38.悪の正義執行
38.悪の正義執行
俺と真也は直ぐにアプリを開き、美玲の現在位置を確認する。
「場所は…別棟校舎の方だ!行くぞ真也!」
「はい!タケルは…一度教室へ戻って下さい」
俺と真也は急いで生徒会室を出る。
…タケル。悪いが緊急事態だ。
「え?…何?何なの!?このアラーム!…って…行っちゃったよ」
生徒会室を後にし、脇目も降らず猛ダッシュで廊下を駆ける二人。
生徒達からの視線を浴びている気がするが、そんな事はどうだって良い。
今は、美玲の下に向かう以外の選択肢は存在しない。
『脅迫状の犯人』による犯行なのか?と、一瞬考える。
…だとしたら白昼堂々と何て奴だ!!
でも、確かに俺からするとタイミングは最悪だった。
もうすぐ中間選挙演説が始まろうと言う最中、まるで見透かした様なタイミングで…。
…クソッ!やっぱり誰かの意図が働いている!
本校舎から上履きのまま外に出ると、一心不乱に別棟校舎への最短距離を走る。
真也も息を切らせずに着いて来ている。
走りながら、スマホの画面に映し出された位置情報を再度確認する。
別棟校舎裏を指し示している。
ここからだとほんの数100メートルと言った所だ。
…もう少しだ!!待ってろ!美玲!
別棟校舎へ辿り着いた時、ある女生徒がキョロキョロと辺りを見回しながら歩いているのが見えた。
…深川美耶子?まさか!!?
「深川!!」
「ヒッ!?な、何!?」
深川美耶子は驚愕の表情で、声を荒げた俺を見て狼狽えつつ凝視する。
…面食らう表情とはこの事だ。
「優斗!決め付けはよくありません!無関係の可能性も…」
「真也…分かった。深川さん、ここで一体何をしてるの?」
俺は真也の言葉を受けて、少しだけ冷静に問い掛ける。
…こんな場所にいる事がそもそもおかしい。
「わ、私は霧谷さんを探しに…ここまで。本校舎にて外を眺めておりまして、誰かを見付けたのか急に席を外して…」
「…霧谷さんが!?」
…まさか、本当に脅迫状の犯人…だったのか!?
驚いた俺を見て、顔を退け反らせる深川美耶子。
「優斗!今はそんな事よりも!」
真也が俺を急かし、別棟校舎裏へ視線を向ける。
「…落ち着きの無い人達ですね。あなた方は、生意気で、もっと余裕綽々な方々かと思っておりました…」
深川美耶子は俺達の慌て様に、気持ちが冷めて落ち着いて来たのか、毒が籠った言い回しをしてくる。
…悪いが、構ってられる程暇じゃ無いんだ。
「行くぞ!!」
「な、何なんですか一体…」
深川美耶子を残し、俺と真也は直ぐ近くの別棟校舎裏を目指し全速力で走る。
最後の角を曲がる。
信じ難い光景がそこに広がっていた。
目の前に女生徒を担ぐ制服の男。
裏門から見える黒いワゴン車。
意識を失っているであろう女生徒を車道に寄せた車へ担ぎ込んでいる男が見えた。
…あの女生徒は霧谷さん!!!?
「オイ!!!何してんだテメェ!!!!!」
頭の中が瞬間沸騰した様にカッと熱を帯び、身体を前へと走らせる。
俺の叫び声にビクッと反応した制服姿の男は、「兄ちゃん早く出して!!」と言いつつ霧谷さんを後部座席に放り込み、助手席の扉を開けて乗り込む。
その瞬間、後部座席にもう一人の脚が見えた。
…待て!!霧谷さんだけじゃ無い…美玲も乗せられてる!?
「ィイィャァァアア!!!??」
背後で脳天を刺す様な叫び声が聴こえる。
俺達の後を着いて来た深川美耶子だ。
二人とも絶対に、助ける!!
辺りがスローモーションになったかの様な錯覚に陥る。
届け!!
手を伸ばすが、届かない…。
…バタン!!ブォォン!!
