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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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隠された秘密

 「北の国アイスグラウンドでは、昔から神話や伝承が多く残っていたんだ。最初に力を使った王妃も、その伝承に縋ったのだろう」



面積は多いが何もかもが氷つく時期が、1年の半分を占めるアイスグラウンドだから、人の住める場所も限られた場所だけで、大型の猛獣も生息していた。


そこを治める者の初代国王や側近達は、屈強な冒険者や魔法使いだった。大半が平民で、猛獣を狩る為だけにそこに住み着き、自然とリーダーが選ばれて国になったそうだ。


遠い昔の防寒アイテムや魔法道具も乏しい状態で、アイスグラウンドに当てもなく猛獣狩りに来るくらいの猛者だから、今とは比べ物にならない強者が揃っていたらしい。ある国では平民の扱いが馬や牛の様に酷く、国として正式に認められていないこの国に逃げ出した者もいたそうだ。


逃げて来るにしても相当な覚悟だった。

雪や氷に覆われて寒いので、作物を育てるのも一苦労だ。それだって寒さに強い作物が優先される為、芋類や根菜類中心で、麦や粟などは手に入らない。たんぱく質が欲しいなら、大型の動物や猛獣を倒すしかなかった。


最初に住み出した住人達の多くは、数年のうちに逃げ出すか亡くなるか、戦って生き延びるかを選択した。


その中で生き残った、戦闘に不向きな魔法使いや魔導師が、魔法で温室を維持し小麦や果物を作ることに成功した。


そのうちに魔道具開発も進め、温室や照明、コンロなどの実用品も作られるようになったのだ。


しかし住みやすくなり、国に人が増える程に貧富の差は広がっていき、国の利益に絡まない魔力や戦闘力の高い人達は他の国に流れて行った。


最初は生きるだけで精一杯だったのに。

状況は日々変化し、いつしか正式に国と認められた時、西のデバルム帝国が介入してきた。

政治的な繋がりを持つ為に、デバルム帝国の皇女を娶ることになったのだ。アイスグラウンド国内だけでは、これ以上の発展が難しいと感じた当時の国王は、それを受け入れ王太子妃に皇女を据えた。



過酷な自然で暮らす為、強い者はより強くなり、魔力のある者はさらに魔力が磨かれた歴史。その子孫達も強く能力を受け継いだ。王太子もまた剣技が素晴らしく、攻撃魔法も使える強者であった。



ある時、猛獣の群れが大量に村に発生した。原因は伝説と言われたドラゴンが、1000年の寿命が尽きる前に卵を産む為に現れ、猛獣が逃げて来たからだった。ドラゴンは多くの動物を屠り貪り、栄養を蓄えたドラゴンは卵を産んで力尽きた。


洞窟に隠されたドラゴンの卵は、どんな衝撃にも傷一つつかない。その瘴気により山の緑が枯れて朽ちていくのだ。


ドラゴンが卵を産んだ場所は本来誰もいない、ドラゴンしか来ない場所だった。緑が一時枯れようが十数年で復活していたのだから。


だがそこに人間が住み、緑や畑が枯れて困窮する住人は国王に願った。


「ドラゴンを何とかして欲しい」と。


国王になった元王太子は熟考した。

先住していたのはドラゴンで、我々が後から住み出したのだ。さすがにドラゴンの伝承は知っていた国王。先祖が冒険者だから、余計に伝承に詳しかったのかもしれない。


だから国王は言ったのだ。

「ドラゴンは先住者だから討伐は出来ない」と。


しかしその時には、ドラゴンのいる山を管理する貴族は、多くの領民と資金を持っていた。そしてその貴族の寄り子は国王を毒により暗殺することを命ぜられた。


徐々に弱っていく国王に、デバルム帝国から嫁いだ王妃は神に祈った。今、国王が死んでしまったら、1人になった王妃の後見をすると言って、デバルム帝国が容赦なく大勢の兵士と共に乗り込んでくるだろう。やっと占領の驚異がなくなったこの国に。


だから王妃は祈った。

「誰でも良いから、国王を回復させて欲しい」と。


暫くして姿を表した小さな妖精は、クスクスと笑いながら可愛い顔で呟くのだ。


「代わりに貴女が死んでも良いの?」


王妃は答える。

「国王が生きるなら、喜んで死にますわ。彼は己の身で敵を討つ強い人。世継ぎも生まれた現状で最も重要なのは、後継に教育を授ける国王が生き残ることです。それにつけ加えるなら、少々の犠牲が出ても彼の言う通り、ドラゴンに手を出すべきではないことは確かですわ」


「へえー、そうなんだ。すごいねぇ、人間は。自分の命を差し出すんだから。良いよ、儀式の仕方を教えてあげる。本当は即死だけど、2年くらい生かしてあげるし、王様に毒を盛った犯人も指さしで教えてあげる。じゃあ、始めよう!」


その場で魔法陣が描かれ、そこに置かれたポーション瓶の色が変わる。


「それを飲ませれば、王さま元気になるよ。毒だけじゃなくて、体の悪いところ全部治るから。そして毒を盛ったのは、あの女。命令したのは、そこの宰相って呼ばれてる国王の友達。他の奴はここにいないけど、宰相が知ってるみたいだよ。じゃあね、バイバイ♪」



魔法の効果はてきめんで、回復を果たした国王は侍女と宰相を地下牢に入れて拷問し、2人が白状したことで関係者が表面化した。


国王は国民に告げた。

「我々は人の住まないこの地に後から来た者だ。全てを奪って良いわけではない。傲慢になった先は破滅しかないだろう」


ドラゴンは(つがう)ものが居なければ、産まれない。当然のことながら、世界には少数の個体が存在する。少数故、その存在はテレパシーで伝わり大事に見守られる。もし誰かがドラゴンに手を出していたら、ドラゴンと餌の動物達以外の生物は、(つまり人間は)国ごと消されただろう。


