31話 第2章始まり
東の王国の酒場に到着。
あれだけムービーでボクの姿が写し出されたのだから、騒ぎになるかも。そうなると困るなぁ。そう思い酒場の扉を開けると、酒場にいた人達はメインストーリー第2章が始まった事に歓喜して、ボクに気付く人はいなかった。
「いらっしゃいませ。食べ物をお求めですか?それとも情報をお求めですか?」
話しかけてきたのは酒場のご主人。ご主人はきちんとボクの事に気付いてくれるんだね。
「アテナの頭蓋骨について聞きたいです」
「アテナの頭蓋骨の事についてだね。頭蓋骨が盗まれた時、近くで見ていた人は『まるで夢か幻を見ているようだった』と言っていたぜ。アテナの頭蓋骨についてはこれ以上情報はないよ」
「夢か幻かという言葉で何か情報はありますか?」
「その情報については有料情報になるよ。情報料は1万リン」
「追加情報込みでお願いします」
「おっ、追加情報は本来なら10万リンだ。だから情報料は本来なら11万リンになるが、特別に10万リンでいいぜ」
「お願いします」
ピコン
スマホに通知音。
『(1万リンの情報)夢か幻を見たというのであれば、それは羊の死獣・陽炎の夢羊の事かもしれない』
『(10万リンの情報)夢を見れるアイテムは風の夢見鳥から採取出来るアイテムだが、夢と幻を見れるアイテムの情報はまだ掴めていない』
酒場のご主人から情報を聞いておいて良かった。これならみんなに段取り良く話出来そうだ。
あっ、もうすぐ待ち合わせ時間になる。急いで行かないとみんなを待たせる事になっちゃう。
ボクは急いで酒場を飛び出し、クランハウスに移動。
クランハウスに着くと応接室で待っていたのは4人。吉田メリーさん、山下アイナさん、亀梨マリナさん、そして最後の1人は黒崎リュウイチさん。
えっ、なんでリュウイチさんもいるの?
「お、お待たせしました」
「まずはおめでとう。この時間まで待たせたって事は、ハヤトくんは酒場のご主人から情報聞いてきたんだよね?」
「はい」
「いい心掛けだ。これなら段取り良く話出来そうだ」
この感じだとリュウイチさんもすでに情報を仕入れてきてるみたいだな。
「ここにいる人達には俺からすでに話をしているから説明は不要だ。で、なんで俺がここまで来たのかって事なんだが、俺にもキーアイテムを作って欲しい」
やっぱりみんな誰よりも先にストーリー進めたいって思うよね。ん?でも今回はハートのマークが活躍する章だから、スペードのマークのリュウイチさんはなんでアイテムが欲しいんだろ?
「不思議そうな顔してるな。俺は死獣と戦いたいだけだ。1章の時点で倒せるネズミと馬の死獣は倒したから、次の死獣を待っていたんだ」
1章の時点で会える死獣は4体。北の王国にいるネズミと馬、南の王国にいる猪、東の王国にいる狼。
東の王国にいる死獣は月の銀狼・フェンリル。ボスエリアに入り、ある程度近づくと回避不能の即死攻撃。だからまだ誰も倒せないと思われている。
南の王国にいる死獣、不死の猪豚。こちらは普通に戦えるボスだが倒せた人はいない。リュウイチさんが倒せないっていうなら、他の人もまだ倒せないんだろう。
「っていう事でよろしくな。俺はこれで失礼するよ。じゃあメリーさん、あとは頼んだよ」
「かしこまりました」
リュウイチさんは急ぎ足で応接室を出ていなくなった。応接室に残されたのはボクを含めて4人。美女に囲まれて喜びたいところだが、リュウイチさんが帰ってからはにこやかだった表情も変わり、何やら不穏な空気感。
「時間がなかったため、ボクはあまり情報を聞けていなくて、リュウイチさんからはどこまで話を聞いたのかはわかりませんが、今回キーになるのは南の王国にいる風の夢見鳥になります」
「えぇ、それはリュウイチから聞いてるわ。だからこれから捕獲してくるけど、なんでここにアイナがいるわけ?」
マリナさんが何故か怒ってる。そしてマリナさんの言葉でアイナさんも怒ってる。
「私がここにいるのはハヤトくんに浮気された責任を取ってもらうためよ、泥棒猫さん」
「はー、誰が泥棒猫だよ!そっちこそ、こんな童貞たぶらかして何するつもりだよ」
えっ、ボク誰にも童貞の事は言ってないよ………
「ここで言い争いしてても意味はないわ。私は風の夢見鳥を捕獲してくるから、ハヤトくんはちゃんと浮気の責任取ってよね」
「何抜け駆けしようとしてるのよ。先にストーリーを進めようとしたって貴方の実力じゃあ無理よ」
「そこまで言うなら勝負よ。お互い神聖系の純魔法使い。どちらが早く風の夢見鳥を捕獲出来るかの勝負よ」
「望むところよ」
「あっ、あの、リュウイチさんの分もお願いします」
「「わかってるわよ!!」」
バタバタとアイナさんとマリナさんもいなくなってしまった。
「ようやく静かになりましたね」
「そうですね」
「今回の件で、リュウイチ様から先払いで100億リンの報酬を頂いております。10億はホテル代に使えばいいと言っておられました」
「えっ、あっ、はい。わかりました」
「風の夢見鳥は倒すのは簡単ですが、捕獲するとなると時間がかかります。アテナの骨の製作も終わりましたが、ハヤトさんは今後の予定は何か考えていますか?」
んー、どうしようかな。アテナの骨の製作だけでいっぱいいっぱいだったから、先の事まで考える余裕はなかった。
「予定はまだないですが、今やらないといけない事はあります」
やらないといけない事。それはアイテム変化で出来るようになった事の情報整理。
風の夢見鳥の素材がアイテム変化で何に変化するのかもまだボクは把握していない。
他にもやりたい事はたくさんある。これから先の事を考えると農業生産やペット育成も必要になってくるはず。
アテナの骨の製作には農業生産やペット育成は必要なかったから、これらの知識はほとんどない。
無料で見れるネットの情報だけじゃ知れない事もある。きちんと酒場のご主人から有料情報を聞いてこないと情報の抜けが出るはずだ。
アイテム変化の情報を整理したら酒場に行って情報収集だ。
リュウイチさんから1万リンお得になると聞いた情報。100億リンある状態だとたった1万リンと思うかもしれないが、1000回情報を聞いたら1000万、1万回聞いたら1億リンだ。やっぱりリュウイチさんは何もかもわかっている人なんだ。
アテナの骨の製作も終わって、ゆっくりしたいところだけど、リュウイチさんの期待に応えれるようにボクも頑張らないといけないな。
ってメリーさんの事忘れてた。
「メリーさんは今後の予定ありますか?」
「あるといえばありますが、ハヤトさんのお力が必要になる事です。私のは急いだ用事ではないので自分の事を優先してください」
「わかりました」
と言ってもお世話になっているメリーさんのために、ボクが出来る事はしたい。
「明日はやりたい事があるので、メリーさんの用事は明後日でもいいですか?」
「いえ、私の用事は本当にいつでも大丈夫ですので、急がなくて大丈夫です」
「今後の段取りを考えたら、多分明後日しか時間がないと思うんですよ。2人とも風の夢見鳥を捕獲してくると思うし。だから明後日でお願いします」
「そういう事でしたらわかりました」
「それじゃあボクはそろそろ失礼しますね」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
ボクはクランハウスを出て、マイハウスへ。マイハウスでアイテム変化の情報を整理してから、眠りについた。