「クソがぁぁああ!!!!」
ほんの1メートル先で急発進して走るワゴン車を見送る事しか出来ず、その場に膝を打って転ぶ。
「お兄ちゃん!!!みーちゃんは!?…もしかして…」
「優斗?嘘だよな…嘘だと…言ってくれ」
「………っはぁっ…はぁ。ユウ兄!シン兄!」
背後で彩と由美姉、そして真帆ちゃんの声が聞こえる。
アラーム音は全員に鳴らされた。
俺達と同じ様に直ぐに駆け付けたんだ。
皆、息を切らせていた。
奴を絶対に許さない。
「真也ぁぁああ!!!瑞希くんに連絡してくれ!俺はこれから何が何でも追っ掛ける!!先行して巡回中の奴をこっちに寄越す様に言ってくれ!」
「…はい。呼ぶんですね『彼等』を…」
俺は近くの自転車置き場へ走り、ズラッと並べてある自転車の一つを拝借する。
…カギ掛かって無いのは不用心だ。
そこからはスマホの画面に映し出された位置情報を頼りに全速力でペダルを漕いだ。
〜Another side〜
…声が、聞こえる。
(ハッハァッ!!!やった!遂に美玲様を!しかも、ついでに…静御前までゲット出来るなんて最ッ高だぁ!!ハァッ!ハッハァ!!)
(オイ!本当に大丈夫か!?こ…こんな事になるなんて思わなかったから…)
(何言ってんの!…兄ちゃんも、俺の後で…さ?)
(…………っごく。…ど、どこに行けば良いんだ?)
(町外れの廃材置き場が良い…それにしても、峰岸の奴……クックハハハハ!!!ぶっ倒れてやんの!!)
男の下卑た笑い声が車内に響く。
頭がガンガンして仕方が無い。
催眠スプレーの様な物を浴びた気がしたけど、咄嗟に顔を逸らし直撃を避けたお陰か、スマホの画面に触れる時間は確保出来た。
その上で一瞬だけ意識を持って行かれただけで済んだ様だ。
今は下手に身動きは取らない方が良い。
幸い拘束等はされていない。
…時間が無かったのだろうか?
奴等は油断しているみたいだ。
とにかく、ユウ達が助けに来るまで…何とか耐えるしか無いかな。
単調なラブレターの呼び出しにサッサと済ませるかと油断した自分が悪い。
…あぁ、何か考えていないと身体の震えが止まらない。……怖い。
…?
足下に…誰かいる?
チラリと目を開き、足下を覗く。
嘘だ…。
いつの間に霧谷さんが…。
男臭い車内にまるで似つかわしく無い、お姫様の姿。
彼女も拘束等はされておらず、無造作に詰め込まれた感が否めない。
…筆跡鑑定の件があってから彼女とは距離を置いたものの、こんな状況にあって他に信じられる人もいない。
断定する事は出来ないが、これは恐らく単純な誘拐事件だ。
「………っん……」
そんな事を考え始めた瞬間、パチリと目を開く霧谷さん。
起きたばかりの彼女は驚きのあまり声を出しそうになるが、咄嗟に口元へ人差し指を当てて「シィーー!」と言うジェスチャーをする。
霧谷さんはまだ状況が掴めずにいた様だが、段々と身体を小刻みに震わせ私を凝視する。
そして、小さくコクリと頷いてくれた。
さぁ…ユウが来るまで二人で耐えるんだ。
…キキッ!
車が停車した音が聞こえた。
霧谷さんと目が合う。
決意の眼差しをこちらへ向けている。
…さぁ、時間を稼ぐよ!
