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35. 由美香と美耶子

35. 由美香と美耶子





「さて…では、どこから話をすべきか…ふぅ…。先ずは、美玲。随分と引っ掻き回してくれたな…」


霧谷さんの宣言から逃げる様に、俺達幼馴染グループとリオナちゃんは生徒会室へと場所を移していた。


お昼休み早々に仕掛けられた事だけに、まだ皆整理が追い付かず、それは由美姉の落ち着かない表情からも明らかだ。


「にゃはは…こう言うのは勢いが大事かなぁって!…今は少し反省してる。でも、ユウの事好きだって言った事は取り消さないよ」


美玲は真っ直ぐに由美姉を見つめ返し、その覚悟の程を示す。


リオナちゃんは、霧谷さんの宣戦布告から今に至る全てを通して、若干興奮気味に見入っている。


「どしたの?リオナちゃん」

「優斗先輩…ドラマが生まれている瞬間に立ち合えているんだなぁって、そんな感じがしないですか!?」

「リオナちゃんって、庶民的なモノに憧れがありそうだもんね…」

「先輩。…青春と言うものは、意外に得難いものなのですよ…」


…何がそんなに()き付けるのか知らないが、目をキラキラさせながら事の成り行きを見守るリオナちゃん。


GWでのセストラル家のやり取りについて、聞きたい心境ではあったが、状況が状況だけに先送りとした。



「静さんが生徒会長になるって…別に良い事なんじゃ無いの?駄目なの?」


由美姉と美玲が見つめ合う中、彩が首を傾げながら俺に問い掛ける。


「…う〜ん。今までだったら別に問題は無かっただろうけど…。明らかに、俺達幼馴染の面子を相手取っての宣戦布告だったからなぁ」


「随分と思い切ったものですね。今回美玲が動いた事により、彼女の中でも心境の変化があったのでしょう」


「だろうな。…それに彩、後ろに深川 美耶子がいただろ?俺だけじゃ無く、生徒会のメンバー総取っ替えしようって魂胆なんだよ」


「ぅえ!?私達も皆!?」


「うむ。霧谷嬢は確かに『生徒会の人員の一新』と()った。これは、我々を除籍した上で新たな生徒会を発足させると云う事に他ならない」


「そんな事言って、ユウは残すんじゃないかな…。まぁ、私はどの道バスケに集中するから抜ける事になるけど」


「あぅ、そっか…。静さん、みーちゃんが抜けるって事知らなかったのかもね。みーちゃんの事ライバルだと思ってるっぽいし…」


彩はそう言うと、俺へと視線を向ける。



「…だが、こうなった責は私にある。…皆には本当にすまないと思っている。元々、深川 美耶子の件は私が預かり、解決すると豪語したにも(かかわ)らず…不甲斐無い」


「何か事情もありそうだったし…仕方無いよ」


「優斗…」


「お兄ちゃん。どうするの?このままで良いの?」


「………」


皆の視線を感じる。


…そうだよな。


霧谷さんの思惑がどうであれ、裏に深川 美耶子が絡んでいるのなら…。


「このままやられっぱなしってのは…面白くねぇよなぁ」


俺は顔を上げて皆の表情を窺う。


戸惑うリオナちゃん以外、幼馴染の皆は薄く笑みを浮かべていた。


「うん!ユウはそうでなきゃ!」


美玲が皆の言葉を代弁して頷く。


「私だけ?分かってないの…アハハ」


リオナちゃんが一人、首を傾げつつ苦笑しながら俺達を見ていた。




お昼の残りの時間でお弁当を食べ終え、教室へ戻ると霧谷さんの周りにクラスメイトが集まっていた。

その中に深川 美耶子もいた。


構わずに霧谷さんへ近付く。


「霧谷さん、一言だけ良いかな?」

「…っ!…はい。何でしょうか?峰岸くん」


霧谷さんは一瞬目を見開き、俺の背後にいる幼馴染の皆へ視線を向けてから俺を見やる。




ここで…。

私立相城高校における、生徒会について簡単に触れておこう。


