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54.テスト終わりのコスプレパーティー!中編

54.テスト終わりのコスプレパーティー!中編





魔法少女タケルとの鬼ごっこを終えた俺は、彼女(?)をお姫様抱っこで抱えながら会場を優雅に歩いて、その姿を皆に見せびらかせていた。


羞恥(しゅうち)により顔を真っ赤に染め上げて、ツツーッと涙を流すタケルは「もういっその事、殺してくれ…」と一言放ち、主に男性陣からの「ほぅ」といった吐息と、ねちっこい視線を集めていた。



タケルを解放し丁度一人になった頃、とある女生徒が近付き挨拶をして来た。


「峰岸くん、ちゃんと喋るのは初めてだったかしら?」


「…随分とまぁ、露出度の高い格好ですね」


「あら?…あれだけ綺麗な女性達を周りに(はべ)らせておいて、まだ足りないのかしら」


「そんなつもりは毛頭ありませんが…とても良くお似合いですよ翔子先輩」


バニーガール姿がとても良く似合う女生徒。

一瞬誰かと思ったが、女バスのキャプテンでリョウジくんの彼女さんでもある、芹沢 翔子先輩だった。


「そう、素直に受け取っておくわ」


一切照れる事の無いその堂々とした(たたず)まいから、彼女の自信や自己評価の高さを感じた。


「あなたに話して置かなければならない事があるの。…二人で話せるかしら」


「見ようによっては、会場から抜け出して逢引(あいび)きする様にも見えますが…」


「周りからどう見られようが、私は問題無いわ。あなたは少し困るでしょうけど、気の利いた言い訳の一つや二つでも唱えてみせなさい」


口元を(ゆる)ませ「ふふ」と笑う彼女に多少の理不尽さは感じたが、素直に着いて行く事にした。




連れて来られた場所は、体育館の裏側に併設された部室棟を兼ねた施設内。その中でも男子禁制である女バスのミーティングルームだった。


誰もいないその空間だが、部屋には女子特有の甘い香りが漂う。

綺麗に片付けられた部屋の壁には毛筆で描かれた『全国優勝!』の文字が、でかでかと飾ってあった。


一際存在感を示すその文字を魅入られる様に眺めていると、翔子先輩がゆっくりと話し始めた。


「全国大会なんて、私が入学した頃には全く現実的じゃ無かったのよ」


「…美玲が入ってからですか?」


俺の言葉を聞き、どこか自虐的な笑みを溢して頷く翔子先輩。


「そう。あの子が入って一気にレベルが上がった。正直に言えば、彼女だけが全国区のトップレベルでプレーしてる。…私達はそれに追い付くのに必死で、気付いたら各自スキルアップしていたわ。そして、いつの間にか全国大会に足を踏み入れていたの」


翔子先輩はそこで一度俺に向き直り、真っ直ぐに目を見て口を開いた。


「彼女に海外留学の話が来てるの」

「…っ」


あり得ない話では無い。

むしろ、極自然な事だ。


「全日本の監督が世界で通用する女子選手を育てるという事で、夏に一度合宿を開いて選手を選抜するみたい。その後、本格的に海外留学させるそうよ。今、全国で選手に声を掛けてる。…彼女はその筆頭選手よ」


「そう…ですか」


上手く口が開かず、尻窄(しりすぼ)みに言葉が霧散して行く。

美玲はGWの頃から既に聞かされていたのだろうか…。


いつまでも同じ時間が続く訳じゃ無い。


これから先、長い人生の中で夏は何度でも来るだろう。だが、高校二年生の夏はもう二度と来ないのだ。


「彼女は悩んでるみたい。…あなたには、彼女の背中を押してあげて欲しいの。きっと、あなたも同じ気持ちな筈でしょ?」


「………」




翔子先輩と別れ、やり切れない様な、どこか心ここに在らずといった感情を抱えながらも体育館へと戻って来た。

そんな俺の元へ、美玲と霧谷さんが近付いて来る。


「もう!ユウったら、目を離した隙にどっか行ってるんだから!あれだけあった写真撮影もやっと終わったんだから、私達も…」


「峰岸くん…やはり、体調が悪いのでは?顔色が良く無い様ですが…」


美玲は少し機嫌が悪そうに文句を言っていたが、俺の表情をジッと見て口を(つぐ)んだ。

霧谷さんは先程と同様、俺の体調を気遣って心配そうな表情を浮かべる。


「大丈夫だよ、霧谷さん。心配掛けちゃってごめんね。そう言えば、もう少しで投票終了の時間だよね?」


「ええ、そうですが…」


霧谷さんは少し反応に困ったのか、助けを求めるかの様に隣にいた美玲へ視線を向けた。


「ユウ、もしかして…例の件?」


「いや…違うよ。少し考え事をな」


美玲が霧谷さんの手前、『脅迫状関連』の事を『例の件』と隠して聞いて来たのでしっかりと否定する。


…素直にお前の事だとも言えないからな。

美玲とは今度改めて時間を作って話す事にしよう。


「あれぇ?さっき、露出度の高い女子とどこかへと消えたみたいだったけど、もう良いのかな?優斗」


…なっ!???誰だ!?


勢い良く振り返った先に、魔法少女タケルがステッキ片手に笑顔で微笑んでいた。


タケルのリベンジ告発だ!

