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53.テスト終わりのコスプレパーティー!前編

53.テスト終わりのコスプレパーティー!前編





北谷がステージ上から慌てて逃げ出した事で、生徒達がブーブーと大きな声をあげ始めたので、一応の収拾をつける為にマイクを使って生徒達に呼び掛ける。


『最高のオープニングアクトをありがとう!彩!…と、正体不明のK!コウジくんも最高の演奏でした!彼らに再度大きな拍手をお願いします!』


「すっごい良かったよーー!!」

「感動したー!」

「コウジ先輩カッコかわいい!!」

「正体不明のKって誰だよー!」

「彩ちゃーん!!私ファンになったよー!」



生徒達からの拍手に応える様に、彩とコウジくんが舞台上で堂々と手を振る。


生徒達の中には北谷の正体について知りたがる者もいただろうが、本人の意思を汲み取り濁す形となった。


程なくして、生徒会の面々が俺の側に集結した所で、改めて生徒達に向けて今回のイベントについて説明を始める。



『さて改めまして、皆さん、生徒会主催のおもてなしパーティーにご参加頂きありがとうございます!』


『事前に告知済みではありますが、今回の注意点として本人に無許可での写真の撮影、アップロードについては厳しく取り締まっておりますので十分ご注意をお願い致します!会場内には各ファンクラブの面々が眼を光らせ巡回しておりますので、その点ご容赦を…』


…そう。

今回コスプレパーティーをするに当たり、最低限の法整備をしなければ後々面倒な事に発展しかねないと言う事で、ファンクラブの代表達を介して取引を行った。


その際、彼らにはそれぞれ相互監視をする様に提案し、これを容認した漢たちにより無許可での安易な撮影はNGとなった。


取引の内容は、協力してくれる者全てに指定の生徒会メンバーとのツーショット写真を確約すると言う物。


初めは、美玲を除く他ファンクラブの面々を筆頭に協力を仰いだ。


未だに多くの生徒達は俺と美玲が付き合っているものと勘違いしている以上、徹也に話しても無駄だと思ったが、奴もツーショット券の魔力には抗えず、血管を浮かべる程の全力握手で応えてくれた。


ツーショットについては勿論、生徒会の皆へ事前に説明済みだ。

…彩は一番最後まで渋っていたが。



『では、そろそろ今回の目玉である「ミス・ミスターコンテストinコスプレ」について説明をしましょう!』


俺の言葉に生徒達は軽く(ざわ)めき、耳を傾ける。


言葉を続けようとするが背後から気配を感じ、振り向くと深川さんが立っていた。


「深川さん?…どしたの?」


キツネ姿の深川さんは無言で俺からマイクを引ったくると、会場にいた生徒達に向かって声を掛ける。


『さて、これより先は私、深川美耶子が仕切らせて頂きます。面倒なのでミスターコンテストは今、最も処分したい男に投票して下さい』


「おぉい!?」


『…皆様、今回何よりも大事なのはミスコンでございます。投票方法はスマホより特設サイトを設けておりますのでそちらから投票をお願い致します。URLは会場の入り口やケータリングコーナー等に記載しておりますので、各自ご確認をお願い致します。既に投票済みの方も多くいらっしゃるでしょうが、期限はこれより1時間とさせて頂きます』


『投票期限後、既定数を到達した者を壇上に上げ、各自アピールタイムを設けます。その後、最終投票を行いますのでよろしくお願い致します』


(ちな)みに…これは裏情報ですが、投票結果によっては現会長との距離が縮まってしまう可能性がある人達もいるようですので投票先には十分ご注意を…私を壇上に上げて下さる方には更なる情報もお伝えしましょう。ふふん』


「…っ!?」

「み!みやこ!」


『さて、それでは十分に吟味(ぎんみ)して投票する様に、よろしくお願い致します。また1時間後にアナウンス致しますので、それまで暫しご歓談を…』


深川さんはペコリと生徒達に一礼すると、くるりと振り返り、思わず反応してしまった俺と由美姉に向かってニヤリと笑みを浮かべた。


「由美香お姉様♪…ヌードデッサン、楽しみにしております」


深川さんの満足気な表情を見て、俺と由美姉は同時に嘆息(たんそく)()らした。


暫く騒めいていた生徒達だったが、各々、投票の為にスマホを取り出したり、友人達と話し始めたり、ケータリングコーナーへ向かったりとそれぞれが動き出し始める。


そんな中、ファンクラブの面々が笑顔で近付いて来る姿が見え、もう一つ溜め息を吐き、覚悟を決めた。


「優斗ぉ!吐けぇ!!誰との距離が縮まるんじゃ!」

「先ずは拘束が先だ!」

「松本さんとくっ付いたんじゃないのかぁ!!」

「もうお前は真也とイチャイチャしてろ!」


「待て待て!お前ら!『可能性が』なんて言葉に勝手に踊らされるな。そんな可能性なんてお前らだって平等に持ち合わせてるんだからな…おい!縄で縛るな!つうか、縄なんてどっから…モガモガ」


