24話 サンダーラムの革手袋
次はサンダームートン討伐。
「それでは次行きましょう」
「えっ、サンダーラムの肉は採取しないの?」
「すみません、肉の採取まですると時間がかかるので採取しないです」
「私は採取スキル持ってないから、すぐ終わるわ。ちょっと待ってて」
「剥ぎ取り採取作業・開始」
メリーさんはサンダーラムの身体に手を当てると、サンダーラムの身体を消え去った。
「剥ぎ取り採取作業・終了」
「サンダーラムの肉は痺れる旨さがあるお肉で人気のあるお肉なのよ……っていうか採取したお肉の品質が高品質になってるよ。どうなってるの?」
採取スキルを持っていない人が採取作業をすれば、普通品質で採取出来る事がほとんど。
「もしかしたらですけど、あのままボクが肉を採取していたら、最高品質で採取出来ていたんだと思います。その下準備が出来ていた状態でメリーさんが採取したため、高品質で採取出来たのかなって思います」
「じゃあさ、肉の採取したい時はハヤトくんに始めに皮を剥いでもらってから、私が肉を採取したら、効率良く高品質の肉を採取出来るって事なんだよね?」
「ボクの考えに間違えがないのであれば、そうなりますかね」
「ふーん、そっか、わかった。じゃあ次行こっか」
サンダーラムのいるところを通り越して、サンダームートンのいる場所に到着。
「次はサンダームートンね。実は私ね、一回でいいからポーションガブ飲みスタイルってやってみたかったんだよね」
「強身スキル・オールアップ・発動」
「魔法スキル・ウォーターアップ・発動」
メリーさんの身体は光り輝き、水のエフェクトが全身を包み込む。
「強身スキル・アタックアップ・発動」
「強身スキル・ディフェンスアップ・発動」
「強身スキル・スピードアップ・発動」
メリーさんの身体全身が黄金色に輝き出す。
バフのダブル掛けはかなり強力だけどMP消費がエグい。よっぽどのモンスター相手じゃないと赤字確定の技。
「最後にMPポーション飲んで準備完了。それじゃあ行ってきます」
ここからのメリーさんは尋常じゃない動きを見せる。
対策もしないでサンダームートンに攻撃すれば、反撃の雷ダメージを食らう。だけどゴールドスリーソードをゴムコーティングした事で、メリーさんは反撃の雷ダメージを気にする必要がなくなった。
さらに錬金で水属性付与した事でウォーターアップの効果もアップ。その結果、雷の攻撃に対する防御力がアップ。
それに加えてポーションガブ飲みし放題。
防御を気にする必要がなくなったメリーさんの動きはヤバかった。
サンダームートンの雷攻撃は麻痺になる。麻痺を起こし、動けなくなったところを強力物理攻撃。このサンダームートンの攻撃で死んでいくプレイヤーが多い。でも今のメリーさんは状態異常を起こす事はない。
メリーさんはその強力な物理攻撃にだけは気をつけるようにして攻撃。今のメリーさんはサンダームートンの雷魔法攻撃を受けても状態異常を起こす事はないので、受けたダメージはポーションガブ飲みで回復。
バフ掛けしたスキルの効果が切れれば、すぐにスキルを使い、MPポーションガブ飲みで回復。
それでいて、きちんと雷角には攻撃を当てずに身体だけに攻撃を与えていく。
そんな攻防が続き、やがてサンダームートンは動かなくなった。
「戦闘モード・終了」
「ポーションガブ飲みスタイルってすごいね。こんなにすごいと思っていなかったわ。あっ、お望み通り雷角には攻撃当ててないからね」
「あ、ありがとうございます。メリーさんの動き凄かったです」
鮮やかな動きに見とれてしまっていてボーっとしてしまっていた。
サンダームートンの雷角は無傷。だけど毛皮の方は使い物にならなさそうなレベル。ボクは雷角の採取だけする事にした。
「それでは採取始めます」
「一点集中スキル・オン」
「剥ぎ取り採取作業・開始」
サンダームートンの身体に並んだ輝く点が見えてきた。
「まずは首を切り離す。それから頭の皮を剥ぐ」
アダマンタイトのナイフを使い、サンダームートンを頭と胴体に。雷角の採取の邪魔になる頭の皮を剥がす。
「次は雷角」
