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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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19/56

レストランのプレオープン

 本日は、お世話になった方々を招くプレオープン。

雲一つない青空で、爽やかなそよ風も吹く気持ちの良い日だ。


店名は『オルヴォワール』になった。

(オルヴォワールの意味は、再会とかおかえりなさいだ。ぴったりでしょ?)



レストランでは朝早くから材料を仕込み、今か今かとお客様を待っている。レースのカーテンが揺れる店内に、ドアベルが綺麗な音を奏でた。


「カラン、コロンッ♪」


約束の時間になると、続々と招待客が入店してくる。



「お呼び頂きありがとう。楽しみにしていたんだよ」

「わ~、本当に素敵なお店ね。まあ、電気式蓄音機もあるの? なかなか手に入らないのに、よく手に入れたわね。うん、良い音色♪」

「本当にご立派になられたわ、お嬢様。このエイミー、本望で御座います」

「遠いなかご足労頂き、ありがとうございます。是非楽しんで下さいね」

カーテシーは敢えてせず、深々と頭を下げた。

今日はあくまでも給仕役なので。

後ほど領地に行った際に、改めてお礼を述べようと思い、今日は軽めのご挨拶に留めた。お世話になりっぱなしですね。いつもありがとうございます。



室内にはピアノ曲が優しく流れ、木目調の店内の雰囲気と相まってゆったりとした気分になれる。


「お料理楽しみにしていたの。たくさん食べるわよ」

「短期間の準備で、よくここまで出来たね。制服もお洒落じゃないか? 外注? え、リオルナリー様の手縫いだって? それはすごいな」

「旨そうな匂いだ。おっしゃあ、食べるぞぉ!」

「ふふっ。お褒め頂き嬉しいです。コース料理なのですが、ご希望であればパンとサラダはたくさんありますので、申し付け下さい」

人により、料理のボリュームを変えてはいるが、騎士にはコース料理は物足りないかもしれない。そう思い、大量にパンを焼いて貰っている。余ったらお土産にしよう。


ホッテムズ伯爵夫妻と、侍女、護衛達は、少し早めに到着していたが、時間まで楽しみにすると言って、馬車で待機していたのだ。




「ルナさん。私達まで呼んで下さるなんて、ありがとうね。今日は新作の、数種類の花の香油を持って来ました。是非プレゼントさせて下さい。こちらの方がお世話になってますよ」

「ルナお嬢様、開店おめでとうございます。私まで呼んで頂けて嬉しいです。素敵なお店ですね」

「こちらこそ、いつも助かっています。お花もとても綺麗で、お店を華やかにしてくれました。香油は後ほど、この店での売買をご相談させて下さいね」

そして礼をして、仲の良い父子に微笑んだ。


カトレイア造園商会店主エクリストと娘ミリアは、リオルナリーが関わって以来、毎日忙しく走り回っている。ワンマン経営と言われ、口を出されることを嫌っていたエクリストは変わった。人の意見を聞き入れ、どんどん新商品を開発している。

最近は余った花(形の悪いものや育ち過ぎのもの)の花びらを纏めて搾り、香油や化粧水作りに着手しているそう。これも女性陣(じょせいじん)の意見から取り入れたようで、以前より団結力があがったみたい。

今度は、家族で来てくれるそう。

店の前の花壇も、室内の植木や窓辺やテーブルの花瓶の花も、この日に合わせて準備してくれた彼らなのだ。


色とりどりの植物は、とても元気が出る。 



「今日はありがとうございます。

あのぉ。私達ったら、場違いじゃないですか? 大事なお客様なんて、そんな。それでは、家の野菜達を楽しませて頂きますわ」

「き、緊張します。そんな俺達がいないと始まらないなんて、嬉しいこと言ってくれるね。こっちの方が数倍ありがたいと思ってるのに」

「本当に感謝しております。

お二人と出会わなければ、このレストランの発想は出ませんでした。実際に頼ることばかりですしね。これからもよろしくお願いします」

深く礼をして感謝を述べる。いつも王都までは仕事でしか来ないと言うお二人に、ゆったりと過ごして欲しいと思うの。初対面の時も、私みたいな子供を信じてくれてありがとうございます。


言わずと知れた秘密兵器、アンマンとユリーナご夫婦。甘い果物と美味しい野菜の農家さんだ。ケーキじゃなくて、果物だけでも甘味に満足できる安心感。注文野菜が自宅にない時は、周辺農家さんから買い付けてくれる親切さ。ホッテムズ伯爵領と提携し、独自アイスやシェイクを作り出しており、特別にここにも販売してくれる手筈だ。 




「ルナ様、私にまでお声がけ下さるなんて。今後も便宜を図りますので、よろしくお願いします」

「本当にお世話になっています。せめてものお礼ですので、楽しんでくださいね」

頭を下げると、下げ返してくれていた。いつもの企んだ顔はしておらず、素直に喜んでくれた。 “同伴されたい方がいればお連れください” と伝えていたが、(リオルナリー)が時々声をかけてくれれば嬉しいと言うので、従うことにした。私の秘密がバレないように、気を使ってくれているのかもしれない。


