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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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解けた祝福

 「オルドリン様、『ゴールデン・デリシャス・ロキ・マンゴス』が届きましたよ。たくさん送ってくれました」


 「おお、ルナさん。ご苦労様です。早速、調合に取りかかろう」


 「はい。よろしくお願いします!」



ポーションを飲んだ後、医師に診察を受けたオルドリンは、肺の病が完治していた。それには医師も奇跡だと驚いていたが、ポーションのことは話せないので誤魔化していたが。



そして今日、ルナ、リオ、ルアニート、ケイシーで、グンジョー公爵邸に訪れていた。

トレシは父親のグンジョー公爵には、祝福を消す薬のことは内緒にしていた。グンジョー公爵は祝福自体に興味がなく、体の弱い叔父を保護しているくらいにしか思っていなかったからだ。

普通いくらお金があっても、大叔父を保護するだけでも善良な部類に入る行為だ。これ以上は巻き込まないでおこうと、オルドリンはそう考えてみんなに伝えた。


苦労した成果なのにとトレシは悔しく思うが、所詮は当事者以外には関心が薄い研究なのだ。



◇◇◇

トレシが待っていたオルドリンの部屋に集まった一同は、椅子に座りその時を待つ。


地下で調合を終えたオルドリンが、部屋に訪れる。


「お待たせしました。先程、精霊使い様の鑑定も終わりましたから、安全性もバッチリです」


「安全性ですか? 有毒じゃないってことですね。効果は

別として」


「まあ、そうです。まずは安全第一ですから。でも、妖精の残した妖精紋を研究して、1つ1つを影響を打ち消す薬を作りましたから、効果はあるはずです」



残念ながら成功か否かは、ルナが飲んでみないと解らない。


ルナは覚悟を決めて、飲むことにした。

「材料を見せて貰ったけど、美味しい感じがするから大丈夫よ。一気にいくわ」


万が一に気を失うことを考え、ベッドに上がるように言われ、倒れても安全なようにクッションをたくさん置いてくれていた。


準備は整った。

ルナは必ず成功すると信じ、薬の入ったコップを口にした。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。



その直後ルナの体が光って、すぐ元に戻った。


「ルナ、大丈夫か? 気分はどうだ」

心配したケイシーが駆け寄り手を握る。


「…………うん。あんまり美味しくなかった。薬だものね」


薬は全部、『ゴールデン・デリシャス・ロキ・マンゴス』が届いてから作り直している。鮮度は十分なはずだった。


ズッコけるケイシーは叫んだ。

「味じゃなくて、体調を聞いたの。おまえは、いっつもそれだ。でも、なんか大丈夫そうだな」



けろっとしているルナに、取りあえず安堵した一同だけど、ケイシーを見る目が生暖かかった。


「まあ、若いって素敵」

「ルナってば、いつの間に恋人が? ずっと一緒だと思ってたのに」

「効果はちゃんとあったかな? 待機してくれている精霊使いの方を呼んできます。勿論、秘密は守ってくれますよ」

「キルスタン令嬢はもう婚約者がいるんですね。僕も頑張って恋愛しよう」


完全なる余談だが、グンジョー公爵家は特に政略をする必要のない家門だったので、トレシは婚約者がまだいなかった。


やんや、やんやと言われるも、ルナの耳に入るのは何だか恥ずかしくなる言葉ばかりだった。

そして泣きそうなケイシーは、ルナの手を握ったまま離さないでいる。


「もう、本当に平気か?」

「………私は大丈夫だよ。何かケイシー、酷い顔だよ」

「うるさいな。俺はイケメンの部類だよ。酷い顔なんて、口が悪いぞ。うっ、くっ」


とうとう泣いちゃった。

どうしたものかとそのままでいると、オルドリンと精霊使いが部屋へ訪れた。


「あらら。何だかほんわかしてますね。もう祝福が消えたことがわかってましたか? おめでとうございます」


「本当ですか? ありがとうございます、精霊使い様」とルナが言えば、

「ああ。精霊使い様、ありがとうございます、ありがとうございます」と、オルドリンがさらにお礼を重ねた。


「お礼は不要ですよ。よく頑張られましたね、オルドリン様」

「………ああ、良かったです。生きてきた甲斐がありました」



そのやり取りで、一気に部屋が歓喜に沸いた。

「良かった、おめでとう」と、ルナに声をかける前に、ケイシーはどさくさ紛れにルナに抱きついていた。


「ちょっと、ケイシー」

「良かった、良かったよぉ。ルナが死ななくて良かった!」

「………もう、良いよ。ありがとう、ケイシー」


驚いて怒ろうとしたルナだったが、涙でぐしゃぐしゃなケイシーを見て離れるのを諦めた。



そこに慌てた小さな妖精が現れた。


「ちょっと、何勝手なことしてくれたのよ。紫の瞳がなくなったら、もう長い時間を人間界で過ごせないじゃない!」


そう叫ぶ妖精に、オルドリンは言う。


「貴女の暇潰しの為に私の婚約者は死に、私も彼女も人生を狂わせられました。そしてルナさんは、お母様もお祖母様も貴女の祝福の意味を知らないまま、ただただ短い生涯を終えました。知らないところで無念になくなった方もいたことでしょう。

それなのに貴女は、まだ不満を言うのですか?

