6話 青眼の白虎の目
西の王国の街から西に少し向かうと、猫エリア、虎エリアと書かれた矢印看板。多くの人達は猫エリアの方に向かっている。
「虎エリアのモンスターは強いから、普通は開始早々行かないよね」
虎エリアに向かう人は俺強いですよオーラを出す人達と異質なオーラを放つ人達。そんな人達の中に混じってオーラゼロで見習い手袋しているボクがいるのが1番の異質の存在。
だから結構人から見られるが、その目はクソ雑魚がこんなところに来てんじゃねーよっていう目をしている。
「気にしないで行こう。気にしたところで開始早々にアクティブモンスターに襲われないで行ける自分に注目が集まるのは避けられない事だろう」
それから少し歩くと虎の姿を確認。タイガーエリアに入ったのだろう。開始早々に虎エリアに来る人達だからみんなタイガーに苦戦する事なく次々と討伐していく。
「オオカミ平原の時とは違い、ここでやられる人ってほとんどいないんだな」
ボクは熟練生産者の指輪の効果でモンスターがノンアクティブになっているので、襲われる事なく次のエリアへ。
次のエリアはマジックタイガーエリア。タイガーは近接攻撃しかしてこないので、遠距離攻撃からしたら絶好の的。だけどマジックタイガーは魔法攻撃をしてくるので、少し手間取ると魔法攻撃でやられてしまう。
開始早々で装備が整っていない状態だから、案の定このエリアでやられてしまう人が多くいる。
そんな中ボクは熟練生産者の指輪の効果でモンスターがノンアクティブになっているので、襲われる事なく次のエリアへ。
次のエリアはシールドタイガーエリア。シールドタイガーは近接攻撃しかしてこないモンスターだが、その名の通りシールドのような堅い装甲を持つモンスター。
このモンスターにやられる人が多く、奥に行けば行くほど人影は見えなくなってきた。だけどそれなりに奥までくるとシールドタイガーを倒している人達をちらほらと見かけるようになってきた。
「この人達の腕前があったら余裕でブルーアイズホワイトタイガーを倒せると思うんだけどなぁ」
ボクは熟練生産者の指輪の効果でモンスターがノンアクティブになっているので、襲われる事なく次のエリア、ブルーアイズホワイトタイガーのエリアへ足を踏み入れた。
そこには綺麗な1人の女性の姿。見た事がある人だ。この人が亀白ナルミさんなんだな。
「あら、ここに来るなんて私と狩場勝負でもするつもりなのかしら」
亀白ナルミさんの遠距離攻撃の腕前はすごくて、普通なら遠距離攻撃スキルと一緒に取るはずの狙撃スキルを持っていない。狙撃スキルは自動追尾などの補助効果があるだけで、直接威力などには影響がないためナルミさんは狙撃スキルを持っていないのだ。
「あっ、その、ボクはそんなつもりではないです」
「っていうかアンタよくその見習い装備でここまで来れたね。ここらじゃ見かけない顔だし、私と勝負でもしてみる?1匹でも倒せたら狩場を譲ってやってもいいわよ」
「あっ、いや、本当にボクは勝負しに来たわけじゃないです」
「じゃあ目障りだから、とっとと消えてくれる?」
「はい、すみません。用事が済んだら、すぐに帰ります。すみません」
なぜだか知らないが反射的に謝ってしまう自分が悲しい。とにかく今は自分の事に集中しよう。
ブルーアイズホワイトタイガーの倒し方は神聖魔法か暗黒魔法を使い、目を潰してから攻撃して倒すのが一般的な倒し方。
亀白ナルミさんだけはその狙撃の腕前で神聖魔法や暗黒魔法を使わないで倒す事が出来る。そのため狩場勝負しようとしても普通の人はワンテンポ遅れてナルミさんに勝てる人はいない。
ナルミさんの倒し方や神聖魔法や暗黒魔法を使って倒す方法ではブルーアイズホワイトタイガーから目を採取する事は出来ない。
ブルーアイズホワイトタイガーの目の採取方法は眉間に一撃を与えて倒す事が条件。ナルミさんのやり方だとそのほとんどは胴体に矢が当たるのでブルーアイズホワイトタイガーの目を採取する事が出来ない。
でもナルミさんはオープンベータ版の時に一度だけ偶然眉間にあたり1つだけブルーアイズホワイトタイガーの目を採取出来ていたみたい。
それが原因で話がこじれにこじれて、ホワイトスネークとホワイトタートルが膠着状態になり、ストーリーが進まなかった。
「用事って何?ブルーアイズホワイトタイガーを私が譲るとでも思ってるの?」
ナルミさんは素早く弓を引き、近くにいたブルーアイズホワイトタイガーを打ち抜く。矢を射られて動かなくなったブルーアイズホワイトタイガー。その目からは特有の青さは消えていた。
「それとも私に用事にあったのかしら?」
再びナルミさんは素早く弓を引きブルーアイズホワイトタイガーを倒していく。
「あっ、いえ、すみません。本当にすみません」
その言葉と共にボクは猛ダッシュで奥へ奥へと突き進む。
「アンタなんかに1匹たりともやらせはしないよ」
怒涛の猛攻を仕掛け、次々とブルーアイズホワイトタイガーを撃破。奥へ奥へと進むボクの後を追ってくるナルミさん。
遠距離攻撃で一瞬で倒していくので、ボクが熟練生産者の指輪の効果でモンスターがノンアクティブになってる事には気付いていない様子。
