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50. ド派手な衣装の君達へ

50. ド派手な衣装の君達へ





北谷を引き連れ、本校舎の屋上から第一体育館へと向かう途中、コスプレ衣装を着飾った生徒達と多くすれ違った。


ドレスや執事服、ネタ衣装のモノマネ系の仮装や着ぐるみパジャマの様な出立ち、流行りのアニメのキャラクター等も多く見受けられる。


皆一様に、楽しそうに笑い解放感に満ちた表情を浮かべており、友人達と共に第一体育館へと向かう途中の様だった。


「会長!コスプレ楽しみにしてるからね〜!」

「静御前は和服なんだろうな!?峰岸!」

「ミスコンの投票迷うよなぁ…やっぱ、直接見てからじゃなきゃ…」

「優斗、あとで行くからなぁ〜」

「峰岸先輩、どうですかこのドレス!」


生徒達とすれ違う度に声を掛けられる。


その都度笑顔で返事をする俺を見て、少し後ろを歩く北谷が口を開く。


「会長さん…疲れないっすか?」

「何が?」

「何か、その…『生徒会長』としての振る舞いに…ですかね」

「自分達が企画したイベントに前向きに参加してくれてるんだ。それって嬉しい事だろ?」

「……すんません。まだ…その、分からなくって」


目を合わせず気不味そうに言う北谷。


「ははは!お前も『当事者』になってみりゃきっと分かるよ」

「………?」


俺が笑いながら言った言葉に北谷は少し首を傾げる。


そんな中、一本の放送が校内に響き渡った。



『あーあー、テストテスト…って、テスト終わったばっかりなのにぶり返すなって感じだよね!あはは』


『彩ちゃん、丸聞こえだからね!』


『リオナちゃん細かい事は気にしない!…さぁ!皆さん、テストも終わったので中間テストお疲れ様会やりますよ!』


『アハハ…まぁ良いや。もう着替えてる人もいるだろうけど、コスプレ用の衣装を各階の空き教室に沢山用意してます!…なので、自前で持って来て無い人は着替えてから第一体育館に来て下さいね♪』


