7.幼馴染vs?
7.幼馴染vs?
それはお昼休みに唐突に始まった。
腹を空かせた俺は弁当片手に生徒会室に辿り着くと、そこから急に意識が朦朧と…。
気付くと椅子に拘束され、目の前にカルト教団員が被る様な黒の目出し尖帽を被った3人の淑女と1人の執行官に囲まれ、猿轡をされているという不可思議な状況に。
「被告人、峰岸優斗。霧谷静と言う人物に心当たりは?」
「ふがふが(いいからこれを解け)」
「ふむ…。見てると興奮は拭えませんが、致し方ありませんね。とりあえず猿轡は外しましょうか」
「「ええ」」
何の迷いも無く頷く二人。
「んぐっ…お前ら何なんだこれは」
「私語は慎む事。続けますね」
美玲らしき人物が書状らしき物を手に取り、高らかに読み上げる。
「被告人は神聖な授業中にも関わらず、被害者霧谷静殿に対し色目を使い、気分を害させた物と思われる。以上の事から、被告人に対し、我々3名への奉仕活動を求めます」
「だとして、お前ら無関係じゃん!」
…ギロッ!
3人の目がキリッとこちらを睨み付ける。
「あと彩!お前入学してまだ日が浅い癖に、何で霧谷さんの事知ってんだよ!」
「お兄ちゃんの近くにいる異性はマストで全て把握しておかないと。まだ会っても無いし勉強不足なくらいだよ」
当然かの様に、表紙に兄メモと書かれたメモ帳に書き殴る様に加筆する。
「こんな事してないで、さっさと飯食おうぜ。腹減ったわ」
「奉仕に関してはまた後日、各々機会を設けると言う事で…」
そう言いながら真也は、縛られて動けない俺の拘束を解こうと手を掛ける。
「むぅ…ならそれで妥協しよう」
由美姉が怪しげな尖帽を取り、ムスッとした表情をこちらに向ける。
「霧谷嬢は編入試験に於いて、非常に優秀な結果を示したと聞き及んでいるが、どの様な人物なのだ?」
「へぇー頭良いんだ!要注意だね…」
由美姉は弁当箱を机に用意しながら、霧谷さんと同じクラスでもある俺達に対し純粋な質問を投げ掛ける。
彩はこちらをジロリと見ながら、さっさと自ら広げたお弁当に箸を伸ばす。
「んーそうだね…結構完璧な人かも。誰に対しても分け隔て無く接してるし、才色兼備!って感じかな?運動に関してはまだ体育の授業が無いから分からないってのが現状かなぁ」
美玲が紙パックのりんごジュースをずずっと飲みながら、彼女に対する総評を代弁する。
「朝の話じゃ、ファンクラブが出来るのも時間の問題みたいだしな。あ、そういや彩のも出来るかも…面倒事は避けたいが…」
俺は再び繰り広げられるであろう争いを思い浮かべて、軽く嘆息する。
「うげぇ…別に私はお兄ちゃんにさえ好かれてれば充分なのに…」
「あんまり無碍にし過ぎるとカドが立つし、上手く立ち回らないとな」
コンコンッ。
「失礼致します。生徒会長さんは此方にいらっしゃいますか?」
この時間にしては珍しく生徒会室へノックが為されたかと思えば、件の人物が由美姉への用向きでちらりと顔を覗かせる。
「わぁっ…び、美人…」
彩が素っ頓狂な声を上げて固まったかと思ったら、霧谷さんを凝視したまま首を傾げる。
「……んんんんぅ?何…か、見覚えが…」
「彩?どしたの?」
霧谷さんは少し困った様に固まり、立ち尽くしていた。美玲も変な態度の彩に対し疑問に思ったのか二人を交互に見比べた後、俺に視線を送って来る。
「こらこら!彩!霧谷さんに失礼だろ」
「……んんむ。気のせい…かな。っと、ごめんなさい!いきなり!あ、ははは」
彩は気まずそうに苦笑いして、素直に謝り出した。一応先輩だからか。
「……いえ、気にしないで下さい。ふふ、峰岸くんの妹さん、でしたよね?」
「あれ?彩の事知ってるの?」
「ええ、この学校の生徒会に属してる幼馴染の人達と云う事を耳にしたので」
この学校の情報網には俺達の存在が有名どころとして扱われてる様だった。
「それなら話は早いか、コチラ2年B組の霧谷静さん。こっちが妹の彩と生徒会長の由美姉」
「編入時の受け入れは先生方がされていたから、挨拶が遅れてすまなかったね。この学校の生徒会長を務めさせて貰っている、島崎由美香だ」
「どうも、初めまして。優斗の妻の彩です。よろしくお願いします」
「おい」
「ふふ、同じ苗字ですし、都合が宜しいでしょうしね」
「マトモに取り合わないで!」
…霧谷さんは意外と天然さんです。
「そう言えば霧谷嬢、私に用があって参ったのでは?」
「…そうでした。私を生徒会に入れて頂きたいのですが、如何でしょうか?」
「ほぅ…成る程。編入時、先生方から何か伺ってるかな?」
「はい。校内の信任投票の上、役員を選定するとの事でしたが…。生徒会に於ける役員の選定に関しては、推薦に依る処が大きいと云う事ですので生徒会長に是非にと…」
スラスラとまるで暗記していた台詞を言うかの様に、言い淀む間も無く話し終えるとチラッと俺に視線を寄越した。
「そうか…それならば、お手伝い役員の優斗は御役御免としよう」
「…っ」
「む?…何か?」
「いえ、皆さんの邪魔立てをするつもりでは無かったので…」
「実際、我々幼馴染グループの中で生徒会に役員として名を連ねて居るのは真也と私のみだ。何、霧谷嬢の優秀さは噂にも訊いている。生徒会の仕事など容易い事だろう。そこの”臨時お手伝い役員”よりも更なる活躍を期待しているのだが…」
キーンコーンカーンコーン。
「さて、予鈴が鳴ってしまったな。この話は保留と云う事にしておこう。また放課後に来てもらえるかな?霧谷嬢」
「ええ、畏まりました。皆さん、教室へ行きましょうか」
由美姉と霧谷さんは微笑み合いながら、然りとてピリッと緊張感を漂わせつつ、会話を終了させた。
「そうだな、俺達もそろそろ教室戻ろうか。彩と由美姉はまた、放課後に」
俺は食べ終えた弁当を片付けて持つと、美玲と真也に目配せして立ち上がり、生徒会室に彩と由美姉を残して霧谷さんの後を追った。
〜Another side〜
「由美姉、どうするの?」
「私は排他より掌握が性に合っていてね。気に食わないかい?」
「んー、不思議と嫌な感じがしないんだよねぇ。何でだろ…」
「女性として惚れ込んだかな?」
「あはは、分かんない。さっ!私達も行こっか」
二人は微笑み合いながら互いの教室へと向かって行った。
助走に目一杯といった塩梅です。




