リオ、旅の理由
11/6 10時 誤字報告ありがとうございました。
大変助かります(*^^*)
「さあ、もう少しで次の街に行きますよ。休まなくて大丈夫ですか? では、張りきって行きますよ!」
リオ、ナジェール、ロザンナ、護衛のガルードとコーマは、幌の付いた少し大きい商家で使うような馬車で、南国メシャーベル国を目指していた。
発破をかけ馭者席にいるのはロザンナで、その隣にガルードとコーマが座っていた。大きな馬車なので窮屈な感じはない。後部から見ると食料や衣類の箱が積んであり内部は見えない。内部は絨毯が敷いてあり、足のないソファーが積まれ快適に過ごせる仕様だ。馭者席側から内部の様子が丸見えにならないよう小さい箱が置かれ、絨毯が見えないようになっている。下手に立派な仕様になっていることを気づかせない為に。
長く人が居ない道では雨を弾く幌を降ろし、青空が綺麗に見える。日差しがキツく、日焼け止めは欠かせない。
カトレイヤ造園商会で開発した香り付きの日焼け止めや化粧品等が、ミリアからルナに大量に送られてくるから、それを貰って使用しているリオ。
「わあ、眩しい。こんなに青い空、ルナにも見せてあげたいな」
「本当に空は広いですね。風も気持ち良いです。
僕は川しか見たことがないですが、もっと水がたくさんある海も青いそうですよ」
「そうみたいね。知識はあるけど、私も見たことがないわ。私と貴方は、いろんなことを学んだけれど、経験していることは少ないわよね」
「ええ、そうですね。殆どが侯爵邸の記憶です」
「………でも、これから、いろんな場所を見られるわ。知識とすり合わせが出来るなんて、楽しみですね」
「本当にそうですね。今でも夢みたいです。こんな風に自由に旅が出来るなんて、1年前なんて思ってもいませんでした」
「ええ、本当に。嘘みたいに幸せです」
まだまだ会話がぎこちない2人だが、不思議と会話は進む。いつか外の世界を見てみたいと、願っていたからだろうか?
◇◇◇
旅に出る前。
現在リオルナリーであるリオには、侯爵家から養育費が振り込まれてくる。ちなみにルナは養育費を断っていた。
子爵家への宿泊代は、ルナがリオの分まで支払っているので、質が良く今や手に入りづらいカトレイヤの商品だけはリオが買い取ると言ったのだが、聞いてくれなかった。
「私はリオより3か月お姉ちゃんだから、遠慮なんてしないで」と、言って。
「お姉ちゃん? 同じ年なのに!」
「だって、私の方が家事は得意だし、いろんなことも知っているし、何より強いわ」
ムンと力こぶを見せるリオは笑う。
「刺繍や洋服作り、お菓子を作るのは、私の方が上手じゃない?」
「まあ、それはそれ、これはこれ。年上なのは事実だよん」
悔しげなリオに、ニシシッと笑うルナ。
納得がいかずいろいろ抵抗しているのだが、口では勝てずに毎回プレゼントされてしまう。
(お姉ちゃんって。あー、もう良いか)
不快じゃないし、ちょっと嬉しい。いや、だいぶん嬉しくて、笑顔になっていた。
友人であり、お姉ちゃんのルナに、ますます親近感が湧くのだった。
なので代わりにリオは、密かにナジェールとロザンナを連れ、デバルム帝国の洋菓子店をまわり、美味しいものを食べまくった。
そして3人で、好評価なものをプレゼントしていたのだ。
子爵夫妻とラーニャにも、勿論購入するのを忘れない。
「わあっ、美味しいね。ありがとう、リオ」
喜ぶルナの顔を見ると、自分でも嬉しくなる。それを探す喫茶店巡りも楽しい。
最近のルナは、投資している店の共同経営者になっいて、いろんな場所に出向いて必要な物のリサーチをしている。ケイシー達と出かけて行く為、別行動が多くなっていた。
ルナは幼い時から働いているので、黙って令嬢だけではいられないらしい。投資先を応援しているうちに、相手に見込まれてしまっての今。投資先は利益の半数を提供する形だ。そこまでされるルナは、とても信頼されているんだろう。
ルナは共に働くことが、性に合っているみたいだった。
ただリオだけでなく、ルナも贅沢が出来ない生活を長く送って来たから、お金が貯まっていくばかりだった。
だからリオは、気に入った洋菓子店に4か所に投資し、その利益を妖精のいる教会に寄付することにした。老舗の洋菓子店は株券は高価だったが、利益は一定しているし、時々お得意様へとお菓子も送られてくる。
ルナと子爵家に差し入れし、余った分は教会と教会へ付属している孤児院に持参し食べて貰った。
妖精のいる花壇にも、小さな籠に入れたお菓子を置いてきた。
「ルナを治してくれて、ありがとうございます」と呟いて。
妖精に良いも悪いもないと言うが、結果的に今はみんなが幸せだ。そして公爵家が支援していくなら、教会は不正もしないだろうと思ったのだ。
その後に何故か、投資先の洋菓子店が帝国御用達になったり、品評会で優勝して投資金が上昇していく。その利益を教会に寄付し続けていたら、年季の入っていた孤児院を建て直すことになったと、神父から感謝された。
私だけが寄付をしている訳ではないのに、何故だろうと思った。けれど隣国の侯爵令嬢が定期的に高額の寄付を行い、お菓子も差し入れていると噂になり、デバルム帝国の貴族達も寄付をしてくれるようになったらしいのだ。
自分の身分はルナから貰ったものだったから、そんな効果を生むとは思わなかった。でもそれで飢えることもなく、子供達が育ってくれるなら良いと思う。
そしてその日も、お菓子を妖精に差し入れしていく。
姿も声も聞こえないけれど、教会に懺悔した人達の悩みが時々解消していると言う。
ルナの言ったことを、妖精が叶えているのだろうか?
教会に来る人に、信心深くない人は来ない気がするから、物騒な願いではないことを祈るけど。
縁があってここに寄付をしたけれど、人々が笑顔になるならお金を持つことも悪くないと思った。だからこそ他国の文化を学び、自分の得意とする技術を提供出来る店を経営したいと思ったのだ。それが駄目でも視野が広くなれば、今後は何が必要なのかを考えられると思う。投資にも役に立つだろう。
貴族の矜持が解らない私だけど、役に立つならいくらでも使うことにしよう。絶対に家名を汚すことだけはしないようにとは思うけれど、ルナなら気にしないでと言いそうだ。
まあ、そんな訳で、旅をすることに決めたのだ。
旅行中の寄付は、一定の金額を銀行から教会に振り込んで貰うことにし、送られてくるお菓子は子爵夫人に託した。
そして私は、旅に出ることにしたのだ。