『参加自体は自由参加!皆で映える写真撮ってリンスタグラムにUPしよっ♪あとは、告知してた通りミス・ミスターコンテストもやるから是非投票しに来てね!!私に!』


『あっ!彩ちゃんズルい!』



そこからバツンッと放送は切られ、もう一つ重要な立食パーティーの事について触れられずに終わったがまぁ良いとしよう。


この放送は準備が整ったら入れる様、事前に二人へ頼んで置いたものだ。


(ちな)みに、立食パーティの準備も抜かり無く数日前から業者へと委託し、俺達がテストを受け終わって確認しに向かった頃には全て会場が仕上がっていた。


そして、各階の空き教室には既に衣装のレンタル業者のスタッフさんに待機して貰い、生徒ID番号を伝えればどの生徒でもレンタル可能な状況を作り上げた。



「会長さん…これからどうするんですか?」


北谷が不思議そうに尋ねる。


…ふふふ。お前には、重要な役割を(にな)って貰うぞ。


「まぁ、良いからついて来い」


そうして生徒達が何となく楽しみとしていたイベント、生徒会主催のコスプレパーティーが始まろうとしていた。




本校舎から第一体育館へと向かう渡り廊下へ辿り着くと、生徒の多さに思わず立ち止まる。


本格的なコスプレ衣装に身を包んでいる生徒もいたが、その多くは被り物や簡単な小道具を持って参加している生徒の様だった。


気恥ずかしさもある中で、気軽に参加してくれるだけでもありがたい。



「あっ!会長だ!」


一人が俺に気付き振り向くと、周りの生徒達も同じ様に声を掛けて来る。


「峰岸、まだ着替えてないのか?」

「あれ?優斗くんまだコスプレしてないじゃん!」

「アンタ!?その子は!真也の代わりに新しい子を連れて……ぐふふふ。湧いて来るわぁ…さっすが優斗ね!」


…お前もいたのか恭子。って言うか、北谷をその手の勘定に入れるな。


「オッケーオッケー!皆通してね、直ぐに会場入りになるからもう少しだけ待っててくれ」


そう言って生徒達の間をサッサとすり抜けつつ、北谷を連れて第一体育館の裏手側へと向かった。


私立相城高校の第一体育館は通常の高校と比べても広い方だと思う。

バスケットコート三面横並びでも十分なスペースがあり、二階にはコート全体を覆う様に応援席が設けられている。


その上、体育館の裏側に繋げて併設された施設にはミーティングルームが一階と二階に二部屋ずつあり、各部活動の部室もある。更にトレーニングジムや男女更衣室、器材倉庫等も充実している。


俺は北谷を引き連れながら第一体育館の裏側から入ると、通路をツカツカと歩き、直ぐ近くのミーティングルームの扉を勢い良く開ける。


…ガチャ!


「オープニングアクト役連れて来たぞー」


そこには、既にアニマルコスプレに身を包んだ皆の姿があった。


「おっそいのです!!この羽虫!」


真っ先に突っかかって来たのは、キツネのコスプレ衣装が良く似合う深川さんだ。


足元から頭までモフモフの黄色と白の装飾の間から見える素肌の薄肌がやけに映える。


頭にはキツネの顔があしらわれたフードを被っており、俺との身長差から自ずと上目遣いの彼女からどんな罵詈雑言が飛んで来ようが可愛い物だと笑みが溢れる。


「あはは、良く似合ってるよ深川さん」

「ふん…貴方(あなた)に何を言われようが、全く揺らぎませんね。そして、ジロジロと見ないで下さい。訴えますよ」


プイッと彼女が向いた視線の先には由美姉が恥ずかしそうに立っていた。


「ゆ、優斗…。どうだろうか?」

「うお!いつもの凛とした由美姉も素敵だけど…うん。可愛らしいって感じかな」


由美姉はクマのコスプレを選択した様で、毛皮と肉球付きの手足には立派な爪が模してあった。


胸を覆い隠す毛皮にはツキノワグマを現す特徴的な月の輪があしらわれ、お尻の部分にはちょこんと小さな尻尾が見えた。


頭にはこれまた熊の顔をあしらったフードを被り、恥ずかしさで頬を染めた由美姉の元の肌の白さが特に際立った。



次に目が行ったのは霧谷さんと美玲の二人。


霧谷さんは狼、美玲は猫のコスプレ衣装に着替えていた。


「似合うでしょうか…峰岸くん」

「にゃはは…似合う?ユウ」


二人の衣装を見て思わず返答が遅れる。

二人とも綺麗だ…。


黒猫の尻尾を片手で撫で上げポーズを決める美玲と、全体的にグレーの毛色に身を包み、恥ずかしそうに頬を赤く染めている霧谷さん。

大胆にも肌が露出した格好の二人。


それぞれフードを被り、照れながらも此方を見て俺の答えを待っている。

特にこの二人は、余りにもスタイル抜群で目の遣り所に困る。


そもそも、全体的に露出が激しいのは疑問に思って(しか)るべきだと思う。


「二人とも本当に綺麗だ…それしか言えない」


中途半端な答えを返して二人から目を背けると、視線の先にコウジくんとレナさんがいた。


二人はそれぞれヒヨコとペンギンの衣装に身を包んでおり、見ただけで癒されるオーラを纏っていた。

するとヒヨコ姿のコウジくんが睨み付けて来た。


「おい優斗、何見てんだよ」

「ヒヨコ…似合ってますよ…っく……ふ…」

「レナ!やっぱりヒヨコは辞めよう!」

「ええぇぇ…折角似合ってるのにぃ…」

「っぐぐ…」


黄色いモコモコの羽根を顔に当てがい、苦悩の表情を浮かべるコウジくんの頭の上には、卵の殻付きのヒヨコ顔フードが被せてある。


そんなヒヨコにペンギンは自らの羽根で肩を優しく撫でていた。

…和むなぁ、うん。



皆のコスプレ姿を見て一息ついた頃、背後から北谷が声を掛けて来た。


「あの、会長さん…聞き間違いじゃなきゃ、『オープニングアクト役連れて来た』って言いませんでした?」


「ん?あぁ、そうだった!皆、例の一年生を連れて来たから紹介…」


…ガチャ!


