第二十九話 お仕置きタイム
だが、私のやる気のなさも三人組が自ら打ち破ってくれた。
「あのねーちゃん、若い割には美人だな。貧乳だけど」
ぷっちーん。
どうしてこの街の馬鹿な男は、揃いも揃ってデリカシーがないんだろうか。
前世では、絶対にセクハラで捕まっていたはずだ。
ヘラヘラと笑う三人組に対して、私の怒りの炎がメラメラと燃え上がっていった。
「ギルドマスター、ちょっとお仕置きしても良いですか?」
「やりすぎない程度にな。まあ、マイなら骨折くらい簡単に治せるだろうが」
私と三人組の間にやってきたギルドマスターに質問したけど、ギルドマスターも苦笑しながら答えてくれた。
体型を馬鹿にした上に報酬を奪い取ろうとしたし、ここはキッチリと反省して貰わないと。
「それでは、新人冒険者向けの講習の実技を始める。始め!」
「「「うらあー!」」」
ギルドマスターの開始の合図に合わせて三人が短刀を手に突っ込んできた。
でも、動きが遅いので難なく避ける事ができます。
ひゅん、ひゅん。
「くそ、何で当たらないんだよ!」
「どうなっているんだ」
「相手はちびのガキだぞ」
最初は余裕の表情だった三人組だけど、私に短刀が一向に当たらないのでかなり焦ってきています。
あと、私はちびだけどガキではないよ。
さて、そろそろ良いかな?
私は、三人の攻撃を避けながらチラリとギルドマスターをみました。
ギルドマスターも、小さくコクリと頷きます。
では、やっちゃいましょうか。
「クソが!」
ガシッ、ブオン。
一人が短刀を突き刺してきたので、私はそのまま相手の腕を取って地面に投げつけます。
ドサッ!
「ぐはぁ!」
引き手なしでぶん投げたので、男は地面に背中を叩きつけてうめき声を上げました。
一瞬にして、戦闘不能になります。
その瞬間、残りの二人の動きが止まりました。
私は、その瞬間を逃しません。
「せい!」
ブオン、バキッ!
「がはっ」
続いて、男の脇腹に回し蹴りを打ち込みます。
骨は折れていないだろうが、それでも男は痛みで地面に膝をつきました。
残りは一人です。
貧乳といったお礼を、たっぷりとしてあげないと。
焦った男は、やみくもに短刀を振り回しました。
「くそくそ、くるな!」
ブンブン。
最初の威勢の良さはどこにいったのやら。
男は、背の小さい私を見てかなり怯えています。
ヒュン、バシン。
「があ!」
私はタイミングを合わせて男の腕を蹴り上げて、短刀を弾き飛ばします。
男は、私に腕を蹴られた痛みで反対の手で蹴られたところを押さえています。
でも、これで終わりではありません。
だっ、ブオン!
バシーン!
「うがぁー!」
ジャンプして、私は男の顔の側面を蹴りつけます。
男は、蹴られた痛みのあまりに地面に転がりました。
「そこまで。お前ら酷いダンスだな。短刀の使い方以前に、体の使い方がなっていねーな」
「「「うっ、うぅ……」」」
ギルドマスターは、地面に転がる三人にかなり厳しい事を言っています。
正直な事をいうと、三人はイノシシやオオカミに殺されるレベルです。
よく、そんな実力で大口を叩けるよ。
でも、お仕置きはまだ終わりません。
シュイーン、シュイン、シュイン。
「「「はっ?」」」
私は天に向かって右手を突き上げ、手のひらに魔力を溜め始めました。
私の足元に複数の魔法陣が発現し、右の手のひらに魔力の塊が出現しました。
そして、段々と魔力の塊が大きくなっていきます。
「おいマイ、何をしているんだ!」
「何って、もちろんお仕置きですよ?」
「「「へ、へあ!」」」
焦った表情のギルドマスターが私に質問をしてきたけど、私はニコリと返答しました。
三人はようやく何が起きているのかを把握したけど、ダメージが大きくてその場から動けません。
その間に、私の手のひらにできた魔力の塊は一メートルくらいの大きさになり、段々と光が増してきました。
「私、凄く怒っているんです。平然と人の得た報酬を嘘をついて奪い取ろうとしたし、人の気にしている容姿をけなしたんです。大した実力もないのに、自分は強いと勘違いしているみたいですから。うふふふ……」
「「「あ、あわわ……」」」
私が黒い笑いを漏らすと、三人は口をパクパクとしながら何とか逃げようとしていました。
しかし、未だに体が動かないみたいです。
では、反省して貰いましょうか。
私は、手のひらに集めた魔力を空高く放ちました。
ひゅーーーん、ズドーーーン!
「「「うわっ!」」」
空高く放たれた魔力弾は、空中で激しく爆発しました。
爆発の衝撃で衝撃波が発生し、訓練場にいる人を襲いました。
「「「あ、あわ、あわわ……」」」
「私、あなた達の様な犯罪者にはなりたくないので。でも、いつでもあなた達を塵も残さず消し去る事ができますよ」
ニコリと良い笑顔で話をしたら、三人は怯えた表情で顔を引きつらせていました。
うーん、ちょっとやりすぎたかな。
ギャラリーも、私を見てかなり引いているよ。
「ギルドマスター、このくらいで良いですか?」
「あ、ああ、良いだろう。ちょうどお迎えも来たみたいだしな」
ギルドマスターも若干引きつった表情だったけど、直ぐに表情を引き締めて訓練場の一角を指さしていた。
すると、兵が苦笑しながら待機していた。
どうやら、三人組は今夜は鉄の檻の中で宿泊するみたいです。
私は、訓練場からギャラリーの方に振り向きました。
すると、タマちゃんが私に向かって走ってきました。
「キューン、キューン」
「わわ。タマちゃんごめんね。私は大丈夫よ」
「キューン」
タマちゃんは私の足にひしっと抱きついてきたので、私はタマちゃんをひょいと抱き上げてぎゅっと抱きしめました。
どうも、タマちゃんは私があの三人組を殺しちゃうと思ったみたいです。
タマちゃんの事をよしよししながら副ギルドマスターに抱かれているグミちゃんを見たら、よくやったとふりふりとしていました。
うん、グミちゃん先生は平常運転ですね。