妖精とはそんなに邪悪な存在なのですか?」



オルドリンは今まで妖精に伝えたかったことを言い放った。今、妖精の力で死んでも後悔がないように、心に積もった澱をぶつけたのだ。


「邪悪なんて失礼ね。もう良いわよ、ケチッ」

怒る妖精に、ルナは言う。


「妖精が現れるのは、人間の瞳じゃないと駄目なのですか?」

単純に聞いてみたかった。

すると妖精は答えた。


「そんなことないわ。私は紫の宿る場所に顕現できる妖精だから、紫の部分がある生き物なら可能だわね」


人間の瞳じゃなくても良いのね。

じゃあ、顕現は可能かもしれない。

私はオルドリンさんに自分の考えを伝え、笑顔で了承を得た。


「ねえ、妖精さん。

紫のお花に宿るのはどうかしら? お花があればその周辺を動き回れるのでしょ? 教会に紫のお花を植えて、懺悔に来る人のお話を聞けば、気が済むのじゃないかしら? 面白いかは解らないけれど、苦悩する人がみたいなら毎日みられるわよ。誓約はなしで、本当に困った人に幸福を与えれば、貸し借りなしになるのじゃないかしら? どう? 花ならすぐに提供できるわよ。春ならヒヤシンス、夏ならアジサイ、秋なら桔梗、冬ならサイネリアなんて良いですね。1年中、出て来られるわよ」


命を奪われそうだったのに、何故か妖精に譲歩するルナ。その話に、妖精は嬉しそうに食いついた。


「良いの? あんたには何もあげないのに?」

「良いのです、私は。でも妖精さんも約束ですよ。一等不幸な人の話に、幸福を与えてくださいね。そうですね、月に1回くらいが良いですかね。期限がないと人間はすぐに寿命が来ますから」


さすがタダでは起きない女、ルナだ。

花を提供する代わりに、幸福を約束させた。

それも誓約はなしで。


ルナはちょぴり、妖精に悪いと思っていたのだ。

オルドリンの薬を作らなければ、何も思わなかったかもしれない。けれど薬は祝福のお陰で成功し、万能薬もまだ残っている。


なんだかんだ言っても、等価交換が基本のルナだから、この提案をしたのだ。

それにもしかしたら、妖精がちゃんと幸福をあげて幸せになる人もいるかもしれない。


紫の瞳で短命で亡くなった人達は残念だけど、母親(イッミリー)も祖母も最期まで懸命に生きたし、私の提案に駄目とは言わないと思うんだ。


オルドリンさんにも先に聞いたけど、精々こき使ってやりましょうだって。私の祝福が解けて吹っ切れたみたい。


と、言うことで。

教会の神父と、カトレイア造園商会のデバルム帝国支店担当のミリアに連絡を取った。


神父には、グンジョー公爵令息のトレシから話をして貰った。妖精の祝福のことについては半信半疑だったが、 “花を無料で植えて貰えるのは嬉しいです” と、植える許可を得た。


ミリヤにはルナから連絡した。

ミリヤは2つ返事で、すぐに植えに行きますと言ってくれた。そんなに急がなくて良いと伝えるも、私の為ならすぐに出来ると意気込んでいた。

料金の交渉をしようとしたが、いらないと固辞された。

たとえミリヤが死んでも、命の恩人の為だからと子々孫々にも手入れをさせると言ってくれた。


さすがにミリヤの孫にまで無体はさせられないので、月々の私の利益から天引きしてくれるようにして貰った。私が死んでも私の投資を引き継ぐ人に、同じように続けて頂こう。




私の母親イッミリーは、祝福のことはきっと知らなかった。でもきっと、私の性格で侯爵家に留まるより、外に出ていく方が良いと思って、目立ってしまう瞳を隠したのだろう。



「あれ、ルナ。おまえの瞳、緑になってるぞ!」

傍から離れないケイシーが、私を見つめてそう言った。



「当たり前じゃない。もう祝福はなくなったんだから」

妖精は陽気に伝えてくれた。


「そっか。ちょっと寂しいけど、長生き出来るんだもんね。良かった………」

嬉しいはずなのに、何故か涙が溢れた。


ああ、私。自分の瞳も、お母様の瞳も好きだったんだ。

アメジストの綺麗な瞳。お揃いの瞳。


嬉しいはずなのに、お母様を思い出して涙が止まらない。

そんな私の涙を、大きなハンカチでケイシーは拭ってくれたのだった。



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