「さぁ!!…到着到着♪んぐふふふ…早速、美玲様から頂いちゃおうかなぁ…ブェヘッ!!!??」
助手席に座っていた制服姿の男がクルリと振り返った瞬間、私は右手で思いっ切り「バチン!」とビンタを食らわせる。
「出るよ!静!!」
「はい!!」
「な、何が…っ…待て!!!」
「……っ…はふぉ………」
私達は後部座席のドアを素早く開けて、外へ飛び出す。
車内では窓の外を覗く事が出来ずに、場所の状況が掴め無かったが、どうやら話通り町外れの廃材置き場にいるみたいだ。
車から出た方向が悪かった…。
外へと向かうべきなのに、奥側へ出てしまった様だ。
…こうなったら、仕方無い。
「あっちへ!…隠れるよ!」
「倉庫の裏…分かりました!」
私の指し示す方へ静は迷い無く走る。
今まで距離を置いていたと言うのに…本当に彼女とは呼吸が合う。
いつの間にか彼女を名前で呼んでいる自分が自然に思えて来る。
「待ちやがれぇ!!」
背後から運転していた男が必死になって走り迫る。
私達に追い付けるかな?
…静も、私も男子に負けない運動神経は持ってるんだから!
「あぁ……イッテェェ!っクソ!…大丈夫…兄ちゃん。あっちは倉庫の中にしか逃げれないから…ドアの外にさ………」
振り返ると先程ビンタを食らわせた男がもう一人の男へ呼び掛け、ニヤニヤとしながら小走りで着いて来ていた。
…この場所を知らない事が不利に働く。
大きな倉庫の裏手へ着くと、行き止まりの様に廃材が重なって積まれており、倉庫内へ裏口から入るしか無い様だった。
…しまった。もう少し開けた場所に逃げれば良かった…。
「美玲さん!!仕方ありません!中へ…」
「待ちやがれぇ!ハハハ!」
振り返ると直ぐ側まで『兄ちゃん』と呼ばれた男が迫っており、致し方無く倉庫内へ二人入ると内鍵を閉める。
「ゥオラァ!!!」
…ガタッ!ガタタ!!!
外で廃材が倒れた音がした。
…ま、まさか。
「おっしゃ!やったぞ!……これで…」
ドアの外で声が遠ざかって行く。
バクバクと心臓の音が鳴り止まない。
隣で静が私の手を取って引っ張る。
「美玲さん!!正面から出ましょう!」
「ざぁんねぇんだったねぇええええ!!」
広い倉庫内に声が響く。
静の声が掻き消され、正面にある大きな扉の前に男の姿が逆光し黒い影に見えた。
「……っ」
やってしまった…。
思わずその場にストンと膝を付く。
「美玲さん!!」
静が私の両頬に手を当て、目を合わせて大声を上げている。
「私が囮になります!その隙に…走って逃げて下さい!」
私はどんな顔をしているのだろうか?
情け無い顔をしているだろうか?
……静の事は、何があっても護り通す。
近付いて来る影は二つ。
後から来た男の手には缶のスプレー。
ご丁寧に催眠スプレーを車から取って来た様だ。
震える脚に力を入れ、何とか立ち上がる。
こんな奴等なんかに…絶対に触れさせない!
…ブォン!!パァン!ブォォオオン!!!!
外から一台のバイクの音が聞こえる。
…あぁ……来た。間違い無い!
私は静へ微笑み掛ける。
「大丈夫…静。私達の勝ちだよ」
「…み、美玲さん?」
男達の狼狽える声が聞こえる。
そして、程なくして愛しのユウの声が聞こえた。
〜Another side end〜
倉庫へと入り霧谷さんと美玲、二人の姿を見て無事を確認する。
「何とか間に合ったみたいだ…。助かった、えっと…シンイチ、だよな?」
