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現代(仮)日本でざまぁした(物理)

作者: さや

時代設定は何となくでお読みください。曖昧です。


私はとある国の侯爵令嬢だった。

第2王子の婚約者として、日々勉強日々外交。何故なら第1王子と第2王子にはほとんど差が無くてどちらが将来王になってもおかしくなかったから。

好きだったから。好きな人の為ならと頑張る事が出来た。

第1王子の婚約者も、私と同じ侯爵令嬢で。

そう、本当に差は無かった。


あの日、第2王子の誕生日に開かれた夜会で他の令嬢を連れた王子に婚約破棄されるまでは。


いやぁあれは笑うしかなかったわ。

好きな相手に冤罪ぶっかけられていきなり婚約破棄とか。

もちろんその場で国王陛下は第2王子に自分の跡を継がせない事を宣言したし、私は断罪される事もなかった。

けれど第2王子は普通に小さな領地で令嬢と幸せな人生を送ったらしい。

私は「愚かな王子に婚約破棄された」という噂から哀れみの眼差しを向けられ、それに耐えられずうちには弟も居た事から外交の伝手で他国へ留学した。


……と思ったら死んだ。

突然現れた大きな生き物に船がぶつかり、私だけ投げ出された。

そのままもう死んだ。

神様って酷い。私にもう少し優しくしてくれても良かったのに。





という前世を、目の前に居る私に勝負を挑んで来た男を見て思い出した。


「いくらここらのテッペン決めるったって、初対面で殴る必要ねぇだろこのアマ!」


前世で私が死んだというのに、のうのうと曾孫にまで囲まれて死んだという王子にそっくりのアイパー掛けた男前。

何で知ってるかって?生まれ変わる時に「あの王子は曾孫に看取られて死ぬのに貴女って子は…」とか何とか言う神様っぽい声が聞こえたからだ!

このやたら男前な顔の男は、私がここらを仕切るスケ番と知って挑んで来た。コイツを何とかしてボコらなくては。そもそも多分、コイツ弱ぇだろこの近隣の奴らは大体私が勝ってるがコイツは見た事も噂を聞いた事も無ぇ。


「私はテメェを絶対許さねぇって決めてんだよ!テメェみてぇなぽっと出軟弱の甘ちゃん顔の野郎に、ここら一帯任せてたまっか!」


本当だったら純粋に、ステゴロタイマンでただただ殴り合うだけのはずだった。

けどな、思い出しちまったらもう、やるしかなかった。


「死ね軟派野郎!!!」


前世と同じく私より背の高い王子(仮)にまずは足払いを掛ける。バレたか。王子はそれを交わし私の腹を狙う。それを私はあえて受ける。


「ッ…!」


そこからの…


「っだ!?」


チョーパン!!!身長差から王子の顎を思い切り狙ってのチョーパンだ。怯んだ隙に思い切り玉を蹴り上げる。


「ッ〜〜〜!!!!?」

「ざまぁみろ!」


ルールなんてなぁあって無いようなもんなんだよ!

股間を抑える王子の髪を引っ掴んで、顔面に膝を入れた。絶対ぇコイツを、ボコる!殺る!死ね!!

っつーか顔面潰れろ!



私は我を忘れてボコり続けた。


「やべっ、ポリ公だ!パクられっぞ!テメェも早く逃げんだな王子!」


聞こえてきたサイレンの音に、私はすぐさまバックれた。

王子はピクリとも動かなかった。








「姐さん!」

「……王子、テメェ頭でもぶつけたか?」

「はい!姐さんにやられました!」


数日後、ボコボコに腫れた顔面で目の前に現れた王子は私に満面の笑みを向けた。

いくら元の顔が良くても、ボコボコだと化け物だな。


「姐さんお願いします!俺と付き合ってください!」

「断る!」

「なんで!」


前世でテメェは浮気した上に私を捨てたからだ!!

なんて事は言えない。言ったら今度は私が頭を心配されるだろう。


「俺、姐さんのパシリになります!カバンだって持つし、ヤニだって買ってきます!」


王子がパシリ……少しだけ心が揺らいだ。


「姐さん専用のサンドバッグにだってなるから、お願いします!」


土下座し始めたぞこの王子。

コイツの思考回路どうなってんだオイ。


「この間姐さんにボコられた時、俺、思ったんです………俺はこの人にボコられる為に生まれてきたんだって…!」


目ぇウルウルさせながら気色悪ぃ事言ってんじゃねーぞこのタコ。

心做しかハァハァ言ってんぞおい王子。


「お願いします!姐さん踏ん……殴ってください!」

「おいテメェ今踏…」

「殴って!ください!!」


何で人間ってのは、殴っていいって言われると殴る事を躊躇するのか。

単純に目の前の王子が気色悪いからか。




その日からずっと付き纏う王子と、何度も「殴ってください!」「断る」というやりとりを続けてから数日が経った。




私は夢を見ていた。

まだ侯爵令嬢として生きていて、死んで、生まれ変わる時の夢だ。

「看取られて死ぬのに貴女って子は…」の続きが聞こえてきた。


「もうね、出血大サービス!大丈夫!次の人生、あの王子は出血しまくるくらい色々発散するのに使っても良いくらい丈夫に転生させとくから!たっぷりざまぁみろってしていいわよ!根性焼き入れ放題!沢山のやき、お見舞いしてあげてね!丈夫に!作っておくから!神様だからね!太っ腹なの!」


天使のように綺麗な声で、悪魔のように楽しそうに言った。




「いや鬼かよ!」


神様は神様というより鬼だった。

起きた時の私の第一声は間違ってるだろうか。

…………ボコった人間の言葉としては間違ってんな。だよな。そこをちゃんと理解してる私は、きっと常識人だ。

そんな夢を見た日も、もちろん王子はやって来た。


「お願いします!もう1回チョーパンください!俺は姐さんにボコられる為に生まれてきたんです!」

「………ガチだったんだよなぁ」


ある意味でこの王子は被害者なのかもしれないと思いつつ、とりあえず蹴りをお見舞いした。


「ん…ッ、最高です姐さん…!」


喜ばれた。

顔の腫れもすっかり無くなってただの美形に戻った王子は、その男前な顔を赤らめながら笑っていた。




ああ神様、私はすっきりしません。

なんか、喜ばれると違うんだけど。何で喜ぶようにしたんだ神様。

まあとりあえず殴るけど。蹴るけど。


「姐さん!」

「……死ね!」


王子も飽きるだろうと思ったら、それから20年付き纏われて。




「子供が生まれてから姐さん冷たい……そこもまた好きだけど」

「姐さん言うな馬鹿野郎!」


神様、今世でも王子を浮気野郎にしてくれても良かったのに。

元々前世で好きだったせいでずっとそばであの笑顔向けられてたせいでうっかり結婚したんだがどうしてくれんだ。




この調子だと、多分50年後もコイツは笑って「姐さん」とか言ってんだろうなと思うと、まあ前世よかマシかーなんて思ってしまったのは、絶対誰にも言わないでおくとする。


ステゴロ描写ぬるくて申し訳ないです。

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