先ず、生徒会は上半期と下半期の二つに分けられ、上半期は5〜9月、下半期は10〜4月と言う形を取っている。


通常、上下(かみしも)の分け方だと4〜9月、10〜3月なのだが、相城高校はそこが他とは違う所。


何故、下半期の方が長いのか…。

一応、5月半ばに新生徒会発足となるのだが、旧生徒会メンバーに新生徒会メンバーが加わる期間が上半期。


生徒会長候補や副会長候補に関して、元から生徒会に属していない生徒が突然立候補する事が出来る自由な方針である。


その際、上半期にゆっくりと引き継ぎを兼ねて新生徒会メンバーを馴染ませ、下半期の10月から旧生徒会の三年生達が抜け、事実上の新生徒会の発足となるのだ。


そこへ今回、霧谷さんは従来の生徒会のシステムをぶっ壊す『生徒会の人員の一新』を上半期に行うと言っている。


いわゆる革命的行動であり、生徒の興味や関心を惹きつける良い宣戦布告だったと言える。


生徒会改選の信任投票日は、今日から数えて12日後。


土日を挟み、丸々一週間の選挙運動期間を経た、週明けの月曜日。

…決戦は翌々週の月曜日だ。



今回、美玲の発言により男子生徒から若干ヘイトを買ってしまって、不利な状況下ではあるが…。

こうなったら…霧谷さんの対抗で生徒会長を目指すしか無い。


霧谷さんは俺の言葉を待っている。

…俺達の生徒会を守る為に、戦うんだ。


「さっきの宣戦布告受け取った。俺も生徒会長に立候補するよ。勝負だね」


「…っ!峰岸くん…」


「これは号外だ!」

「これって…宣戦布告返しなの?」

「どうなるんだこれから…」

「…勝負って、どうなるの!?」


霧谷さんは悲しげな表情でこちらを見続け、眉を(ひそ)める。

クラスメイト達は驚いた後、タケルを筆頭にこのスクープを他クラスへ広めようと散り散りとなったり、この後どうなるのか見守っていたりと様々な反応を見せた。


「現生徒会会長である、島崎由美香の名の下、双方の立候補について受理した。今週末まで待ち、他に生徒会長への立候補者が現れなければ、相城高校の流儀に(のっと)り二人の対抗選挙を行う。各人、準備を進める様に…良いな?」


「ああ」

「はい」


由美姉の言葉に俺と霧谷さんは頷く。

そして互いに(しばら)く見合う。


強い決意の眼差しで俺の事を見据える霧谷さん。


対して俺は、心の内を色々な感情が駆け巡っていた。


霧谷さん…。

君の本心が知りたい。


脅迫状の犯人では無いと信じる自分と、犯人だと疑う自分。

彼女の事をもっと深く知りたいと想う一方で、離れた方が良いと危険信号を送る自分がいて思考が()()ぜとなる。



…キーンコーンカーンコーン。


予鈴が鳴っている。


「さ、ユウ。席戻ろっか」


美玲に腕を組まれ、教室の窓側の席へと連れて行かれる。

由美姉や彩、リオナちゃんも自らの教室へと戻って行った。


その場から離れる間際、霧谷さんの目を見る。

先程の強い決意の眼差しは既に無く、悲しみに満ちた憂いを帯びた目をしていた。




放課後。


生徒会室に現生徒会のメンバーとリオナちゃんが集まる。

その中に、霧谷さんの姿は無い。


美玲もバスケに集中する為、生徒会のお手伝い役員から外れる事となり、くどまなと共に体育館へと向かって行った。



「なぁんだか、大変な事になったみたいねぇ。連休明けてのんびりとしようかと思ってたのに…学校は騒がしくなるし!御前ちゃんだって折角仲良くなったのに…。もう、優斗くんトラブルメーカー過ぎだってば!」


「俺が悪いんすか!?」


「まぁ、お兄ちゃんを中心にみーちゃんは暴走して、静さんは宣戦布告した訳で…それに対して宣戦布告返ししたのもお兄ちゃんなんだから…ね?」


レナさんの言葉に激しく反応した俺を、若干呆れ気味に見やる彩。

それに対して皆、ウンウンと頷いている。

…お前らまで俺を台風扱いするな!