…不味い。やっぱ見られてたか。


背後からゴゴゴと言わんばかりの圧力と殺気を感じ、冷や汗を垂らす。


「…峰岸くん?」「ユ〜ウ?」


「待て!二人とも誤解だ!…っ……ちょ、ちょっと俺、彩の事探して来る!」


…翔子先輩。言い訳の一つや二つ言っている暇があれば、ほとぼりが冷めるまで逃げに徹する方が良いと思います。


本当は(やま)しい事など何も無いのだから堂々として良いものなのだが、会っていた人物が翔子先輩だと美玲に説明すると、海外留学の件まで察してしまうかもと気付き、言い訳を放棄して逃げ出す事にした。


…何より今の二人の目が怖い。



その場からサッと離れると人混みの中に身を隠し、直ぐに戦線離脱する事に成功した。


…言った通り、彩の事でも探すか。


そのまま周りを見渡しながら彩の姿を探す。


…いた。


目立つなアイツは。しかも彩だけじゃなく、リオナちゃんもいる。


彩とリオナちゃんは沢山の生徒達に囲まれている様だった。

先程のライブの感想についてだったり、コスプレ衣装について散々褒められていたのだろう。


生徒達の間を何とか抜け、人混みの隙間から声を掛ける。


「彩ー!…と、聞こえないか流石に」

「むむっ!お兄ちゃんの声が聞こえる!」

「聞こえんのかよ…」

「お兄ちゃーん!愛してるよー」

「ってこら!?ヤメなさい!」

「えへへ!私も好き好きー!」


…まったく。困った妹だ。


「ていっ」

「あいたー!」


暴走気味の彩の下へ遠くから走って近付き、脳天に軽くチョップをかます。


「何をどこから受信したらそんな都合の良い言葉になるんだ。…ったく」


「うぐぐ…お兄ちゃんはもう少し、愛する妹への態度を考えた方が良いよ!」


「はいはい。…で、何話してたんだ?」


「みーちゃんとお兄ちゃんが付き合ってるという勘違いを晴らすべく、皆んなに私とお兄ちゃんの真実の愛を()いてたの」


「断固として家族への愛情だっての」


「そう…家族のね、家族の…ふふふ」


彩は意味あり気に二ヒヒと邪悪な笑みを(こぼ)し、俺の腕にギュッと抱き着いた。


周りにいた生徒達はそれぞれキョトンとした表情でこちらを見ていたが、リオナちゃんはとっくに慣れた様にやれやれといった表情で俺達を見ては、一つため息を吐いて呆れ気味の笑みを浮かべていた。



「まったく…優斗の周りは賑やかだな。辺りを注視せずとも居場所が分かるのは有難いが…」


「由美香お姉様、お言葉ですが『逆』では無いでしょうか?羽虫が光に誘引(ゆういん)される性質があるのと同じで、コレも賑やかな場所に引き寄せられる性質があるのかと」


そうこうしている内に、由美姉と深川さんが騒ぎに気付いたのか、直ぐ側に来ていた。


「深川さん、聞こえてるからね」

「…ふん」


俺の言葉に深川さんはチラリと此方(こちら)を窺う様子を見せたが、興味なさ気にプイッと顔を逸らしていた。

…もう少し反応してくれても良いのに。



「ところで優斗、暫定の集計結果に目は通しているかな?」

「そう言えば、まだ見てないな」


何やら自身あり気な由美姉の言葉に反応して、ポケットからスマホを取り出し特設サイトを確認する。


管理パスを入れて集計結果を見てみると、やはりと言うべきか生徒会メンバーへの投票が大半を占めていた。


霧谷さん、美玲、由美姉は今回の大本命だったので票が割れていたがそれぞれ均衡しており、そこに追随する形でライブで活躍した彩、生徒達へ票獲得アナウンスをした深川さんが続き、少し票差はあるもののリオナちゃんとレナさんへ投票がされているのが分かった。


あとは各部活動の目立った女生徒達に多少バラける様に、投票が行われていた。


ミスターコンテストの方は俺の名前にとんでもない数の票が(かたよ)っており、私立相城高校生徒会長史上、最も処分したい男の名を頂けそうで、涙が出そうだった。

…ネタ票だよな?なぁ?



「お姉様、私はそろそろ時間のアナウンスの方へ参ります。…片時でもお側に居られない私をどうかお叱り下さい…」


深川さんはどこか期待する様な(うる)んだ瞳で由美姉を見ていたが、由美姉に「分かった。早く行くんだ」と素気無く返されると、身悶えしながらその場を離れて行った。

…結局何の言葉でも(よろこ)ばせてしまってるな。



「さて、俺達もそろそろ準備しないと…この投票数だと、皆んな壇上に上がる事になりそうだし」


俺はその場にいた由美姉、彩、リオナちゃんにそれぞれ目配せして壇上の方へ戻る様に(うなが)す。


…ピリリピリリ!


皆んなの返事を聞く前に近くでスマホの音が鳴り、リオナちゃんがスマホを取り出して画面を確認したかと思えばニコリと微笑んだ


「アハ…特別衣装チームが到着しました♪」


「リオナちゃん??」


「優斗先輩、衣装替えの時間ですよ…ふふ」


リオナちゃんが悪戯心に満ち溢れた笑みを浮かべていたのがとても印象的だった。




思い付きから始まったこのパーティーだが、私立相城高校のとあるジンクスの一つとなり、その後何年にも渡って行われていく行事となっていくのである。


…勿論、今の俺には全くわからない事だが。



もうそろそろ三章終了で、四章目突入です。


出来るだけ早目に上げる様に…。

頑張ります。

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