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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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逃亡するアメリア

 「あいつら、本当にしつこいわね。もうバンバンやっちゃってくださいよ。お金なら出しますから。オーホホホッ」


「「「了解、アメリア!!!」」」



アラキュリ侯爵夫人アメリアと、ジローラムの双子の弟グリーニーは、傭兵ギルドから魔法使いマーディ(女)、剣士モリーバ(男)、格闘家デペン(男)の3人を雇い、目下馬車で荒野を駆けている最中。


グリーニーも元諜報員だけあって強いが、今はアメリアの雇った護衛に守って貰い、悠々自適な旅路を楽しんでいた。


彼女の父であるダニーラル・ウィスラル公爵は、虫の息であるが、誰の指示だか命を狙われている2人は逃亡とは名ばかりの旅行中だった。



ウィスラル公爵亡き後は、アメリアの異母兄ウルゴスが公爵家を継ぐ予定だが、彼が殺し屋を雇うとは思えない。

「さんざん苛められたけど、彼の場合は母親が可哀想だと言っての行動だったのよね。あの親父(ダニーラル)は、正妻も私の母のことも道具のようにしか思ってなかったんだけど、ウルゴスは融通が利かない堅物で、父親の女癖とか汚職とか大嫌いな、潔癖野郎だったからさ。


私が結婚してからは絡んで来なかったけど、親父がくたばりそうになってから、ホッテムズ伯爵が行き来してるみたいだから、いろいろ大変だと思うのよね。


あいつ(ウルゴス)真面目だから、本当のこと知ったら爵位返上するかも。あいつ(ウルゴス)は汚いことが嫌いだから、私がクソ親父の手駒にされたんだよね。

いい迷惑よ、全く。

でもさ、降爵しても、頑張って領地治めて欲しいんだよね。あいつ領民には好かれてるからさ。良い当主になれると思うんだ」


なんて幌馬車の荷台にグリーニーと肩を寄せて座るアメリアは、穏やかに異母兄のことを語る。


「何それ、妬けるね。本当は好きだったんじゃないの?」


冷やかすグリーニーは、彼女の手を握りニヤニヤしていた。


「馬鹿ねえ、そんなことないわよ。ただいつも正論は語ってたわね。侍女やメイドが、私達母子にいい加減に接したら、「我が公爵家を愚弄するのか? 手首を切り落とされたいかって」怒ってさ。みんな大慌てよ。家族と使用人は別ものだってことよね。面倒くさい男なのよ」


そう語るアメリアは、やっぱり懐かしそうだった。


「俺もジローラムと、そんな風に喧嘩したかったよ。最後まで俺は、あいつの奥さんを奪う憎まれ役だな。双子に生まれただけで迷惑かけたのに」


寂しそうに笑うグリーニーに、アメリアは頬をくっつけた。

「あんたは悪くないわ。双子が不吉なんて迷信だもの。そんなことで捨てた家族なんて、気にすることないわ。

………それにそれを利用して、あんたを引き取って諜報員なんかにして、逆らえなくしてさ。私と子供まで作らされて、あんた十分不憫なめにあったんだし。もう気にしなくて良いよ。私が許す!」


「ああ、優しいなアメリアは。俺はね、お前に会えて幸せだよ。こんな美人で良い女、世界中探してもいないぜ。愛してるぞ」


「もう、恥ずかしい男ね。ふふふっ」


満更でもないように照れるアメリアは、可愛らしく笑った。



グリーニーはダニーラルに引き取られた時、グリーニーを捨てた両親やジローラムを恨むように、憎しみを煽る洗脳を受けていた。だがそこにいたアメリアと出会い、交流を重ねるうちに人間性を取り戻していったのだ。


(さすがにアメリアと子供を作ることになった時は、複雑な気持ちになったが、ずっと好きだったから受け入れてしまった。アメリアからも好きだと言われて、運命だと思ったのは秘密だ。………それに、アルオ(息子)が利用される前に、ダニーラルがくたばりそうで良かった。出来れば何も知らずに、幸せになって欲しいからさ)






