48.会長席への視線
48.会長席への視線
リオナちゃんの提案通り生徒会室へ移動し、皆で勉強をする事にした。
中間考査後のお疲れ様会についても指示を出そうとしていたので丁度良い。
生徒会室前には、由美姉と深川さん、レナさんとコウジくんを除く生徒会メンバーが集まっていた。
由美姉はもう着いてるだろうか?
そんな事を考えつつ、俺はノックもせずに生徒会室の扉を遠慮無く開ける。
…ガチャ。
目の前の光景を見て俺達はピタリと動きを止める。
そこには男女二人の姿。
レナさんがコウジくんに茶菓子のくず餅をアーンする直前で止まっていた。
あぁ…。
二人のさっきまでの会話が手に取る様に分かる。
きっと、コウジくんへレナさんが茶菓子を勧めたのだろう。
レナさんの傍にあった茶菓子をコウジくんが「取ってくれ」と言い、レナさんが「誰も見てないし♪」と差し出し、あくまで空気を読んだコウジくんは「なら、一口だけ」と口を開けたのだろう。
そんな奇跡のタイミングに俺達は遭遇し、彼等の偶然のイチャ付きを目撃した。
俺は思わず二人に声を掛ける。
「あ、続けてどうぞ」
「「いえ、お構い無く……」」
他の皆は無言でニヤニヤと二人へ視線を送る。
固まりつつダラダラと冷や汗をかく二人。
…ノックは必要ですね。すみません。
霧谷さんは頬を赤らめながらも、何処か羨まし気に見つめており、リオナちゃんは満足気な表情で何度も頷いていた。
美玲と彩は固まる二人を如何にして弄ろうか企む様に下卑た表情を浮かべ、ゆっくりと生徒会室へと侵入して行った。
俺は真也に止める様に目配せを送り、会長席へと向かい、空気の入れ替えも加味して窓を少しだけ開けてから座った。
因みに、レナさんとコウジくんは決して付き合い始めた訳では無い。
だが、今までよりも明らかにグッと距離感が縮まった様だ。
…ガチャ。
「おや、我々が最後だったか。……?何かあったかな?」
丁度良いタイミングで由美姉が登場し、場の空気に違和感を持ち誰にともなく問い掛ける。
後ろには深川さんの姿もあった。
「いや、特に何も…。皆、一旦座ろうか」
「コホン。…お前達もサッサと座れ」
由美姉への返答と同時に皆にも呼び掛ける。
すると、俺の一言に追随する様にコウジくんが色めき立つ女性陣へと声を掛けた。
彩と美玲は既に真也により視線で嗜められていたが、未だ興奮中のリオナちゃんは残念そうに「ちぇーっ」と呟いた。
そんなリオナちゃんの頭を優しく撫で、微笑みながらも席へと誘導する霧谷さん。
…やはり、あなたが聖母マリアか。
その後、皆で教科を分けて軽く勉強した。
休憩中、レナさんが俺に近付き小声でこそこそと話してくる。
「この前の御前ちゃんとの話し合い…上手くいかなかったの??」
「あぁ…えと、結局二人きりでは話せなかったんですよ」
少し言い淀むが、レナさんの真剣な表情を見て小声で返す。
すると、レナさんは少し霧谷さんの方へ視線を向けると困った様に微笑む。
「御前ちゃんね〜。ここ数日、優斗くん達が図書室で勉強して居ない時…ずっと物憂げな表情で会長席を眺めてるんだよ」
レナさんの言葉に心臓が高鳴る。
思わず、霧谷さんの方へ視線が向く。
目が合う。
彼女は少し照れた様に微笑んでいた。
「…優斗くん、男の子でしょ!頑張って!」
レナさんはそう言うと、そそくさと俺の傍から離れ自分の席へと戻って行った。
…頑張って、か。
その後、全体の話題は中間考査後のお疲れ様会の話へと移行していく。
「今回は体育館を使って立食パーティー風にしようかと思ってるんだけど、どうかな?一応、衣装についてはレンタル業者に委託しようと思う。用意の無い生徒達も交ざれる様にね。それで、俺達の衣装についてだけど…」
「はいはーい!!お兄ちゃん!皆の衣装については私とリオナちゃんに決めさせて!初仕事として、ちゃんとこなしてみせるから」
