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34.宣戦布告!

34.宣戦布告!





うそつき?


音すら聞こえ無かったその言葉が、俺の心を鷲掴みにする。

間違いでも勘違いでも無ければ、霧谷さんは涙を流し、『うそつき』と呟いて去って行った。


俺は何も霧谷さんと約束していない。

強いて言えば、過去のトラウマの話を誰にも言わないと約束したぐらいだ。

なら、美玲と個人的に約束事でも交わしていたのだろうか?


…それでも、あんな泣きながら去って行かれたら!


「追い掛けるしか無い!……っぐぉ…」

「どこ行くの?ユウ?駄目だからね」


霧谷さんの元へ走って追い掛けようとした瞬間、美玲に首元へ抱き付かれる。


「美玲…これシャレになって無いぞ…」

「そりゃそうでしょ。…私達の関係は、もう『皆がそう言う風に』認知したんだから」


俺達は小声でやり取りをする。


「み、みーちゃん……まさかこんな大胆な方法を取って来るとは…っぐぅ…あの日、発破掛けるんじゃ無かった…」


「本当に…やってくれたな美玲…タイミングも非常に悪い…私が先に動いていれば…むぅ…」


彩と由美姉が傍で「ぐぬぬ…」と呻き声を上げてこちらを睨み付けている。


真帆ちゃんは動揺しつつも、周りでバタバタと倒れた美玲ファンクラブの漢達を介抱し始めた。


真也は一人、霧谷さんの去って行った校舎へと視線を向けている。



「さぁ、ユウ?私達の教室へ行こ♪ここで立ち止まったままだと…またチューするからね」

「ヒィ!分かったから…いきなりキスしようとするな!」

「…ちょっとユウ!私からのキスを何だと思ってんの!」

「お前ら全員、突然過ぎるんだよ!俺、奪われてしか無いじゃねーか!」

「なら、ユウからして!」

「しません!」

「…ぐぬぬ。ユウのバカ!」



俺達の関係について、真実とは異なる(かたよ)った情報が瞬く間に校内を駆け巡る。


そもそも…。

先ず初めに、流行好きの女子の間で、朝投稿されたキリキリチャンネルの動画の内容の話で(ひと)盛り上がり。


動画の中で美玲は「彼氏は幼馴染の男の子です」と言う発言をしており、そこから噂が学校中に飛び交った。

…真也はノーマルでは無いと発言している事から、当然矢面に立つのは俺だ。


動画の内容を簡単に要約すると、インタビュー形式の一問一答の物で、世間一般的に見れば「あぁ、彼氏いるんだ」で終わる物だが、彼女を知っている人からすれば「彼氏いたんだ!?しかも、幼馴染?…と言う事は…」となる。


結果として、俺は美玲の彼氏だと誤解されたまま拡がり、認知されてしまった。


男子からの反感は勿論あるが、中には良くやったと(たた)えていた者達もいる。


それが、他ファンクラブの面々である。


彼等にとって俺はいわゆる台風の様な物らしく、一所(ひとところ)に収まってくれた方が助かるそうだ。

…要するにコッチに手出すなよって事だろ。



「お兄ちゃん!!私ともキスして!上書きしよ!」


「上書き…って彩!私の『彼氏』にやめてくれる?」


「ぐぎぎぎぎ!み、みーちゃん…悪ふざけはもうお終いにしよっか……っとぉ!!」


「って!ユウに飛び掛かるな!させないから!ユウ!ごめんガムテバリアさせて!」


「…っ!っむぐぐんご……」


「私が本物の彼女だって公言してやる!」


「いや、今更そんな事をしても無意味だ…彩。我々は、まんまとしてやられたのだ」


「シン兄…どうしよっか、これ…」


「こうなってしまった以上…どれだけ誠意を持って否定しても(しばら)く誤解は解けないでしょうね。ふふ、争奪戦は美玲の一歩リードですかね」


俺達の少し後ろで、真也が肩を(すく)めつつ、幼馴染の女性陣を見やる。


「これ以上は優斗の負担にしかならないので、彩も由美ちゃんも、大人しく教室へ向かいましょう。真帆も、中等部へ行きなさい」


真也の言葉に皆がしょぼくれつつも頷く。

美玲だけがルンルンと上機嫌で俺の腕に抱き着いていた。

…ガムテ()がして下さい。




「良くやった優斗!お前ならそこに収まると思ってたぞ!」

「やっぱり、幼馴染の中でも美玲ちゃんとは相性も良さそうだしねぇ…」

「腕組んでる……はぁ、羨ましい…」

「俺はもう駄目だ…生きる糧を失った…」

「美玲!おめでとう!!」

「美玲先輩…幸せそう。あぁ…私も良い人いないかなぁ…」


校内にいる生徒達は俺達の姿を見ると、皆想い想いの反応を示した。


声を掛けて来る者、落ち込んで廊下に(うずくま)っている者、遠巻きにコソコソと話してる者など様々だ。



教室へ着くと、くどまながパタパタと走って近寄って来る。


「GW前にあれだけ言ったのにね…しょうがないか……。学生婚でも、私は応援するから!」


くどまなは目を輝かせながら、噂を鵜呑みにして勝手に祝福していた。

…だから誤解なんだっての。


「はい、二人とも腕組んでもっと寄り添って。はいチーズっと…ふふ、広告写真としては良い出来だよ」


タケルは俺達の姿を写真に収めて、大忙しで教室を飛び出して行く。

…俺、口にガムテープ貼ったままなんだが、どんな広告になるんだ。教えてくれ。


きっとメッセージ性の高い宣伝広告になるだろう。


『DV被害は女性だけが全てでは無い』


とかかなぁ。


「優斗ぉおおお!!アンタの相手は真也じゃ無いと駄目だろぉがぁぁあ!!……美玲…アンタも裏切ったわね…私の腐った心を平然と(もてあそ)んで…。男女CPなんて…クソ喰らえぇぉおおろろろぉぉん!!」


恭子が血の涙を流しながら教室から飛び出し、廊下を走り去って行く。

…あぁ、コイツも頭がどうかしてたな。


「優斗ー。頼むよー。今から妹の彩ちゃんにシフトしてよー。…オッズたっかいんだぁー」


将吾が近付いて来たかと思えば、開口一番に賭けの情報を()らした。

…このヤロウ…。人様の恋愛模様を賭けの対象にしやがって…。


クラスへ睨みを効かせると、あからさまに顔を背ける者達数名。

この学校の『自由』って、別に何でもアリって事じゃねぇからな!?