「たっだいまぁ!」

「ふぃ〜。疲れたぁ!」


俺の言葉を遮る様に、ミーティングルームの扉が開かれたかと思えば新たな動物達が現れた。


彩は分かりやすく直球のパンダ、リオナちゃんは変化球でモモンガの衣装を身に纏っていた。


「あ、お兄ちゃん!どう?パンダ」

「先輩!どうですか!リオナ、モモンガバージョンです!」


二人はそれぞれ着ぐるみ風の衣装を着ており、露出はほとんど無い様子だった。


彩の来ているパンダコスプレは露出がほぼ無いとは言え、身体のラインが浮かんでいる様なタイツ風の着ぐるみで兄としては少し心配である。


リオナちゃんのモモンガコスプレも良く出来ている。


手足に張られた飛膜を布地で表し、モモンガの顔付きフードを頭から被るリオナちゃんは小動物感も相まって、とってもお似合いだった。


「意外だなぁ。彩とリオナちゃんの事だからもっと過激な格好で攻めて来るかと思ったのに」


彩は俺の言葉に「チッチッ」と指を振ると、その場にいる女性陣に対して視線を送った。


「露出すれば票稼ぎ出来るだなんて、浅い浅い…。動物園の人気者は誰ですか?パンダでしょーが!ふっふっふ…この勝負、貰った!」


得意げに笑う彩へ由美姉と美玲はキッと睨んでいる。


「リオナちゃん凄く似合ってるね。モモンガって所もセンスが良いかも」

「アハハ!さっすが優斗先輩!ありがとうございます♪」


そんな中、俺はリオナちゃんの頭を撫でて微笑む。

…周りの視線が痛い。



視界の端で犬耳とサングラスが置かれてあるのを見付けて拾い、背後にいた北谷へ渡す。


「コホン…。さて、そろそろ紹介しよっか。今回のオープニングアクト役にと思って連れて来た、北谷。一年生だ。雰囲気だけでも良いからそれ付けとけ」


その場にいた皆の視線を受け、一瞬だけ緊張した様子の北谷の肩に手を置く。

…元々、物怖じしないタイプだったみたいだけど、長らく人と関わって無かった事で気性に変化があったのだろう。


「今は、名前とよろしくで良いさ」


「…北谷 光輝っす。訳も分からず連れて来られました。よろしくお願いします」


北谷の挨拶に皆、口々に「よろしく!」「よろしくお願いします」など挨拶を返す。

そんな中、彩だけはジッと北谷の事を見つめ続けていた。

…やっぱり気になるんだろうな。



「うっし!そろそろ時間だし始めるか…コウジくん、例の楽譜って用意してます?」


「ん?あぁ、言われた通り用意して『入れて』来た」


「はは、流石っすね。…あれ、真也は?どこ行った?」


そう言えばと辺りを見渡すが真也の姿が見えない。


…ガチャ!


ミーティングルームの扉が開かれ、待っていたと言わんばかりのタイミングで真也が現れたかと思うと俺を見て薄く微笑む。


百獣の王、ライオンのコスプレ衣装の真也。

片手には同じ様な色合いの衣装を持ち、俺へと差し出す。

…ペアルックじゃあるまいな。


「お兄ちゃん…私チョイスだから信頼してよね」


背後で親指をグッと立ててウインクする似非(えせ)パンダ。

…急に心配になって来た。


まだまだハロウィンには程遠いのに

仮装やコスプレするイベントがある。

そんな自由な学校があっても良い。


さて次回も、お楽しみに。

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