第五十四話 領主様の屋敷へ出発します
そろそろ迎えが来る時間なので、私たちは冒険者ギルド内で他の人たちが来るのを待ちます。
着替えは屋敷の中で出来るそうなので、ドレスなどは魔法袋の中に入れています。
そうこうしているうちに、参加者が集まり始めました。
「マイちゃん、お待たせ」
「ジェフさんとアクアさんも、着替えを持ってきたんですね」
「前に別件で領主様と会ったことがあるのよ。気さくでとても良い人よ」
ジェフさんとアクアさんは、この街の領主様にあった事があるんだ。
流石は一流の冒険者ですね。
更に、幼馴染三人組もやってきました。
「あれ? 荷物が少なくありませんか?」
「えへへ。マナちゃんが魔法袋を持っているから、着替えを入れてくれたの!」
「魔力が少ないのでそんなに沢山の荷物は入りませんが、やはり魔法袋があるととても便利です」
うーん、マナさんは優秀な魔法使いだから、沢山の荷物を運べると思ったけどそうじゃないんだ。
ちなみに、カナさんは直ぐにお気に入りのタマちゃんに抱きついていました。
「マイは魔力が膨大だから分からないと思うが、魔法袋があっても荷物を沢山収納できない魔法使いは非常に多い。それでも、魔法袋があるとないとでは全然違うぞ」
トールさんは冷静に分析していたけど、どうも私の魔力量はかなり膨大らしい。
ついでに言うと、グミちゃんも相当な魔力量を持っているという。
トールさんに褒められて、グミちゃんは私の肩に乗って謎の踊りをしているけど。
「おっ、全員揃ったな」
そして、ブライアンさんが姿を現しました。
おや?
これで全員って事は、参加していない人がいますね。
「ケイは元々遠征の予定があって、他の冒険者と共に別の街に行った。ギルドマスターは領主と顔見知りだし、堅苦しいのが嫌いだからって逃げたぞ」
予定のあったケイさんはともかくとして、ギルドマスターの断る理由が酷すぎる。
もう少しオブラートに包んで伝えているのだろうけど、確かにあのギルドマスターがスーツを着ている姿が思い浮かばないよ。
「俺も堅苦しいのはあまり好きじゃないのだが、お前らのお守りも兼ねて出ることになった。着替えるのも面倒くさいからそのまま行こうとしたが、フレイにきちんとした服を持って行けと言われたぞ」
ブライアンさんもギルドマスターと似たことを言っていたけど、そこは副ギルドマスターが上手く押さえたのか。
ブライアンさんも荷物が多いのは、きっと服を持っているからですね。
このタイミングで、この前も会った執事さんが冒険者ギルドに顔を出した。
「皆さま、お待たせしました。馬車のご用意ができております」
私たちの出迎えまでしてくれて、本当に大変ですね。
そして、外に出るとビックリする光景が。
「あの、豪華な馬車が二台ありますよ……」
「そりゃ、人数も多いし歩きで屋敷まで行く訳にはいかないだろう」
私の呟きに、ブライアンさんが当たり前の事だと返してきた。
いきなりこんな豪華な馬車が目の前にあると、とっても緊張するんですけど……
「じゃあ、私はこっちの馬車に乗ろうと」
「アオン」
「おいこら、勝手に動くな!」
カナさんがタマちゃんと一緒に馬車に乗り込んで行ったけど、あんなにポジティブに動けるなんて私には羨ましいです。
結局一台の馬車には幼馴染三人組とタマちゃんが乗り込んだので、残りのメンバーがもう一台の馬車に乗り込みました。
うん、馬車の中もとっても豪華な作りで、シートもふかふかだった。
私は恐る恐るシートに腰掛けます。
「では、出発します」
こうして屋敷に着くまでの少しの間、私はガチガチに緊張しながらシートに座っていました。
他の人は平然としていて、とっても羨ましいと思いました。