雷角の根本にアダマンタイトのナイフを当てても採取出来そうにない。ミスリルのハンマーとポンチを取り出して雷角のつけ根にある輝く点にポンチを当てて雷角を切り離した。
「剥ぎ取り採取作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
サンダームートンの雷角、99%の最高品質。
「よし、完璧だ」
「見事な手捌きね。それにアダマンタイトのナイフだけじゃなくて、ミスリルのハンマーとポンチも使って剥ぎ取り採取するんだね。これがトップの生産職の仕事なんだね」
えっ、ボクがトップの生産職……
「どうしたの?私何か変な事言った?」
「あっ、いえ、トップの生産職って言われてちょっと戸惑ってました」
「すごい仕事見せてもらったから、素で褒めちゃった。でもこれでおあいこだよ」
おあいこ……あー、ボクもたしかにメリーさんの事を褒めていた。褒められると嬉しいもんだね。そしてこんなに褒められると好きになりそうになってしまう……
でもこんなボクがメリーさんの事を好きになってもメリーさんが困ってしまうよね。
「じゃあそろそろ帰りましょうか」
「あっ、検証したい事あるからちょっといいかしら?」
検証?なんの検証だろ?
「この状態でサンダームートンの肉を採取しようとしたら、どうなるのかなって思ってさ」
「たしかにどうなるんですかね。サンダームートンの皮はよくて普通品質、悪ければクズ品質。でも肉の品質はどうなるんだろ?たしかに気になるところですね」
「でしょ。だからさっきみたいに皮だけ採取お願い」
「わかりました」
「一点集中スキル・オン」
「剥ぎ取り採取作業・開始」
サンダームートンの身体に並んだ輝く点が見えてきた。
その点に沿ってアダマンタイトのナイフを入れていき、皮を剥いでいく。
「剥ぎ取り採取作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
サンダームートンの毛皮、34%の低品質。
「あー、ギリギリのところで低品質だー」
「想定通りの結果になるって、見立ても完璧だね。じゃあ次は私の番」
「剥ぎ取り採取作業・開始」
メリーさんはサンダームートンの身体に手を当てると、サンダームートンの身体を消え去った。
「剥ぎ取り採取作業・終了」
「…………最低品質だったわ。最低品質の肉しか採取出来ないのは私の実力不足だったって事ね」
メリーさんがめちゃくちゃ落ち込んでる。なんか言った方がいいのかな?でも言葉が出てこない。
「……今日はお疲れ様でした」
「お疲れ様でした……」
それから会話する事なくボクとメリーさんは入ってきた扉から出てると羊の館の外に出たので、そこで解散。ボクはマイハウスへと戻り、サンダーラムの革手袋の作成に入る。
「これで生産3種の神器が揃う事になる。気を引き締めて、サンダーラムの革手袋の製作だ」
「一点集中スキル・オン」
「成形作業・開始」
神品質の魔力水を桶に入れて、その桶にサンダーラムの毛皮をいれて、揉んでいく。
こうする事で皮を革に変えるなめしが出来る。
しばらく揉んでいると、皮についていた毛や脂分もなくなり、よく見る革の状態。
この状態から手の形をした型に革を置いて手袋の形に成形すると、サンダーラムの革手袋の完成。
このゲームでは量産型の革製品や布製品の製作において細かい裁縫はしない仕様。
量産型のアイテムは大きめに出来ていて、手袋に手を通すとジャストフィットするようになっている。
ちょっと脱線したが、サンダーラムの革手袋の完成だ。
「成形作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
サンダーラムの革手袋、100%の神品質。生産の女神の加護+30。
「よし、これで生産3種の神器が揃ったぞ。でもちょっと待てよ。生産の女神の加護は合計で90なんだよな。普通こういうのって100になるんじゃないのかな。何か見落としてるのかな……あっ、クロロ豚のウン……これ以上は何も考えないようにしておこう」
~~~
マイハウスの地下倉庫に眠るアイツの封印が解かれる日は近いのかもしれない。




