第三十話 初めて会う冒険者と夕食
三人組が歩けるまで回復してから、兵が三人組を連行していきました。
やりすぎちゃったのか、三人組はかなり怯えた表情で私のことをチラリと見ていきました。
「マイが気にすることじゃねえぞ。奴らは、マイに殺されても文句を言える立場じゃなかったからな」
そんな私の心情を察したのか、ブライアンさんが私とタマちゃんの頭をポンポンと撫でながら話してくれました。
ブライアンさんのお陰で、私の心は少し落ち着きました。
すると、ブライアンさんと共にいた一人の女性が何故かキラキラした目で私の事を見てきました。
「わあ、君ってとっても強いんだね。それにマナちゃんも魔法使いなんだけど、君も魔法使いなんだ。すごーい!」
「え、えーと、その……」
「ワフゥ……」
金髪のボブカットでスタイルも良く、とても人懐っこい感じの女性なんだけど、ちょっと残念な感じがする。
女性のあまりの勢いに、私も抱いているタマちゃんもちょっと引いちゃいました。
そんな女性にキツイ一撃が。
バシッ。
「いたー! トールちゃん何をするの!」
「カナ、お前はまた暴走しやがって。何回言えば分かるんだ!」
「そうだよ。いきなりお姉ちゃんが話しかけたから、この人とコボルトちゃんが戸惑っちゃったよ」
青髪にバンダナを巻いた男性が、暴走した女性の後頭部にチョップをしていた。
更に金髪のロングヘアで胸の大きい女性が、暴走した女性をたしなめていた。
ロングヘアの女性は暴走した女性を姉と呼んでいたが、確かに二人とも金髪で顔がそっくりだ。
「ほら、マイが戸惑ってるぞ。食堂に行くから、そこで自己紹介をしろ」
「はーい」
ここは、ブライアンさんが大人の対応でしめてくれました。
私も、肉体的疲労よりも精神的疲労のためにかなりお腹が空いています。
私は、グミちゃんを抱いている副ギルドマスターに話しかけました。
「す、すみません。この後、何かやる事はありますか?」
「マイちゃんがする事は、特にないわよ。あの人が面倒くさい事を押し付けて、逆に私達がマイちゃんに謝らないと」
副ギルドマスターからは、逆に謝られちゃいました。
元はといえば、ギルドマスターが私に新人冒険者向けの講習を押し付けたのもあります。
私も、ちょっとやりすぎちゃったところはあったけど。
副ギルドマスターからグミちゃんを受け取って、私はブライアンさんの後をついて行きながら宿兼食堂に向かいました。
「はー、お腹空いちゃった」
「カナ、もう少し待っていろ。自己紹介が終わったら、夕食にするから」
「はーい」
席に座ったブライアンさんが私に絡んできた女性をたしなめているけど、何だかしっかりものの父親と手のかかる娘って感じです。
ともかく、お互いに自己紹介をしましょう。
「はじめまして、私はマイと言います。十二歳で、一週間前に登録をしたばかりの新人冒険者です。そして、スライムがグミちゃんでコボルトがタマちゃんです」
「アオン!」
「わー、パチパチ」
最初に私達が自己紹介をすると、私に絡んできた女性が上機嫌で拍手をしていた。
そして、そのままその女性が自己紹介を始めた。
「私はカナ、十五歳だよ。マナちゃんとは双子で、トールちゃんは幼馴染なんだ。マイちゃん、宜しくね!」
とても明るい性格のカナさんは、剣士タイプの冒険者。
ニコニコしていて、天真爛漫って表現がピッタリの女性です。
「私はマナです。カナちゃんとは双子で、私は妹になります。あと、水タイプの魔法が使えます」
カナさんとは対照的に、マナさんは大人しく落ち着いた女性です。
水魔法が使えるそうなので、どんな魔法を操るのかとても興味があります。
「俺はトール、この双子と同じ村の出身で十八歳になる。ある意味、コイツラの保護者だな」
トールさんは身軽なダガー使いなんだけど、性格はとても真面目な人っぽい。
もしかすると、苦労する幼馴染を持った影響なのかもしれない。
「コイツラは冒険者登録をしてまだ一年だが、中々の有望株だ。既に、様々な実績を積んでいるぞ」
あのブライアンさんが褒めるだけの実力を持ったパーティーなんだ。
幼馴染ならではのコンビネーションとか、色々とありそうです。
というか、いつの間にかタマちゃんがブライアンさんのところに移動していました。
ブライアンさんは優しい人だし、タマちゃんも懐いたのかもしれません。
そんなブライアンさんが、トールさんにとある確認をしていました。
「トール、遠征帰りだから明日は色々とやる事があるだろう。明後日、マイを連れて森に行ってくれや。三人の目からマイがどう見えるか、ちょっと教えてくれ」
「分かりました。俺も、明後日の方が助かります。明日は、消耗した物とかを補充したいので」
おお、初めてのパーティーでの活動だ。
グミちゃんもこういうのは積極的にやった方が良いと言っているし、タマちゃんもやる気満々です。
「さて、話はこのくらいにしておくか。お腹ペコペコな奴が、かなり不貞腐れているからな」
「そーだよ、お腹ペコペコだよ!」
ブライアンさんが苦笑しながらカナさんの事をたしなめていたけど、私も今日は色々あったのでお腹が空いています。
取り敢えず、明日も一日薬草採取をしようと。
「ああマイ、明日の午後は空けておけ。ボーガンが書類整理を頼みたいんだとよ」
「あの、何で私がギルドマスターの書類整理をしないといけないんですか?」
「明日、フレイが領主様のところに行くから一日不在なんだとよ。ハイナもつけるってさ」
私は何でギルドの仕事をしないといけないかと思いつつ、ガクリとしながら夕食を注文していました。