危機一髪であった。


その後に首謀者だけを断罪し、他の住民はそこで暮らした。他国との交流も貿易も開始され、王子や王女も他国に嫁ぐことが一般化した。

自然が厳しいのは同様だが、厳しい環境を生きる為に強くなる兵士や魔法使いは多くなり、戦力の強化や政略に使われる人達も一定数いるのが現状だった。



国王を救った妖精の魔法は秘匿された。

一度きりの奇跡だと思われており、国王が飲み残したポーションは今でも時間停止魔法がかけられて保存されている。

王妃が死の淵に立った時、国王はポーションを飲ませようとした。けれど “自分には効かないと妖精に言われた” のでと飲もうとしなかった。

最初から死を覚悟していたのに、国王が元気になり王子が成長した姿が見られて、本望だと笑っていたと言う。



こうして終わりを告げた祝福と呼ばれた奇跡は、時々他国に嫁いだ者にも、この国にも現れることになった。妖精は契約しないと現世に留まれない。そこで契約者の血筋をたどり、妖精が面白いと思う(不幸渦巻く)家に紫の瞳を出現させ、その子が死ぬまで一緒に過ごすのだ。


妖精は基本、余計な行動はしない。

ただ紫の瞳を持つ者は、奇跡のポーションを作ることは出来るが、生命力の一番強い時期(20代)に死を迎えるのは一緒だ。

本来なら祝福を解除する方法をアイスグラウンド王家が研究するのが筋だが、まだ誰も作れない万能薬を作成する者をなくすことを躊躇っていたことと、他国に情報が漏れ紫の瞳の者を拐われることを危惧していたことで、いつしか万能薬のことは忘れられ、短命のことだけが知れ渡ったのだった。


オルドリンとトレシが知ったのは、昔の資料を必死に集め聞き取りをした成果だった。それでも全部がその資料に乗っている訳ではなかった。



◇◇◇

トレシについて行ったルナとケイシーは、公爵家にあるオルドリンの部屋へ案内された。そこには60代後半と思われる銀髪の紳士が床に就いていた。痩せ気味だが、シワも少なく美しくも優しい相貌だった。


「ああ、君も紫の瞳を持っているのか? 何てことだろう。ゴホッ、ああ、済まないね」


「おじさん、そんな場合じゃないだろ? 魔法陣を書いたノートを見せてよ」

「ああ、それはそこの机にあるよ。ルナさんごめんよ。本当は薬が出来てから話すつもりだったのに」


自分が不調にも関わらず、こんな時まで人の心配をすることに、ルナのやる気はマックスだ。


「何の、何の。私の方こそ、祝福を解く薬を作って貰って済みません。ガンガン頑張ってきます!」


共に付き添うケイシーは、ただハラハラするだけだ。

彼は公爵に頼んで、2人の護衛に入れて貰っていた。

(命の危険はないんだよな。何処まで伝承がちゃんと伝わってるかも解らないのに。本当に平気なのか?)


そんな気も知らないから、ルナは畳み掛ける。


「どうせなら、大量のポーションを作りましょ。駄目そうならもう一回やるから。肺の病気って治りにくいって聞くし、続けて飲めるようにした方が良いと思うの」



その言葉にトレシも納得する。

(そうだよな。何度もルナさんを呼び出せないし、たくさん置いちゃおうか!) そう、トレシもルナと同族(大雑把)だった。今日はポーションの鑑定をして貰う為に、精霊使いの方も一緒だ。


「では、お願いします」


そう言うトレシは、魔方陣を描いた上に5Lの水瓶を2つ置いた。

伝承で置かれたのは、1Lだったのに。


ルナは頷き、そこに手を(かざ)す。

「病を治せ」と、肘をピンと伸ばし元気良く叫んだ。


すると目映い光が部屋を満たし、光がパチパチと弾けるポーションが出来上がったのだ。


「うわあ、すごい。伝承は本当だったんだ」

嬉しさで呆けるトレシに、ルナは声をかけた。


「トレシさん、早く時間停止魔法をかけて貰って。薬の効果が落ちないように、早く!」


「あ、ああ。対象は2つの水瓶。時間よ、止まれ!」


波打っていた水瓶の表面は、精霊使いの言葉でその状態で停止していた。

毒性はなく仕上がっていると言うが、万能薬かは判定出来ないと言う。



「では、コップに入れた分を、おじさんに飲ませて来ますます。ありがとう、ルナさん!」


部屋へ駆けて行くトレシの後を、ルナとケイシーも追う。


「ルナ、体は大丈夫か? 疲れとか、痛みとかはないか?」

心配を隠さないケイシーに、ルナは力こぶで答えた。


「何でもないわ。何も無さすぎて、本当に薬が出来たか心配なくらい」

余裕な笑い顔に、ほっと息を吐き出すケイシー。



「いっつもお前は直感で動くんだから。少しはゆっくり考えろよ。俺一人で、胃をキリキリさせて馬鹿みたいだろ!」


いつも以上に感情が乗る言葉に、ルナは冗談まじりに言う。


「惚れた弱味だね。可哀想に」


冗談のつもりだった。

けれど…………………


「そうだよ。いつも心配しているし、目が離せない。言っておくけど、俺はロリコンじゃないからな」


「……………………っ、えっ! 本当に」




ミイラ取りがミイラになった瞬間。

咄嗟の出来事に言葉が出なかった。





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