「何か…そこはかとなく不安だけど…まぁ、良いか。そこまで言うならサンプルとして貰ったリストを渡すから任せるよ」
「やたっ!」
「余りにも過激なのはNGだからな」
「ふっふっふ、ギリギリなラインの見極めだね!お兄ちゃん」
「発注に関して決まったら…必ず俺か真也に言うんだぞ」
「先輩!任せて下さい!勉強するより、よっぽどヤル気入りますからね!」
「リオナちゃんは、もう少し勉強に集中しよっか…」
彩とリオナちゃんが身を乗り出す程のヤル気を見せている。
「おもてなしパーティーとは言ったけど、基本的には誰でもコスプレOKにして、個々人で楽しんで貰う形にしようか。…あとは、出し物みたいな物があった方が盛り上がりそうだし…ミス・ミスターコンテストinコスプレとか…」
「「「「「…っ!!」」」」」
俺の言葉にその場にいた皆がピクリと反応し、隣で由美姉は「ふふふ」と薄く笑った。
「確かに…ただの立食パーティーだけだと盛り上がりに欠けるな。やはり勝負事が無いと…」
由美姉の笑みに呼応するかの様に、彩、美玲がピクリと反応し俺を見る。
「さっすがお兄ちゃん!…ならコスプレ衣装は一人一人ちゃんと自分で選んだ方が良いね。ますます楽しみになって来たぁ!」
「にゃはは〜、勝負…ね。それなら何か景品が欲しいよね〜」
美玲の物欲しそうな視線に一瞬たじろぐ。
「…何が言いたいんだ?美玲」
「んん〜。そうだなぁ…なら、私が見事コンテストで優勝したら、1日デート券で♪」
「…っ!?」
今まで何の反応も見せずにいた霧谷さんが大きく反応し、こちらを真っ直ぐ見つめる。
そして、恥ずかしそうに俯きながら口を開いた。
「峰岸くん………私も、優勝したら…1日デート券をお願いします」
生徒会室に緊張感が走る。
「ほう…良いだろう。では、優斗との1日デート券を掛けて勝負だ、霧谷嬢、美玲よ」
由美姉が霧谷さんへ睨みを利かせ、同時に美玲にも視線を送り、目配せし頷く。
「ちょっと!勝手にお兄ちゃんを取り合わないで!」
「由美香お姉様!こんな羽虫とのデートなんかより私との1日デートを!」
「先輩!面白そうなので、私も参加しますね♪」
各々言いたい事を言っては、俺へと視線を向ける。
「ふふ、モテモテですね優斗」
相変わらず余裕そうに薄く微笑む真也。
「私はミスコンとか別に良いかな…コウジくんにさえ見て貰えれば♪」
「んん…レナも良いところまで行けると思うけどな」
視界の端でレナさんとコウジくんが照れながら話しているのが見える。
…バカップルかあんたら!
「……分かった。なら生徒会から改めてミス・ミスターコンテストinコスプレのイベントについて正式に発表しよう。あと、生徒会メンバーから参加する人は景品とは別に自分の希望を言って置いて。…出来るだけ叶える様に善処するから」
俺の言葉にバチバチと燃え上がりを見せる幼馴染達と霧谷さん。
リオナちゃんは「アハハ、面白くなって来た♪」と楽しそうに微笑む。
そんな中、面白く無さそうにそっぽを向く深川さんの姿を見て閃く。
「ふん…」
「深川さん…由美姉に絵のモデルになって欲しいんだったよね?」
「……っ!!!??そ、その手が…私も参加します!」
…ちょっと、強引な気もするけど…まぁ良いだろう。
「そうだ。コスプレの衣装だけど…。生徒会で統一感は出しておきたいから、コンセプトを一つ決めてそこから各々選択するって事で。…じゃ彩、決めてくれる?」
彩が先程渡したリストにサッと目を通す。
そして、しばらく考えた後、ゆっくりと口を開いた。
「コンセプトは…アニマルコスプレだよ!」
かくして、中間テストお疲れ様会の『生徒会全員コスプレおもてなしパーティ』は新たなイベントをプラスして行われる事となった。
…先ずは、中間考査に集中しないとな。
学生の本分は勉強。…ですが、
想い出を作る事も大事ですね。
さて、次回もお楽しみに。




