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8話

 


「その必要はありませんよ」


 凛とした声が辺りに響く。

 次の瞬間には私にまたがっていた男が吹き飛んだ。


 ――ガシャーン!!


「え?」


 急に体が軽くなり、瞬く。


 何が起こったかと思い辺りを見回せば、男は壁に穴をあけてつっこみぴくぴくと痙攣けいれんしていた。


「遅くなってしまいすみません」


 目の前には膝をつき心配そうに私を見つめるアルの姿。


「……アル?」

「はい、貴女のアルです。……その頬は」


 アルが赤く腫れているであろう頬をなぞる。

 だが、痛みより驚きが勝った。


 だってさっきあの男が生死を彷徨さまよっているかもしれないと言っていたのだ。


 私は思わずアルの顔を両手で包んでしまう。


「アル、アル……生きていたのね」

「はい。私は死にませんよ。まだ貴女からの色よい返事もいただいていませんし」

「よ、よかった……」


 安堵の涙が出てきた。

 どうやら私にとって彼は、既に替えの利かない大切な存在になってしまっていたようだ。


「私を案じてくれていたのですね」

「そんなの当たり前だろう?! 本当に無事でよかった……」


 アルは嬉しそうに微笑む。


「少し待っていてください。あれを片付けてきますので」


 アルは少し私を見つめてから徐に立ち上がると男へと近づいた。


「っ! くそ!!」

「私に毒を盛るに飽き足らず愛しのフレアに手を出すとは……。覚悟はできているだろうな?」


 ゴゴゴゴゴゴゴという音が具現化してきそうなほど黒いオーラを称えたアル。

 この場の空気が全てアルに支配されているようで、彼の周りには無数の風の刃が浮かんだ。


 家の中なのに風が立ち込める。


「ただ殺すのでは気が済まん。永遠に風の刃に貫かれ続けるがいい」


 アルが手を振り下ろす。

 彼のまとっていた風の刃が無数に降り注いだ。


「ぎゃああああああ!!!!!」


 男が断末魔だんまつまの叫びをあげる。

 それはアルの警護が到着するまで続いたのだった。



 ◇



「いっつつ」

「すみません。痛みますよね」

「ああ、平気さこのくらい」


 男が連れていかれた後、私はアルに手当を受けていた。


 アルの出してくれた氷で頬を冷やしている。

 本当に魔法って便利だなと思った。


「本当にすみません。もっと早く来れていれば、貴女が傷を負うこともなかったのに……」


 アルはシュンと項垂うなだれている。

 よほど私の怪我に罪悪感を抱いているのだろう。


「いや、助かったよ。ありがとう、助けに来てくれて」


 命が助かっただけでなく、アルが助けに来てくれたことが嬉しかった。

 そして私の怪我を自分のことのように心配してくれるアルが愛おしい。


 いつの間にかこんなにも好きになってしまっていたのだな、と自覚する。


「それにしても、アルは大丈夫なのかい?」


 確か男の話では、アルにも何か手を出していたのではなかったか。


「ああ、私の方は全く問題なかったですよ」

「そうなのかい? 私はてっきりまた毒でも盛られたのかと」

「ええ。貴女のおかげで、また乗り越えることができました」


 聞けば盛られていた毒はすぐに見分けることができたので飲まずに済んだとのことだった。


「貴女が私に与えてくれた知識のおかげです」


 そう言い柔らかく微笑むアル。

 その顔が本当に蕩けてしまいそうな笑みで、顔が熱くなってくる。


「それは、よかった……です」

「ふふ、ほらまた口調が戻っていますよ」

「か、勘弁してください……」

「ははは」


 アルはすごく楽しそうに笑っている。

 なんだか負けたような気がして面白くない。


 一矢報むくいてやろうではないか。


 私はアルの顔を両手で包み、触れるだけの口付けをしてやった。


 チュッっという軽い音を残して体を離す。


「えっ」


 アルはぽかんとしている。


「ふ、ふん。これでおあいこ? だね!」


 一気に恥ずかしくなった私はそんなよくわからないことを言ってプイっと顔を背ける。

 絶対に顔が真っ赤になっているだろう。


「「……」」


 お互いに何も言わない沈黙が続いて気まずくなった。

 ちらりとアルを見る。


「!!」


 なんとアルも顔を真っ赤に染めて口元を覆っていた。

 その表情が本当に幸せそうで、やっぱり私は恥ずかしくなる。


「ああ、もう。なんでそんな可愛らしいことをするんですか。歯止めが効かなくなって困るのは貴女のほうなのですよ?」

「う……だ、だって」


 アルが距離を詰めてくる。


「フレアさん。……触れても?」

「……はい」


 そう言ってそっと触れてきたアルは私を抱きすくめる。

 伝わってくる体温が、心音が、愛おしくてたまらない。


「私の思いが伝わったようで、嬉しいです」

「……」


 甘いささやき、甘いキスが落とされる。


「もう、離して上げられませんよ? 覚悟はできていますね?」

「……望むところさ」


 そうして深い口づけを交わし合ったのだった。


ここまでお読みいただきありがとうございました!


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