「でも、これで腹を(くく)るしか無くなったな。僕達三年は元々上半期が終了したら部活も生徒会も引退だし、受験の事で他に気が回らなくなる…」


「コウジくん…」


「だからこそ、最後の学校生活に少しでも想い出を増やしたい生徒も多い。…優斗、三年を味方に付けろ。三年は霧谷の事を余り良く知らないが、お前の事は良く知っている筈だ。…オルト前会長との決闘を盛り上げていたのも僕達の学年だしな」


コウジくんは珍しく「ふふ」と微笑みながらも、椅子にもたれ掛かり、俺を見やる。


「コウジくん…優し過ぎて気持ち悪いっす」

「オイ!」

「ふふ、僕のポジション奪わないで下さい」


真也が俺とコウジくんの間からスッと顔を出して、コウジくんへ微笑む。

…お前も、良い加減にしやがれ。


「…ごくっ」

「レナさん、生唾飲んでこっち見ないで下さい」

「…はぅ!?別に!?そんな変な目で見たつもりなんて無いんだからぁ!」


「見たのかよ」

「見たんですね」

「レナ…お前…」


「あぁぁぁ……コウジくんまで…そんな目で私を見ないで…ぅぅ」



俺達がそんなしょうもない事を言い合っていると、会長席で少し暗い顔をしていた由美姉が一つ溜息を吐いた。


そんな由美姉にリオナちゃんがタタッと傍に近寄る。


「由美香先輩…。大丈夫ですか?」

「あぁ…すまない。大丈夫だ」

「そう…ですか。でも、ぎゅーってしてあげます!」

「……ぁ。はは、ありがとう。リオナくん」


リオナちゃんは由美姉にぎゅーっと抱き着くと、由美姉は微笑みながら頭を撫でてあげていた。

…由美姉、落ち込んでるみたいだな。



暫くして、由美姉がピクリと身体を動かし、制服のポケットからスマホを取り出し、画面を見る。

…由美姉はよくマナーモードにしてるから、振動で分かったのだろう。


「すまないが、少し外す」


由美姉はリオナちゃんの頭を再度撫でると、立ち上がる。


「由美姉…大丈夫?」

「大丈夫だ。優斗は選挙の準備の事だけ考えていろ」


生徒会室から出る間際に声を掛けるが、素気無く返される。

…焦ってる様に見える。





〜Another side〜


「お待ちしておりましたお姉様」

「今回の件、どう云うつもりだ?」


校舎三階にある指定の空き教室へ入ると、美耶子が一人窓際で外を眺めていた。


もう夕暮れ時か…。

刻が経つのは早い。


窓が少しだけ開けてあり、涼しくも気持ちの良い風が、暫く使われていない教室内の空気を変えている。


「今までは、お姉様に(まと)わりつく、()まわしき男を如何(いか)にして排除しようかと考えて居りましたが…」


「………」


「お姉様が離れざるを得ない様仕向ければ、話は早いと考えまして…ふふふ」


「………」


「丁度、志を同じくする者が居りましたので…利用させて頂きました。…彼女は、この件に最適でしたので…お近付きの上、助言を申し上げたのです」


「美耶子…もう、私達に付き纏わないでくれ」


「何を(おっしゃ)るかと思えば…」


「美耶子…頼む」


「……お姉様、(よろ)しいのですか?私が抱える『秘密』を皆に打ち明けたら…はぁ……独りになるお姉様を私が介抱して…あぁ……初めからこうして居れば…」


「その時は、美耶子。君とは一生、相見(あいまみ)える事は無い」


「ふふふ………ですから、こうして遠回りに貴女を独りにするべく奮起しているのではありませんか…」


「………」


「お姉様…私は貴女をお慕い申し上げて居ります…いつまでも…」


美耶子は私に身を寄せようと近付く。

私はその場から一歩身を引き、美耶子を睨み付けるも直ぐに目を逸らす。


私にとっての秘密…。


幼馴染の皆に知られる訳にはいかない。

特に優斗には…。


彼女にとっての秘密とは…。

そして、生徒会長候補を巡って

繰り広げられる選挙運動。

果たしてどうなるのか。


次回も楽しみに。

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