「そうそう!今の巡回時間、俺で良かったわ…お陰で、噂の『優ちゃん』の喧嘩が見れるし……ゴミをぶっ潰せる」
「み、峰岸!?…どうやってここが!?それに、ソイツは…」
制服を着た男が派手に騒ぎ立てる。
左頬が真っ赤に染まってる。
…美玲にビンタでもされたか?それだけじゃ、済まねぇからな。
「シンイチ…悪い。アンタに出番を与えてやれねぇかも…」
「…そっか…ま、そうだな。なら、大人しく『優ちゃん』の喧嘩でも見てっかなぁ」
シンイチは近くの廃材の山にドカッと座ると、ライダースジャケットのポケットからタバコを取り出し、中から100円ライターとタバコを一本取ってプカァと一吸いする。
黒の短髪で右側頭部を刈り上げ、左側頭部を五本均等に線を伸ばす様に刈っている。
本人は気に入っているヘアースタイルだが…昔チラッと会った時、瑞希くんに「タハハ!五線譜じゃん!カエルの歌描こうぜ!優ちゃん」と馬鹿にされていたのを思い出す。
「ボケっとしてんじゃねぇぞ!!ゴラァ!」
真横から廃材片手に振り下ろして来る男。
視界に捉えると、すんでの所で避けて伸び切った腕をグイっと曲げて肘の関節を外す。
「ギィャァァアア!!!…腕が……」
「兄ちゃん!!!…ッグゴオ…」
近寄る制服の男に容赦無く水月へ一撃。
瞬時に無力化した。
腸が煮え繰り返っていたが、奥から走って来る二人を見て安堵の方が勝った。
コイツらにはこれから地獄が待っている…。
…これぐらいにしておくか。
あと、一つ確認で聞いておかなければ。
「おい、『脅迫状』の犯人はお前か?」
「…がはっ。…脅迫状?…そ、そんなの出してない!」
…違う、か。途中からそうじゃ無いかと思っていた。
「ユウ!」
「峰岸くん!」
美玲と霧谷さんが同時に胸に飛び込んで来る。
「私達…何もされて無いから!静が守ってくれたの」
「いいえ、美玲さんに助けて頂いたんです」
二人とも震えているのが分かった。
俺は…情け無い自分を顧みて涙を堪えながら、二人の女の子を抱き締めた。
…本当に、無事で良かった。
…ブォン!!ブォォオオン!!!!パァン!ブォ!ブォ!!!ブォォン!!
…来たか。
外から20台程のバイクの音が聞こえ、開け放たれた扉の向こうから大勢の男達がやって来る。
ALONE。
そう記された特攻服を着た男達が、倉庫へ押し入ると俺達を瞬時に囲む。
その中の一人、黒に金メッシュの髪を逆立てた男が俺の方に近付いて来る。
身長は美玲と同じぐらいで170cm前後。
日焼けをした事が無い様な真っ白い肌に、くりっとしたつぶらな瞳…。
「よっ!優ちゃん…この前ぶりだねぇ。こんだけしか集まらなかったけど…全然大丈夫か…」
「…悪いね瑞希くん」
「いんや、全く問題無し!……ソイツら?」
「うん。この街に住んでて…まだ明るい所では知らない奴がいるんだ。頼むよ」
「俺もまだまだ未熟だねぇ…タハハ」
瑞希はパッと視線を奴等に送ると、ギンッと睨む。
「ヒィ!??……な、なんだよ…け、警察は?」
「テメェがそれを言うのかよ…」
俺は余りにもお粗末な物言いに呆れて、溜息を吐く。
「少年院なんて…直ぐに出て来てやるからな!」
「いいや…テメェらが向かう先は地獄だ。きっと、テメェらがしようとした事の恐ろしさが分かるさ…」
「な、何…何を言って…」
…ギョワン!!キィィキキキッッ!!
倉庫の外で音が聞こえる。
俺達を囲む男達がサッと横に避けると、丁度瑞希くんの背後に黒いハイエースが派手に音を立てて停車する。
…ガラガラ!バタン!