一応、小さな事からコツコツと…と言う事で、俺の口から恋人同士では無い事を言ったものの、クラスの誰一人としてマトモに聞いてくれ無かった。


そんな状況に美玲は「ふふん♪」と鼻を鳴らし、満足気にしていた。

…誰かこの騒ぎを鎮静化させてくれ。




そう言えば…と、クラスのとある席へ視線を向けるが…いない。


非常に困った…。


さっきから胃がキリキリと痛む。



「ユウ…。にゃはは…ごめんね」


美玲が俺の苦悩の表情を見て、ペリペリとガムテを剥がす。


「少しやり過ぎたね…。…でも、『あの子』は…分かるよね?『容疑者筆頭』なの」


美玲は俺に顔を近付けて小声で話す。


「……分かってる。…分かってるけど…」

「…今は…私だけ見てよ」


美玲は俺だけを見て言葉を洩らす。



…キーンコーンカーンコーン。


予鈴だ。


HRが始まる。


霧谷さんはまだ教室へ来ていない。



その後…。

お昼に差し掛かる頃、ようやく霧谷さんが教室へ戻って来た。

何か固い意志の様な物を感じ取り、声を掛ける事が出来なかった…。

…保健室にいたのだろうか。


霧谷さんの真意が読めない。

やっぱり、あの時直ぐに追い掛けていれば…。


いや、でも追い掛けてどうする?


キスされた現場を目撃されて(なお)、「そんな関係じゃ無い。誤解だ」なんて…変な言い訳にしかならない。


そもそも、霧谷さんに言い訳してどうする。


俺と霧谷さんは…別に、何の関係も無いんだから…。


午前中、授業など全く頭に入って来ず、一人心の内で問答を繰り返していた。



「ユ〜ウ♪」


そんな事を考えつつボーッとしていると、背後から美玲が俺に抱き着く。


「ちょっと…待て。美玲…イタズラにクラス内を刺激するな」


美玲派のクラスの漢達は血管が切れそうなくらい顔を真っ赤にさせて、こちらを睨んでいた。…主に徹也が。


「はい、離れる!…お前らも、さっき説明しただろうが!俺と美玲は恋人同士じゃ無い!」


「ユウ……そんな事言うんだ………」


「あぁ〜…もう、美玲もそんな顔すんな!」


「にゃはは〜。ユウ、怒った?」


「怒ってる」


「ならチューしてあげよっか…」



…ガタンガタン!


美玲派のクラスの漢達が勢い良く立ち上がる。


「美玲様ぁぁああ!後生ですから、それ以上は辞めて下さいぃいい!」

「このままだと…俺達…持たないっス!!」

「俺…今度の大会で優勝したら、告白するんだ…」

「……ぐふっ…」


美玲が俺に対してイチャつき行動を取る度に、漢達は情け無く反応し涙ながらに訴えの声を上げる。


「アンタ達、関係無いじゃん…『私』と『ユウ』の間に入って来ないで」


美玲がピシャリと言い放つ。



…カタリ。と霧谷さんが席から立ち上がると、(おもむろ)に教室を出て行った。


「…っ!き…」

「ユウ」


美玲が鋭い眼でこちらを覗く。

ヒヤリと背筋が凍る程の視線に一瞬たじろぐ。


…ガラガラ!


教室の扉が勢い良く開く。


「お兄ちゃ〜ん!!助けに来たよぉ!!みーちゃんに何もされてない!?」


「優斗!今後の事について、話がある!…直ぐにだ!」


彩と由美姉が同時に入って来る。

その背後から、キョロキョロと様子を窺いつつ入って来るリオナちゃん。


「あちゃ〜…噂は本当だったんですね、優斗先輩…ちょっとショックかも…アハハ」



…ガラガラ。


再び教室の扉が開かれる。

ゆっくりと。


霧谷さんが戻って来た?…と、あれは!?


「生徒会の皆様へ、ここで宣戦布告をさせて頂きます…。生徒会改選に際し、私、霧谷静は生徒会長へ立候補致します。私が生徒会長に就任した(あかつき)には…生徒会の人員の一新を請願(せいがん)致します」


霧谷さんの言葉に教室に残っていた生徒達は静まり返り、直ぐに(ざわ)めき出す。

俺達幼馴染の面々は、何も言えずに固唾(かたず)を飲む。


霧谷さんの傍に、深川 美耶子が立っていた。


その表情は目元こそ前髪に隠れて見えなかったが、ニヤリと口角を上げていたのがハッキリと見えた。


口上を言い終えた霧谷さんは俺の方を真っ直ぐに見つめ、柔らかく微笑む。

…何で、こんな事に…。


近くで、由美姉が額に手を当て溜息を吐いていた。


この機会を待ち望んでいたかの様に、

彼女はようやく動き出します。


次回からは生徒会改選の信任投票に向けて。

それではお楽しみに。

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