした。

国王は「そんなことはしないでくれ、私の方が助けられた」と、頭を深く下げた。


ルナ達以外は護衛しかいない部屋だが、魔獣や猛獣を屠る技に長け第三王子であったのに王位に就いたライナスだ。これは大変なことである。


護衛は止めようとしたが、ライナスは手でそれを制止した。最大の感謝を捧げたいと言って、礼を続けたのだ。それに続き、王妃コットリーとユズキューレも頭を下げた。


「ありがとう、リオルナリー嬢。心から感謝する」

「王妃としても、母としても最大の感謝をします」

「命の恩人に感謝します。そしてお花とお菓子、とっても美味しかったです。絶対遊びに行くからね!」

「これっ、ユズ」

「まあ、ユズったら」


国王夫妻は崩し言葉に慌てるが、ユズキューレは人が変わったように元気に話し、ルナに握手をした。


ルナはユズキューレの耳に、コソコソと囁いた。

「移動はメッチャ寒いから、夏場が良いかも。後、お金があるなら、魔法使いに保温魔法をかけて貰って、暖かくしておいでね。活きの良い若いのを2人くらい雇って、コキ使えば快適かもよ。まずは体力つけて。待ってるからね」


ウィンクして笑う2人は、可憐な少女だ。

だがユズキューレは、病弱だが貴族然とした教育を受けていたから、ルナが本音で話しているか否かは瞬時に解った。


だから絶対に、遊びに行こうと心に誓ったのだった。


本気で体力作りをしたユズキューレが、来年の夏にはルナのいるフランベル子爵邸に来るなんて、誰も予測がつく筈はなかった。



「だって、ビーフシチュー食べたいんだもの」


食欲って、大事である。


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