「「ハァァア〜〜ンィイイ♪」」
筋骨隆々な大型巨人のオネエ達がハイエースの中から現れた。
「ヤダァ!!ユウちゃぁん!!イイ男になってる!」
「育ってる育ってるぅ!!そろそろアタシ達我慢しないわよぉ!!」
オネエ達は俺を見付けるとザザッと近寄りつつ、ふんふんと匂いを嗅ぎ出す。
近付いて来る二人の姿を見て、俺に抱き着いていた霧谷さんと美玲は咄嗟に離れていた。
「「……あぁ、格別…」」
「…………」
「はぁ……」
俺の傍で茫然とした表情をする霧谷さんと、額に手を当てて溜息を吐く美玲。
「あの…峰岸くん。この方々は…」
「この辺りを締めてる暴走族で…この人達は…」
「何この子!?お高く止まっちゃって!」
「安く無いわねぇ!!綺麗過ぎるのは罪よっ!!」
「あぁもう、うるせぇ!…この人達は瑞希くんと同い年で、婦女子暴行撲滅シスター。通称、FBB・姉妹って言って…うん、面倒だわ。ユウキとアツシってオネエ兄弟です。よろしく」
「「ヤダァァァアア!!」」
「タハハ!さっすが優ちゃん、分かってるねぇ!」
瑞希くんが笑いながら美玲へ視線を送る。
「ミレちゃん!久しぶりじゃん!」
「ミ、レ、イだっての!」
「タハハ!相っ変わらず、可愛いね!……って、何?ソイツらミレちゃんに手出そうとしてたの?」
またもやギンッと奴等を睨む瑞希くん。
既に多数の暴走族に囲まれ、恐怖で体の震えが止まらない奴等。
瑞希くんはそのまま霧谷さんへ視線を移し、ニカッと少年の様な笑みを見せた。
「初めまして!悪の正義執行がモットーの暴走族ALONEの総長、神部 瑞希、18歳です。よろしくネ!」
「…あ、あの、はい。霧谷…静です」
霧谷さんは初めて暴走族と会って緊張している様だった。
「大丈夫、そんなに怯えなくても。…瑞希くん達は一般的なイメージの暴走族とは違って堅気には絶対に手を出さないから。喧嘩好きなバイクチームって感じかな?こう言う犯罪行為に手を染める奴等には容赦無いけど…」
「優ちゃんとは喧嘩したいから手を出すけどねぇ!タハハ!」
「瑞希くんとは二度としたくねぇよ…ったく、喧嘩狂いなんだから…」
俺はそう言って肩を竦める。
霧谷さんはジッと瑞希くんの事を見つめた後、俺の制服の袖をギュッと握った。
「俺達は普段、こう言う悪い奴等を専門に喧嘩したり『教育』してやってんだ。ただ…モチロン、良い人間の部類じゃぁ無い…タハハ」
瑞希くんはそう言うと暗い顔で微笑む。
そんな瑞希くんを真正面から見定めるかの様に凝視する霧谷さん。
「私は…峰岸くんを信じてますから…。その峰岸くんのご友人の方なら…全く問題ありません」
「タハハ!良い子だねぇ…。優ちゃん、大事にするんだよ」
瑞希くんは優しげに霧谷さんへ微笑み、俺へと呼び掛ける。
「優ちゃん、また今度会う時はアッツイ喧嘩しようぜぇ」
「俺に得ねぇから嫌」
「なら可愛くてイイ子紹介するよ!優ちゃんと知り合いたいって女の子多いんだぜ!」
瑞希くんが親指をグッと立てながら満面の笑顔でそう言うが、美玲と霧谷さんの表情を見て「タハハ」と笑った。
彼女達はジトーっとした目で俺を見ていた。
「優ちゃんはハードルたっかいなぁ!」
「だからこそ、燃えるわよねー!ウフ」
「滾るわよねー!ウフ」
「…さっさと行ってくれ。そして、二度と女の子を襲おうだなんて考えられない様、たっぷりと『躾けて』やって」
「久々よねぇ!!ノンケ喰いって!!」
「今、そんな奴ら居ないからねぇ!!」
美玲を襲おうとした奴等は恐怖の表情のまま、姉妹達にヒョイっと担がれると黒いハイエースに詰め込まれていた。
そして、大勢の族員達に見送られながら、何処かへと消えて行った。
族員達は皆、敬礼したり手を合わせて拝んだりしている。
…因果応報って事だ。
「じゃ、悪いけど頼んだよ。瑞希くん」
「タハハ、イイって事よ!…オラァ!お前ら行くぞ!!」
「「「「「オッシャァァアアア!!」」」」」
…ブォン!!!ブォォン!!パァン!!ブォ!ブォォオオン!!!
