44.イメチェン女子と中間考査・前編
44.イメチェン女子と中間考査・前編
本日、月曜日。
相城高校の年間カレンダーによると生徒会改選信任投票日である。
本来、この日に新生徒会の発足となる予定だったのだが、中間投票日に全てが決し、既に仮で新生徒会を発足している為、予定自体キャンセルされた。
そして、他生徒から生徒会へ入りたいと言う声も特に上がらず、そのまま発足の運びとなった。
やはり身内で固めていた以上、外から入ろうにも気後れしたのだろう。
さて…。
もう一つカレンダーに記載された項目、中間考査の為の準備期間として、今週から『ある期間』が始まる…。
いわゆる『テスト勉強期間』だ。
中間考査は月の最終週の月曜日から木曜日までの四日間。
その前の週である今週の月曜日から丸々一週間、部活動などは原則として活動休止。
代わりに勉強に勤しみましょうと言う事なのだが…。
ここでも相城高校の『自由』が便利に扱われ、勉強に励む者、部活動が無いからと大々的に遊びに出る者など反応は様々。
まだ今日は初日の月曜日。
ゆっくりまったりとテスト勉強をしようと言う事で、新旧生徒会メンバーは生徒会室へ集まる事となっていた。
放課後。
チャイムが鳴ってから数分も経たず、2年B組の教室へ彩とリオナちゃんが勢い良く入って来るや否や、俺の胸に二人揃って飛び込んで来る。
丁度、生徒会室へ向かおうと椅子から立ち上がり、霧谷さん、真也、美玲へと視線を交わしたタイミングだった。
「お兄ちゃん!」
「優斗先輩!」
「お、おい!何の騒ぎだ?」
「「私の方が早かった!」」
ほぼ同時に声を上げたかと思えば、そのまま二人は俺の目の前で火花を散らせる。
「…何なんだ?彩」
「お兄ちゃんフラッグだよ」
「は?」
「先輩版、ビーチフラッグです」
…そう言う事か。
「アンタ達ねぇ…ユウを使って変な遊びしないの」
「ふふ、彩ちゃんもリオナちゃんも元気一杯ですね」
俺が二人の争いに呆れていると、霧谷さんと美玲が苦笑しながら傍に近寄って来る。
真也もその後ろで微笑みを浮かべつつ、移動するのを待っている。
「ほら、さっさと行くぞ」
「お兄ちゃん的にはどっちが先だった!?」
「私ですよね?…ですよね!?」
「勝ったらどうなるんだよ…まったく」
「お兄ちゃんの身体の一部を持ち帰れるの」
「…ぉ怖っ!!?」
下級生の女の子二人に抱き着かれた俺に対し、クラスの男子達からヘイトが溜まっていたのを感じたが、彩の一言により尻すぼみ気味に霧散して行く。
皆、冗談だからな…。
教室を後にすると、丁度A組の方から深川さんが現れ、合流し皆で生徒会室へ向かう。
3年生の面々は先に着いてるだろうな…。
そんな事を考えて、生徒会室の扉を開いた。
のだが…。
…ガチャ…………バタン。
「…ねぇ。お兄ちゃん…」
「…あぁ、言いたい事は分かるぞ。彩」
俺達兄妹は生徒会室に入ると同時に『見知らぬ清楚系美少女』へクルリと背を向けると一旦、生徒会室の扉を閉めた。
そして、顔を寄せ合い声を抑えつつ小声で話し始める。
入り口付近で立ち止まり、振り返った俺達を不思議そうに見守る美玲達。
「何をコソコソとしていらっしゃるのですか?馬会長」
しっかりと彩を除き、俺のみを蔑みの眼で見る深川さん。
…馬鹿と会長を合わせて呼ぶな!
「あの…中に、誰か知らない美少女が…」
「コホン…私が先に行きます」
「おいコラ!思いっきり私欲じゃねぇか!?」
「黙りなさい…半世紀は黙ってなさい」
彩の言葉に目を輝かせながら生徒会室の扉に手を掛ける深川さん。
余りに分かりやすい行動に思わず生徒会室の前を塞ぎ、ストップをかける。
「退いて下さい!私が真っ先に…」
「一応黙ってたけど、深川さんって全く由美姉一筋じゃないよね!?」
「な!?…なんて事を…」
そんな事を言い合って揉めていると、廊下の先から由美姉が歩いて来るのが見えた。
「あ、由美姉…」
「由美香お姉様ぁ!」
ビュンと音がする程の振り返りを見せ、廊下を風の様に走る彼女の背中を見て、溜め息を一つ。
…タガが外れた深川さんの羽根の伸ばし様ったら無いな。
彼女の心の扉に厳重に掛けていた鍵を開けさせたのは俺だ…。
深川さんを生徒会へ引き入れた際、「誰かを好きな感情に偏見なんて持たないから、俺達の前では『好き』を隠さないで良いよ。…ヌードデッサン好きは単純に引くけどね」と彼女へ伝えた。
それがこんな暴走化を許すとは…。
「美耶子、落ち着け」
「はい…お姉様」
由美姉の一言でピタリと暴走を止め、従順に従う彼女を見て思う。
…当分、由美姉に首輪をして貰おう。
そう考えて腕組みしながら頷いていると、反対側の廊下からコウジくんが一人で歩いて来た。
「お前ら生徒会室の前で一体、何してるんだ?」
「えぇと、ちょっと知らない生徒が来てたから確認を…と思って」
…ガチャ。
生徒会室の扉が急に開かれたかと思ったら、中から件の『見知らぬ清楚系美少女』が出て来た。
「ちょっと、皆、入らないの?私だけ先に着いて暇してたんだからぁ…って、何?」
「声、レナちゃん…じゃん」
彩の声に皆沈黙し、謎の美少女へ視線を送る。
急に皆の視線を浴びて恥ずかしそうに頬を赤らめた美少女は、微かにレナさんの雰囲気を醸し出していた。
あくまで一途な彼女。
関係の変化は訪れずとも、
気持ちの変化は大きく動く。
次回、テスト勉強と『一つの嘘』
お楽しみに。