◇◇◇

そんな2人に、馭者席から声がかかる。


「アメリアさん。追っ手はぶっ飛ばしたわよ。ただ、動きながらだから、ホーリーアロー(聖なる矢)撃ちまくって、矢がだいぶん減っちゃったわ」


「OK、OK。良いのよ、お金ならあるから。ケチったりしないで、安全に戦ってよ」 


(ここでのホーリーアロー(聖なる矢)は、矢に魔力を乗せて、悪意ある者の方へ飛んでいく仕様。無の境地を極める者以外に効果は絶大)



もうこの3人の護衛とは、20日以上を共にする間柄。

下調べなしで、アメリアの勘で選ばれし3人。


こちらの条件は南の国までの護送。

1人、1日金貨5枚で、『メシャーベル・アイランド』に着くまでの契約。


事前に貴族から逃げる危険な仕事とは伝えてあるが、何処まで付き合って貰えるかは解らなかった。でももう、昔からの友人のように心を許していた。


彼らも以前から南国に行きたかったが、路銀がなくて貯めていたそう。マーディの祖父母が南国の出身で、駆け落ちで王都に来たらしく、昔話で聞いた湖を見たくなったそうなのだ。モリーバとデペンは兄弟で、モリーバがマーディの恋人だ。彼らもその湖を見たいそうだ。



南国は、 青く輝く “ローレライ湖” と豊かな大地のある暖かい地。

ただし王都から、かなりの距離があると有名なのだ。

一部の金持ちしか遊びに行けない、夢の行楽地とも言われていた。


その名に恥じず、宿屋に泊まり馬車に乗るを繰り返してもまだ道半ばで、後30日で着くかも怪しい。




そもそもこの旅に出たのも、あからさまに暗殺者に狙われ出したのが原因だ。それはアメリアだけじゃなくて、グリーニーもだ。一緒にいる時も単独でも、複数の暗殺者が街中で狙ってくる。なりふり構っていない状況に、2人とも腹を決めた。


「「うん、逃げよう!!!」」


暗殺者が大っぴらに現れたのは、ダニーラルが病床についてからだ。(ダニーラル)と私腹を肥やした奴等が、一番の生き証人のアメリアを潰しにかかったのだろう。たぶん寄り子のチャーク伯爵と、スデンク子爵辺りだと思う。


仮にも公爵(ダニーラル)の実娘なのに。


まあ。公爵(ダニーラル)の態度を見て、対して大事にされていないと思ったのかも知れないけどね。


それ、正解だし。



と言うことで、傭兵雇って10日後くらいに、ジローラムに手紙を送ったのよ。そこからなら住所も特定されないでしょ? 通り道だし、そこから配達するにも何日もかかるし。

元々私は家にも居なかったし、アルオにはニクスもナジェールもいるから、大丈夫でしょ。


私は生きるわ、第二の人生。

愛するグリーニーとね。





「だけど、良いの? 私達はメシャーベルに近づく程儲かるけど、アメリア達はかなりの出費よね。1日金貨15枚だもの? 大丈夫なの?」


「良いのよ、大丈夫よ。それにお金なんて、そこに着けばなくても働くから。生きていれば愛する人と一緒にいられるもの。だ・け・ど、何故か腐る程の資産家だから、本当に心配しないで」


余裕で微笑むアメリアに、グリーニーも苦笑いしている。


「2人分の人生を賭けた退職金だから、白い家を建てて犬を飼って可愛がる前に死んでられないわ」


そう言ってグリーニーに抱きつくと、彼も彼女に手を回して、優しく引き寄せた。



ここまで来るまでに、暗殺者やら私軍やらを相手に全員で戦った。アメリアも時には拳銃を構えて、近づく刺客の眉間を撃ち抜くこともあった。「そこまで行かせるつもりはなかったのに!」と、心配して泣く男を置いていけないので、さらに精神的に強くなるアメリア。


彼女は今、最高にイキイキとしていた。




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