そして異変に気付いた時にはもう遅い。ナルミさんの周りには対処し切れないくらい多くのブルーアイズホワイトタイガーの姿。
「アンタ一体何者?」
ボクの周りにも多くのブルーアイズホワイトタイガーはいるのだが、ボクは熟練生産者の指輪の効果で襲われる事はない。
「はい、すみません。失礼します」
ボクはさらに奥へ奥へ進み、ナルミさんの遠距離攻撃が届かない位置まで来ると、ブループラチナのナイフを取り出した。
「フッフッフッ、ようやく倒す時が来たようだな」
ブルーアイズホワイトタイガーの特有の青い目はブループラチナメタルの青い光を捉える事が出来ない。だから確実に眉間に一撃を与える事が出来る。
「くらえー」
ザクッと眉間に突き刺さるブループラチナのナイフ。その一撃で倒れるブルーアイズホワイトタイガー。
ナルミさんにウザ絡みされる前に採取して、すぐに帰るぞ。
剥ぎ取り採取の場合は主にナイフを使って解体して素材を取る場合が多い。
「一点集中スキル・オン」
「剥ぎ取り採取作業・開始」
「まずは解体しやすいように頭を切り離すとするか」
ブルーアイズホワイトタイガーの首の所にブループラチナのナイフを差し込んで頭と胴体を切り離す。
「まずは目をゲットしよう」
切り離された頭を地面に置いて、股に挟んで固定する。そして目の周りの部分にナイフを入れて丁寧に切り離す。
「よし、ブルーアイズホワイトタイガーの目をゲットだぜ。品質はどうだ?」
ブルーアイズホワイトタイガーの目、68%の高品質。
「最高品質かと思ったけど高品質か。やっぱり1%の最低品質のナイフだと最高品質は無理かぁ」
「よし、次は胴体の方から毛皮を剥ぐとするか」
剥ぎ取りに集中していたため、ボクは迫り来る足音に気付く事が出来なかった。
「アンタ一体何者なんだよ。ってそれブループラチナメタルか?」
あっ、マズい。ナルミさんに見つかってしまった。これからウザ絡みされるんだろうなー。毛皮は諦めるとするか。
「すみません、用事は済んだので帰ります。すみません」
なんでボクはこんなに謝っているんだろうか……
「ちょっと待て!余っているブループラチナメタルはあるか?」
えっ?余っているブループラチナメタルはあるけど、正直に言っていいもんなのかな?
「もしあるなら売ってほしい。1000万でどうだ?」
えっ?そんな高値で買い取ってくれるの?たしかにタイミング見て売ろうと思っていたけど、どうしようかな……
「2000万でどうだ。これ以上となると今はゲーム開始直後だから持っていない」
えっ?こんなに高値をつけてくれるなら売りの一択しかないじゃん。あっ、でもブループラチナメタルが市場に流れると困る人がいるんだよなぁ。どうしよう……
「何か悩んでるいるのか?それならブループラチナの矢の状態で売ってくれないか?」
ブループラチナの矢ならナルミさんが自分で使うって事なんだよね。それなら市場に流れる事もないし、大丈夫なのかな……
「取引は成立って事でいいか?」
っていうかボクの心の声ダダ漏れしてるのかっていうくらい読まれてぞ。
「あっ、はい。でも…」
「矢のシャフトと羽はこれ使いな。矢の品質は最低品質でも構わない」
ナルミさんからのトレード申請。素直に受け取るボク。ナルミさんは周りから溢れて出てくるブルーアイズホワイトタイガーを討伐し始める。
えっ!なんかもういろいろと言う前に行動し過ぎだよ。
「今作りますので、少々お待ちください」
幸いにもナルミさんは周りからゾロゾロと溢れて出てくるブルーアイズホワイトタイガーを処理するので精一杯でこちらの作業を見ていないようだ。
ボクは未加工のブループラチナメタルを取り出して切削加工。
ブループラチナメタル、1%の最低品質。
ここから成形作業に入る。ちなみにだが矢を作る作業は一点集中スキルは使わない。
「成形作業・開始」
ブループラチナメタルを矢尻の形に変えて、矢尻とシャフト、羽を並べて組み合わせていく。それなりの形に並べるだけで矢は完成。
「成形作業・終了」
ブループラチナの矢、1%の最低品質。
「完成しました」
ボクはスマホを取り出し、ナルミさんにトレード申請。
このゲームではトレードやメッセージのやり取り、ステータスの確認などはスマホを通してやる。ゲームの中でもスマホを使うのはフルダイブ型のゲームならでは光景だなって思う。
トレード画面でブループラチナの矢を渡すにすると、ナルミさんからは2000万のお金。緊張しながらもトレードを完了させる。
「よし、もう用事は済んだろ。目障りだからとっとと消えてくれないか」
「はい、すみません。すぐに消えます」
なぜボクはこんなに……
ボクはそのまま毛皮を採取する事なく、虎エリアを引き返し、西の王国へと戻った。
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「三上ハヤト……アイツ不気味過ぎて怖すぎだよ。っていうかアイツは一体何者だったんだ?まぁいい、出来るヤツならこれから台頭してくるだけだ。それよりもブループラチナメタルの切削方法がわかったのはラッキーだったな」