初手からお世話になっている銀行頭取、ビル・シュバイツ。仕事と言えば仕事上の付き合いだが、いろいろ優遇して貰っているのでお呼びしたのだ。思った以上に動いて貰ってるしね。



一応全員に直接聞いたのだけど、絶対来ると返答してくれたので、強制じゃないのよ。



こんな感じでお世話になった方を呼んで、おもてなしのプレオープンを開始した。

あと追加として、ルナは少額を出資しただけでオーナーは “ルメンド” だからと、ホッテムズ関係以外の人には説明した。


あまり話が大きくなるとメイド業務に支障がある為、 “制服を作ったりお手伝いが主 なのだ” とみんなに強調すると、暖かく “他言しないです” と約束してくれたのだ。


どうやら訳あり令嬢だと理解してくれた模様。

事情を知らない人は、 “リオルナリーが貴族の庶子か何かで、目立って店主と名乗れないのだろう” と理解してくれたようだ。

まずはOK。

まあバレても、ルナとして活動しているので、実家の援助があると思われるだけだろう。実際平民にだってお金持ちは多いからね。




◇◇◇

パンは3種を用意し、

小前菜・前菜・ポタージュ・魚料理・ 氷菓・肉料理・デザートと、順番に食事を運び食してもらう。

メニュー表にはフルコース以外もあるけど、今日は料理の感想を聞きたいので、コース料理で設定したのだ。



ゆっくりとした、いつもと違う時間を感じて貰えるように、正装した6人で料理を運んでいく。今日はリオルナリーも、制服で配膳している。昼間なので、間接照明のようなロマンチックさはないが、食事は楽しんで貰えたし雰囲気も合格点のようだ。


みんな満足げに、また来たいと言ってくれた。材料も最高なので値段はわりとお高めだが、ランチ価格は良心的だと思う。夜間は2人で銀貨1枚くらいだけど、日中は銅貨5枚くらいにしたから。


ただ夜の営業時間は暫く様子見で、日中18時までと考えていた。

勿論定休日もあるけど、年齢的にも人数的にも難しい。新人を雇うにしても教育が必要だと思うし。



「「「「美味しかったよ。ご馳走さま」」」」

お客様が帰った後、表にクローズの札をかける。

片付けをしてからみんなの晩餐の準備をする。今日はホールで食べることにした。



「おつかれさまです」「おつかれさまです」と、言い合いながら、料理をテーブルにどんどん運んでいく。


大皿に料理を入れて、小皿で好きな量を取り分けた。

ジュースやワインで乾杯をしてから、いざ実食。

どれも美味しくて、みんなが笑顔になる。


「お嬢様、お疲れになりませんか?」

「ルメンドこそ、大丈夫? ずっと立っていると辛くない?」

「まだまだ若い者には負けませんし、久しぶりに背筋が伸びましたわい。ほほっ」

ルメンドの余裕な感じは嘘ではないと思う。

元気で良かった。制服も似合うよ。



「ナジェルダは一人で大丈夫? 大変だったでしょ?」

「いえいえ、お嬢様。予め準備が出来ているので、やり易かったですよ。貴族のパーティーよりも楽でした。ははっ。………それに楽しかったです。ありがとうございます」

「そう、良かった」

ふふっ、ナジェルダも大丈夫みたいね。

コックコートが少し緩そう。でもきっと、これからもっと健康的になると思うから大丈夫よね。


「俺は運ぶ度に食べたくなったよ。旨そうでさ」

そう言ってガツガツと食べるカイルアンは、 “ウマイ” と美味しそうにかきこんでいた。

味わって食べた方が………まあ、良いか。

頑張ったもんね。お疲れ様。



アカザ・テレーゼ・マリーは、何でもないように、ゆったりと食事をしていた。疲れもなく、 “これぐらい、軽い” という感じだ。そりゃあそうか、あの忙しい侯爵家でしれっと動ける人達だものね。


「お嬢様、配膳時の背筋の伸びが今一つでした」

「そうですね。その方が歩いた時に美しいですわ」

「はい。気をつけます」

「マリーも慌てないように。ここのコンセプトは、いつもと違う優雅なひとときでしょ? 私達は空気に徹するのですよ」

「優雅な空気?」

「そうよ。店の一部のような、目立たないようなね。お客様が主人。主役になるのですから」


「「「はい。テレーゼ先生」」」

「何よ、アカザまで。ふふっ」

「くすっ、何ですか? 先生」

「へへへっ」

「ふふふっ」


大笑いじゃなく、優雅に微笑んだ “ひととき” でした。



その後のオープンでは、私達が宣伝しなくてもプレオープンに招いた人達の口コミで店内が賑わった。

早く夜間帯の営業もして欲しいと、多くの人から希望が上がっていた。



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