あっという間に縛り上げられ、口にはガムテ、縄でグルグル巻きの()巻き状態にされた俺は、祭りの神輿(みこし)の様に皆んなに担ぎ上げられたのだった。


最後に一瞬だけ見えた深川さんの嬉々(きき)とした表情が忘れられない。

…深川さんに由美姉関連の取引は今後気を付ける様にしよう。


固く心に誓ったのだった。




一通り折檻(せっかん)を受け、ようやく簀巻きから解放された俺はクラスの皆んなが集まっている場所へと向かった。


「おや、今回はあっさり解放されましたね」

「一応主催者だからな、立ててくれたんだろ…と言うか、助けろよ真也」


真也は柔らかな微笑を浮かべ、ボロボロになった俺に反応する。


「それこそ『不粋(ぶすい)』ですからね。ふふ」

「ったく…」


そんな俺達を見て、恭子がぶるぶると身を震わせていた。


「ぁぁああぁああぁ!!……見える…狩りの大半を群れのリーダーたる雌ライオンである優斗がこなし、傷付いた身体を雄ライオンの真也が癒す…」


そんな恭子は新撰組の衣装に多量の鼻血を垂らしては喜悦の表情を浮かべていた。

…最早、返り血にも見えてリアリティあるコスプレになってるな。


「まったく…ほら、恭子。鼻血鼻血。アンタ…いつか本気で死ぬよ?」

「私が興奮して出欠多量で死ぬ時…それもまた本望なのよ」


呆れ顔の美玲に抱き抱えながらも爽やかに微笑む恭子は照明の光に当てられてキラキラと輝いていた。

まるで、志半ばながらも敵を討ち取り、死に行く幕末志士の姿の様で、またしてもリアリティが高まっていた。


そんな姿を美玲の傍で困った様な表情で見て微笑む霧谷さん。

…そこの世界観には絶対参加しないでね。



「優斗ー。今回の下馬評どんな感じー?」


急に隣から間の抜けたダラっとした声が聞こえたので、隣を見ると白い巨大な塊がそこにあった。


「……将吾か。何だそれ?」


白いモコモコに全身を包まれた将吾が顔の表情が見える所だけボフッと出して立っていた。


「これはねー。雲だねー」

「…相変わらず、奇想天外な奴だなお前は」

「失礼だなー。雲はのんびりしてるしー、自由だから見るの好きなんだよー」

「そっか…で?下馬評が何だって?」

「ミスコンのー。今回はタケルが取り仕切ってる訳じゃ無いらしいからー」

「俺は知らんぞ全く」

「そかー。なら無難に霧谷さんに入れとこー」


そう言うと将吾はプカプカとその場から離れて行った。

…アイツはこの学校で一番自由な奴かもな。



「ねぇねぇー!優斗くん!こっち見て見て!」


今度はくどまなの声が背後から聞こえたので振り返ると、スーツをビシッと着こなし、男装したくどまなの姿があった。

元々、身長が高いくどまなの男装はかなり様になって見えた。


「おぉ!キマってるじゃんくどまな」

「でしょ!…って、私じゃ無くて、こっち見てよ。あはは!」


くどまなの背後で恥ずかしそうな、その上、悔しげな表情を浮かべる女生徒。

アニメやゲームに出て来る様な魔法少女の様な衣装に身を包んだ美少女の姿。


…誰だ?


「ゲームして負けた方が言う事を聞くって事で、女装させたの!…タケルに」

「…ぐっ…くそ…」



「えぇええ!!!」

「さっきまで居なかったのってそう言う事かよ!」

「はははは!!似合ってるぞー!タケル!」

「…新たな扉が…」



雷に打たれた様な衝撃を受け、思わず口を開けて呆然とする。


面白がって笑う美玲や恭子、俺と同じ様に驚愕の表情を浮かべ、大きく声を上げるみんなの声がやけに遠くに感じる。


なぜ、今まで少しでも考えが及ばなかったのだろうか。


中性的な男子生徒であれば女装をする事で、『あの状況』は充分作り得ると言う事に。


襲われた当日、送られてきた写真と黒板に書かれた『あれは私』と言う文字による先入観から、脅迫状の犯人=『女生徒』と結び付けてきた。


疑いもせず、俺は安易にも容疑者を女生徒のみに絞って考えていた。


だが、もしかしたら…。


周りで笑う生徒達一人一人の表情が固まり、仮面へと変わる。

狂気の笑みを浮かべる仮面の生徒達に取り囲まれ、一人立ち尽くす俺。


くらりとした。

馬鹿げてる。

錯覚だ…。


直ぐに目を閉じ、浅い呼吸を正す為に鼻から息をゆっくりと吸っては吐き出して平静を保つ。


…これ以上の思考の更新は…。


また疑心暗鬼が加速する。


…誰か、助けてくれ。


突然、ギュッと手を握られた感触にハッと目を見開く。


「峰岸くん?…大丈夫ですか?」


「霧谷さん…」


霧谷さんだけが、真剣な表情で俺の事を真っ直ぐに見つめている。


…ありがとう。もう、大丈夫だよ。


周りの皆んなも次第に俺の反応がおかしいと気付き、ふと空気が変わり掛ける。


「…あまりの美しさに心を奪われてた。俺のフィアンセは君だ!タケル!」


「っちょ!?こっち来るなぁ!!」


皆に心配を掛ける訳にはいかない。

今は道化を演じよう。


そうして、俺とタケルは暫く会場中を追いかけっこしたのだった。

…悪いな、タケル。少しでも疑って。


出来るだけペース上げめに頑張ります。


次回もお楽しみに。

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