大勢の族員達がバイクの音を掻き鳴らしながら、俺達の下から去って行った。
その場に残された俺達三人は、暫く動かずに彼等の後ろ姿を眺めていた。
「終わったのでしょうか……。そして、これで良かったのでしょうか…」
「良くは無いかな…正攻法でも何でも無いし、本来の正義とは真逆だよ。…でも、襲われる恐怖を知らない者は少年院から出た後もまた繰り返す。…更生したなんて口では何とでも言えるさ」
「実際、そんな事言ってたもんね…」
俺達は寄り添い合いながら尚も動けずにいた。
そう言えば…。
瑞希くんとの出会いは衝撃的だったな…。
中学の頃、ウチの学校でカツアゲされてる友達を助ける為に、真也と一緒に繁華街近くの中学校まで出向いた事があった。
当時まだ、暴走族を結成する前だった瑞希くんとそこで初めて会う事となる。
丁度、中学校の校門で待ち構えていた俺達の前を二人のヤンキー中学生が素通りする。
学校の友達が指を差して、「あ、あの人…」と言った先は瑞希くんの隣にいた奴。
俺と真也で話を付けに声を掛けると、ソイツはカツアゲした事を完全に否定。
瑞希くんは初対面の俺達に向かってガンを飛ばし、「テメェら俺のダチに何言ってくれてんだ?」となり近くの高架下へ場所を移し、そのまま喧嘩へ発展。
俺は真也に手を出すなと伝え、一人で相手をする事になったのだが…。
瑞希くんの強さはハッキリ言って異常だった。
葛木家の道場で古武術を散々叩き込まれて来た俺が、勝てるかどうか怪しい程に打ち合い、組み合い、投げ合い、壮絶な喧嘩となった。
結果的に、瑞希くんの友達がビビってカツアゲした事を洩らし、互いにボロボロになる程の喧嘩をした俺達は二人で大笑いしてソイツをぶっ飛ばした。
ソイツには学校の友達へのカツアゲを辞める事と、今まで奪った金を返す様に言って、この件は幕を閉じた。
学校の友達は礼を言って手を振って帰り、それ以降も仲良くしていたが、半年後には親の転勤の都合で転校してしまった。
学校でも結構仲良くしていた友達だったから、凄く残念だった覚えがある。
話は戻るが…。
そんな最悪の出会いから気が合った俺達は、三人でそのまま何時間も話した。
「タハハ!お前ら良い奴らだな!優斗と、真也だっけ?一個下だけど、タメ口で良いよ!」
「あぁ、うん。…瑞希くんって、何か格闘技とかやってたの?」
「喧嘩なんて感性っしょ!…そっちって金持ちとかが多い私立の中学だろ?お前らみたいなのがいると思わなかった!」
その後、喧嘩に『モットー』を持たない瑞希くんに「どうせなら、理由のある喧嘩の方が良いよ」と諭し、現在も掲げる『悪の正義執行』をモットーにする様になった。
それから瑞希くんは中学卒業後ALONEと言う暴走族をたった一人から始めた。
初め、俺と真也は熱心に誘われたものの、暴走族とは無縁の世界に生きると決め、俺達は別れたのだ。
ただ、瑞希くんとは舌の好みが合うのか、ラーメン屋や定食屋など、こじんまりと隠れたお店で良く会うのだ。
この前もラーメン屋でバッタリと会い、近況を報告し合ったばかりだった。
美玲や他の幼馴染達とは、去年知り合った。
…今は割愛するが、いつか語ろう。
「喧嘩は好きだけど、苛めるのは嫌いだからさぁ…。喧嘩ってのは、対等の相手とやってこそだよ。ね、優ちゃん♪」
そう言って「タハハ」と気持ち良さそうに笑う瑞希くんの表情を思い出した。
今回は、俺達の街に囁かれる『襲ったら襲われる』都市伝説に救われた。
今日もまた『FBB姉妹』は誰かの価値観を変えるだろう。
俺は美玲と霧谷さんと寄り添い、暫く遠くを見て二人の無事に改めて安堵したのだった。
※この物語はフィクションです。
くれぐれも、理解した上で読んで頂ければ幸いです。
同内容の出来事に遭遇した場合、早急に警察へ通報する様に致しましょう。
さて、次回は生徒会選挙の決着と
深川美耶子との決着です。
お楽しみに。




